<(_ _)>重ねて申し上げますが今回の話はギャグは低調ですが基本が「バカ」です。<(_ _)>
そんなこんなで申し訳ございません

留の巻



　（ここは・・・・どこだ・・・・うう、何がおこったんだ。思い出せない）

　それは君のせいではなく、５０日間も更新しなかった管理人のせいだと思う・・・・・フィリアごめん・・・・・

　（いいって・・・・・このごった煮サイトの住人になったときからこういう扱いうけるかもしれないことは覚悟してたさ・・・・・ったく、ちゃんと更新しろよ？・・・・って、話に戻るぞ）

　意識を取り戻したフィリアは目を閉じたまま思いをめぐらした。
…強打された腹部の痛みは今はもう殆ど無い。背に感じるのは床の固さではなく、身体の上にかけられた毛布のようなものの感触からみてもおそらくは寝台に寝かされているのだろう。手首につけられた電極と彼女の脈拍を表す小さな音は、魔法世界から来た者にとっては異質なものであり、何なのかはわからなかった。
　次第にはっきりしてきた頭で、五感を総動員し状況を把握しようとする。自分は昏倒させられた。そしてここに運び込まれた。丁重に扱われている事から見て、相手は常識ある人間のようだが、これから先もずっとそうだとは限らない。
　鼻から入ってくる空気は少し薬臭く“生きた”空気ではない。薄く目を開ければライトグレーの天井が目に入り、清潔な、だが無機的な部屋に自分は寝かされていた。

　（箱のような部屋だな…嫌な感じだ）

　現代に生きていればそこは普通の病室であったろうが、彼女にはそうは思われなかった。

　（頑丈そうな扉が１つ・・・か。シーマは一体何処にいるんだ？）

　シーマの居場所さえわかれば、一度開いた道を通って元の場所に帰ることは割合に容易いことだ。再び目を閉じ、第６感・・・・つまりは彼女の世界での魔法力を使い、精神統一してシーマの放つオーラを探す。・・・しかし、彼女の赤く透明な（そしてやたらとド派手な）オーラを補足することはできなかった。近くにいないか、居てもオーラが外部に漏れるのを自ら抑えているかのどちらかだ。そしてシーマ以外の人間が放つオーラを多数捕まえた。地味なものあり、妙に陽気なものあり・・・都合のよいことに、この部屋の付近には誰もいないようだ。

　（しゃあない。動くか・・・・）

　自分をここに寝かせた者が好意的ならば動いても気にしないだろうし、好意的でないのならば、先手をとりたい。

　身を起こして足を床に降ろす。そのとき、自分がゆるい上着とズボンに着替えさせられていることに気づき、動きやすいように裾と袖を念入りに折り返した。

　（元の服より随分マシだが・・・・誰が着替えさせたんだよ？）

　靴はない。仕方ないが裸足だ。

　（よし、行くか・・・・）

　左手首に巻かれていた電極をそっと外す。医療機器の知識などない彼女は、その行為で、何らかの異常が起こったことが外部に知らされるなど思いもしなかった。がちゃ、とドアノブを回し、締まっていることを確認すると、強く念じて魔法を使い、扉一枚先に空間移動する。

　そこは長い廊下だった。柔らかな明かりが連続して灯り、薄緑色の壁も目に優しい。そして一歩踏み出した床は・・・

　「んぎゃッ！」

　思わず声を出してしまったフィリアは慌てて口を塞いだ。

　（なんだよ！この床ッ！動きやがる！どういう魔法がかかってんだ!?）

　うーん、それは誰かが床に乗るとセンサーが働いて作動する汎用型のムービングロード（因みに管理人の友人は暫くの間“ムービングドーロ”だと信じて疑わなかったそうである・・・・怖いね、思い込みって）なんだけどね。

　（ど、どこに運んで行こうというんだ!?）

　しかし、躊躇したのは一瞬、前から走ってくる者に気づいて身構える。白衣を着た男はフィリアを見ると目を大きく見開いた・・・

　（白き衣か…ファルと一緒だな、あいつもファル並みに強いのか？俺を捕まえに来たのか？・・・そうはさせない。）

　フィリアは走ってくる者に向かってダッシュし、ポーンと飛び上がると後頭部を蹴った。白衣の勇者・・・・じゃない、可哀想な看護士は、何が起こったか考える暇も無く昏倒させられてしまった。

　（・・・・・弱い・・・・不甲斐なさ過ぎる!!それにこいつ全然殺気無かったじゃねえか。《←看護士さんに殺気があったら物凄く怖いです》どうなってんだよ、ここの警備体制）

　そのままムービングロードの上を流されて進んでいくと今度は鍛えられていそうな肩幅の広い男が３人やってきた。

　（そうそう、そうこなくっちゃな！少しは本気で拳をふるわせてもらわないと！）

　・・・・・・あんた逃げたかったんと違うの？殴れれば幸せなのか？

　男たちは倒れている看護士を見、フィリアを見る目つきが変わった。そこから発するオーラを感じフィリアはくすっと笑った。

　（はいはい、ちょっとは敵意持ってくれたみたいだな。）

　男たちは３方に分かれた。明らかに訓練を積んだものの動きだ。普通なら焦るところだろうが、フィリアはこの状況を楽しんでいる。動体視力抜群の彼女にとっては３人の動きはかなりゆったりしたものに見えた。そして、多対一の闘いで相手がとってくる常套の作戦も知っていた・・・・そしてフィリアがむっとすることに、彼らは明らかに手を抜いていた。・・・おそらくは女だからだろう・・・・

　「そいつが命とりだってぇの！」

　捕まえようと延ばされた腕をすっと避け、別の男の顔面に蹴りを入れ倒し、崩れ落ちていくその肩を土台に宙高く飛び・・・・・勢いをつけて３人目の男の腎臓の辺りを膝で強打、そして初めの男の顎に拳を叩き込み・・・・完了。ぱんぱん、と満足そうに手を叩くフィリアは、更にに６人やってきたのに気づきにたぁと笑った。

　少々てこずったが、３分もたたないうちに彼女の足元には男たちがだらしなく横たわっていた。肩を外されたものあり、白目をむいているものあり、うんうん唸っているものあり・・・・

　「大丈夫かよ。・・・一応手加減はしたんだぞ？」

　そのとき、新手がやってきてフィリアははっとした。こいつは・・・このオーラは・・・・角を曲がってやってきたそいつは銃を手にしていたが、フィリアが丸腰なのに気づき、銃を収めた。その姿を認め、フィリアは大きく両腕を振った。

　「おい、ちょっと待てよ！待てってば!!」

　男は無言で走ってくると蹴りを繰り出した。

　フィリアは尚も叫ぼうとし、もう一度繰り出された蹴りを辛うじて避けて嬉しそうに笑った。

　こいつは強い！

　彼女はもう叫ぶのを辞め、身構えた。全く隙のない構えだ。双方相手がどう出るのかを静かに見定めている。

　（ガタイがいいからな・・・一発でもまともに当てられるとキツイ。下手にこっちからつっかかると足もリーチも俺より遥かに長いから危険だ。）

　試しに少し接近してみたが、すぐに相手の拳が頬の５ミリほど先を見舞った。すぐさま飛びのく。
　一方相手はフィリアの驚異的な素早さに舌を巻いていた。彼の直属の部下８人が簡単に昏倒させられたのはショックであったが、こんなに小柄な女性にやられたのははっきりいって情けない。しかし、自分も気を抜けばやられるのは自明だ。

　連続して拳を、蹴りを繰り出す。フィリアはやすやすと避けて見せ、後方にとんぼを切って逃れるとくすっと笑った。

　「あんた、強いな！」

　へ？

　嬉しそうなフィリアのセリフに男は一瞬不思議そうな顔をしたが、突っ込んでくるフィリアに渾身の力を込めた拳を打ち込んだ・・・が・・・・・彼はフィリアを見失った。彼女は素早く転進し、後ろに回りこむと、コツン、と男の頭の天辺を拳で打った。そして離れると笑いながら言った。

　「今の、俺が本気で殴ってたらあんたは気絶してるからな。俺の勝ちだよ。ブルーのおっさん。」

　おっさん・・・・・・ここにシーマが居たら極大級の魔法喰らうよ？た、たしかに副官はもうすぐ三十路で、フィリアの方は総帥より１つ年下で二十代前半なんですが・・・・うーん、副官、確かに年寄り更けてみえるかなぁ。

　しかしギャラクティックジョーズ副官、ブルーはそんなことは気にもせず、狐につままれたような顔でパジャマ姿の娘をまじまじと見た。

　「お前は一体・・・・・？」

　フィリアはつかつかと歩いて近づくと、指をブルーの鼻のあたりにつきつけた・・・・つもりだったのだが身長差の関係で顎のあたりになってしまう。もともと大柄でなかったのだが、女性に分化してかなり背が縮んでしまっていた。

　「俺は一発でわかったのに、おっさんは忘れたわけか？かなり長い間一緒に旅してただろうが！ほら、あんたんとこの紫色の司令官に多大な迷惑かけられたフィリアだよ！・・・・・・」

　ブルーはその生真面目な顔を驚きでいっぱいにすると、灰青の髪を掻いた。

　「フィリア殿？・・・・・しかし、我らと別れたとき、あなたは・・・・・女性に変化すると伺ってはいたが、まだ青年のような容姿で・・・・・そんなに可愛らしくは・・・・・・」

　「もーいちどかわいらしいなんて言ってみろ！今度は本気で昏倒させるぞ！」

　「あ、いや！すまない！」

　・・・・・・副官・・・・あんた別に謝るようなことはしてないと思うんですが。むしろ普通は褒め言葉だよ、それ。

　「おっと、あんたの部下ならちゃんと手当てしてやらんといけないな。」

　倒れた副官直属シークレットの皆さんに近づこうとし、・・・・フィリアはずり下がってきていたパジャマのズボンの裾を踏んづけて盛大に音を立てて転んだ。




　全ての脱臼を直し、打撲の痛みを魔法で癒し終わる頃には、ブルーの部下たちは尊敬の眼差しをフィリアに注いでいた。フィリアも彼らを癒しながら拳法談義に花を咲かせ、いわゆる“拳で語る”状況で短時間のうちに相互理解して双方笑顔であった。

　顰め面だったのはブルー一人。そしてブルーは今、フィリアを前に、その真面目な顔に困惑の表情を浮かべて居た。フィリアは新たに軍服と靴を与えられ、会議室に呼ばれ、今までの経緯を副官に話したのだが

　「・・・・・・・・・・・・・・はぁ〜・・・・・」

　事情を話されて副官はタメイキをついた。

　「・・・・・何故シーマ＝オーカー殿は私のところなどに・・・・・・・」

　支給された軍服のサイズが合わず（因みにそのぶかぶかさ加減が可愛いとブルーの部下一同絶賛）、またもや袖を念入りに折り返しているフィリアは同じようにタメイキをついてみせた。

　「俺もよくわからんのだが、シーマについていえば、ありゃあ、走り出したらもう絶対にとまらない、って人だからな。・・・・・えーと、アクはかなり強いけど、根はいい奴だし、ああ見えてけっこう家庭的だし、美人だし、何よりあんたのことにゾッコンだし・・・・・・・結構お勧めだと思うんだが・・・・・」

　「はぁ・・・・・私は彼女と殆ど話をしたこともないのだが・・・・」

　「それが一目ぼれの妙ってやつじゃないのか？・・・繰り返すようだが、俺はわからんけどさ・・・・・シーマを貰ってくれないのか？」

　「・・・・・私は色恋沙汰には興味がないが、共に話をし、共に行動し、互いをよく分かり合ってから伴侶は選ぶものだと考える。・・・・・フィリア殿、一目ぼれというのは何か間違っているのではないか？」

　「ん〜。実は俺も同意見なんだけどな。あ、俺の名に『殿』なんてつけなくっていいからな。こそばゆくってかなわん。フィリアって呼んでくれていい。」

　・・・・・・男にファーストネームを敬称抜きで呼ばせるのは問題アリと違うかい？

　副官がすっと背筋を正した。

　「とにかくフィリア殿（←ああ、やっぱりあんたは抜かないんだねぇ）がここに来たのは、魔法の失敗ということなのですね。」

　「結果的にはそうなるな。シーマがここに来ていないんじゃ。でも変だ。空間渡りの途中、俺はシーマとしっかりと手を握っていた。少なくともここに実体化する直前までは。」

　「かかわりがあるのなら是非あなたの力を借りたい。」

　フィリアは眉根に皺を寄せた。

　「何かが起こっているのか？」

　副官はゆっくりと頷き立ち上がった。

　「来ていただきたい。」


　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊


　フィリアがブルーに連れてこられたのは、大きなホールであった。大きな計器が据えられ、何人かの技術員が操作している。
　その場所を見てフィリアはぽかんと口を開けた。・・・・・ある場所から先、何もかもなくなっているのだ。そこにあるのは黒い空間・・・・いや、空間そのものがあるのかさえ謎だ。

　「その後どうですか。」

　技術員の一人にブルーが声をかけると、“副官殿、変化はありません”という残念そうな答が返ってきた。

　「これは一体・・・・・・」

　フィリアが尋ねるとブルーが何もない空間を指差して言った。

　「空間の歪みといってさしつかえないと思う。何か巨大な力でここから先の部分・・・・ギャラクティックジョーズの後部が斜めに切り取られてしまった。切り取られただけでなく、艦そのものがここに釘付けにされてしまっている。後部に向かってこちらに属している反応炉からのエネルギーは正常に送られているのだが、通信することはできない。総員で原因究明にあたっているのだが・・・・・今回のフィリア殿の“空間渡り”と関係がありそうか？」

　フィリアは目を丸くした。

　「多分、ある。・・・・・・シーマのオーラが感じられないのはきっとシーマが切り取られたあちら側に居るからだと思う。・・・・・・すまない・・・・・そして初めに謝っておくが、俺にはこの歪みを正すことはできない。俺にできるのは空間渡りであって、空間の形を自在にする力はないんだ。」

　ブルーも技術員たちも落胆のタメイキをついた。

　「切り取られてしまった方には人間は乗っているのか？」

　ブルーが頷く。

　フィリアは拳を握り締めた。

　「本当にすまない・・・・・シーマに言われてやったこととはいえ、軽々しく空間渡りなんかして・・・・結局シーマもあんたたちにも迷惑をかけている。・・・・・俺に何かできたら手伝わせてくれ！」





　医療グループはフィリアの脳内データをとり、空間ひずみの３Dデータと併せての解決の方法を検討したが、結論は『修復不可能』ということだった。彼女にテレポート系の魔法を使わせ、その際の周囲のエネルギー分布解析もしてみたが、益になりそうなものは得られなかった。



　「本当にすまない・・・・」

　ギャラクティックジョーズ艦内を案内されながらフィリアは十三回目の謝罪の言葉を口にした。

　「フィリア殿が謝ることはないと思います。・・・あなたは無理やりに魔法を使わされた方ですから。」

　展望室から星を眺め、フィリアは首をふる。

　「最終的には自発的に使った。・・・・・・・いいのか？あんたも忙しいんだろう？俺を艦内見学なんてさせとく暇あるのか？」

　「・・・・・技術系の部下たちには指令を出しました。・・・・・彼らがデータを集めている間に私にできることはありません。それにフィリア殿を以前から見知っていたのはここでは私一人ですから。・・・・ばらしてしまいますが、医者に言われたのですよ。かなり気に病んでいるようだから艦内めぐりにでも誘って気を紛らわせるべき、と。」

　「はぁ・・・・・・気に病んでいるって俺、顔に出してたか？」

　「いえ、脳波に。」

　「・・・・・・・・」

　フィリアは歩みを止めた。

　「どうしました。」

　「いや、なんか癪で。脳波ってあの機械でとった奴だろう？・・・・機械になんて感情がわかるのか？・・・・・今までいろいろな部屋を見せて貰ったが、ここは機械ばかりでできている。・・・・・正直ぞっとしている。俺たちも簡単な道具は使う。でも、それは歯車や炉や振り子で、見ていてどんな働きをするのかわかるものばかりだ。・・・・・・ここにある機械はそうではない。・・・・・どっちにしても、気を使うなよ。俺は何をされたって気に病むものは徹底して気に病む体質なんだ。・・・・・シーマを助けたい。この艦の状況を元に戻したい。・・・・・俺もあの技術屋さんたちのとこに行かせてくれよ。・・・いや、理論はチンプンカンプンだ。あんたらのテクノロジーのことは全然わからん。・・・・でも俺は“力”の流入流出については計器以上に感じ取ることができる。もちろんシーマのオーラも。こんな風に気を使われてばっかりなのは俺の性にあわないんだよ。」

　副官はゆっくりと頷いた。

　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

　深夜、ブルーはホールから小さな明かりが漏れているのに気づいた。ここでのエネルギー変化は自動計測マシンに任せ、皆眠りについたはずだが・・・・いや、ここは長期戦になると判断してブルーがそう命令したのだが・・・・・・不審に思った彼が入っていくと、計測マシンの隣の椅子やデスクが置かれた場所には誰もいず、切り取られてしまった黒い空間のところにフィリアが倒れて居た。誰から手に入れたのか小さなペンライトを左手に握り、右手は空間に伸ばされ青い長い髪が床にぱらりと広がっている。・・・・・一応ほっとすることにはすうすうと寝息をたてて気持ちよさそうに寝ていた。

　『俺の場合はマシンと違って自動計測できないから、もうちょっと頑張ってみる。心配すんなって！すぐ寝るから！』

　手を空間にかざし、あたりの『気』を読みつつ少し前にそう言って笑ったフィリアだったが・・・・結局休もうとはしなかったのか。何をしてよいのかわからないが、何かせずに居られなかったのだな・・・・副官が肩を揺り動かしても起きようとはしない。

　「・・・・シーマ・・・・・」

　半開きの口から寝言が漏れる。

　「・・・・・・きっと会わせてやるから・・・・・想い・・・・遂げさせてやるから・・・」

　それは困るのだが、とブルーは思いつつ、さらに揺り動かすがよほど疲れているのか一向に目を覚まさない。このままでは身体に悪い。

　どうしたものか・・・・・


　・・・・・・こういうときに若い娘をどうやって移動させるのかなど、士官学校では一言も教わりはしなかった。

　まずい・・・・・・



　その５分後、眠ったままのフィリアを椅子に座らせ、その椅子ごと背に担いで通路を競歩選手かくあるかという勢いで移動していく副官の姿をすれ違った部下は唖然として見送った。



　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊


　「おはよう！」

　よく通るソプラノの声が艦橋に響いた。ブルーが振り向くとフィリアが走ってくるところだった。

　「わりィ、わりィ、変なところで寝ちまって。あんたが運んでくれたんだってな。床で寝たくらいで壊れる俺じゃないけど、やっぱり体が痛くはなるからな。有難う。」

　にっこり笑うフィリアの視線からブルーはついと自分の顔を逸らす。

　「なんだぁ？・・・・・ま、とにかく・・・・・伝えたいことがあって来た。・・・・結論からいうと・・・・おそらく切り取られた後ろの部分はまだここと辛うじて繋がっている。」

　その場にいた人々がざわめく。

　先程顔をそらしたブルーもじっとフィリアを見つめた。

　「根拠は？」

　「おそらくあんたらにはわからない。ただ、俺はそこで微かだがシーマの気配を感じた。弱々しいが。・・・・・・・・確かここからあっちへの“力”の流出は認められているんだったよな？」

　「“力”？ああ、エネルギーのことか。確かに。反応炉からのエネルギーは確かにラインを通して後部に流出しているはずだ。」

　フィリアは背の高いブルーを見上げ、はっきりとした口調で言った。

　「エネルギーというものの流出速度をこっちで調整することで連絡が取れないだろうか。もしもシーマに俺がここにいることを伝えられれば俺とシーマが同時に魔力を開放することによって、ずれてしまった空間を元に戻せると思う。」

　確かに・・・・・難しいことではあるが、エネルギーの流量でメッセージを送ることはできなくない。しかし・・・・・・ブルーは頭を抱えた。

　「どうしたんだ？無理なのか？」

　「いや・・・・・・・・」

　彼は後部に居るはずの人々の顔を思い浮かべた。

　生真面目だがおそらくこういうときには手が出せないだろう物資管理担当部長、レクリエーション担当グループの面々。艦内散歩に出ていて向こうに取り残された“枕が変わると不眠症になる”航法士、ガーデニングマイスターである庭師のゴン爺さんとその弟子たち、そしてそして・・・・・・・・・・・大いに頼りになったりはっきりいって物凄い迷惑になったりするこの艦の司令官ｖ

　「かなり・・・・・・・難しいかも・・・・・・しれん・・・・・・」

　悲壮感漂う表情をし、肩をおとしたブルーの肩をポーンと１つ叩き、フィリアは難しいだけなら可能性はある。がんばろう、おっさん。と明るく言い放った。
えー、フィリアはボケ＆突っ込みの両方を使えるという特質がありますので、こういう展開となってしまいました。ほとんど格闘ゲームの世界です。
副官を「おっさん」よばわりさせてすみません。
そして、次回「ギャラクティックジョーズ後部の悲劇」・・・・・・だってどう考えてもメンバー的にどうしようもない・・・・それに総帥がプラスされるわけで・・・・（仔ペンギン部隊についてですが、彼らは原則的に本編には出てこないということでご容赦下さい・・・・どこかの星に買い物ツアーに出かけていると思って下さっても結構です）
・・・・・・あと２回で終わります。前に日記で書きましたが、これはラブコメなんです。信じて下さい。「ラブコメに挑戦して玉砕する」が今回の目標です（・・・・って何？）

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