後悔日誌（４）・・・副官！一周年ですね！

　私の名はブルー。宇宙戦艦ギャラクティックジョーズ副艦長にしてジンベエ・フォン・シャーク・スコッチ様の副官を努めている。
　
　………それが周囲の言う通りの「幸運な大出世」であるかどうかは………皆さん（謎）が一番よくご存じだろう……。

　先日、私が付けている後……航海日誌が丁度一年分貯まったので、久しぶりに読み返しているところだ。

　この星に来たての頃は、ジン様が文化造形物の収集に熱を上げられていて、艦内のインテリアが随分変わった時期だったな……。ふるまってもらった紅葉饅頭が美味かった……。

《士官学校をステップの上、首席で卒業の彼だって、たまには甘いお菓子に頬が緩むこともある》

　初夏の頃は、この星で四年に一度の大きな祭りがあり、乗務員達どころかジン様まで祭りに浮かれて髪を染めたりユニフォームを手に入れられたり………でも、無理矢理連れて行かれて観戦したゲームは面白かったな……。

《四角四面、ギャラクティックジョーズの理性と言われる彼も、素面はスポーツの好きな普通の若者だ。………だからなお哀れなのだが………》

　………マイムマイムという踊りを習ったな………。無理矢理だったが………（冷汗）。

《現在も艦内を元気良く駆け回る小ペンギン達を見ると、「どうぞお構いなく」と思わず壁に張り付いて道を譲ってしまうブルーである。》

　つい最近の「くりすます」と言う行事では、ジン様らしい、お優しい事をされていた。あの親子からの手紙（住所は何処ですか…）、幸せそうな内容だった。本当に良かった。

　見返してみると、色々大変なこともあったが（本当に貴方ばっかり）、良い一年だった。侵略をするよりずっと………こちらの方が良い。

　ジン様の発言も、未だつい顎を落としてしまうことがあるが、これだけ鍛えられれば、もう顎を落とすこともないだろう。我ながらよく頑張ったものだ。

《副官氏。何やら達観モードに入っているようだ。その年で悟りを開くのは早い気がするが、あれだけの面倒事をこなしてくれば少なくともアメリカ大統領秘書官などちょろいものだろう》

　大変な一年だったが、人間として成長できたような気がする。これもジン様のお陰だろう。感謝せねばならないな………。

《と、一人ごちて日誌を閉じたブルーは聞こえてきた乗務員達の歓声に廊下に出てみて、彼の顎は先ほどの悟りをうち砕く勢いで豪快に落ちてしまった》

　………何故、何故………宇宙戦艦内に桜が咲いている……………！（汗・大汗・滝汗！・激汗！！）

《艦内の廊下には、雅やかな雰囲気で桜の花弁が舞っていた。花びらを優しく舞い上げているのは、春風に似せ微妙に調節された艦内のエアコンだ。

　そして艦内で一番天井の高い大広間には、桜の巨木が春霞のような美しい花を誇らせている。さすがはゴン爺さん。彼に不可能はない。》

「ブルーよ！我らが所在しているこの国では、春になるとこのサクラという花を愛で、その木の下で甘い菓子に上手い酒、そして手作りの弁当を持ち寄り皆で楽しく騒ぐ風習があるのだそうだ！！

　美しい花の下で互いの友情を確かめ合う……！このような良い風習は早速実践せねばと思ったのだ！！」

《賑やかに各自持ち寄った弁当や菓子を広げている乗務員の前で、ギャラクティックジョーズ司令官は石像のように硬直している部下に意気揚々と説明する。

　彼の手にある書類は、文化の長期的研究プロジェクトに参加している隊員からの報告書のようだ。……恐らく今回の元凶はコレだろう》

　宇宙戦艦ギャラクティックジョーズ副艦長・ブルー。彼の航海日誌はこれからもまだまだ厚く積もりそうである………。