昼すぎには、完全に雲は晴れ、夏の太陽が陽気に照りだした。 その光を黒いヘルメットで反射させ、鋲付きの黒ジャンバーを着た男を乗せたオフロードバイクが崖を一気に下ってきた。おそらくは暴走族の手合いだろう。ジョーはパラライザーを構えた。 バイクは彼女から二十メートル離れて止まった。男はヘルメットを外した。 「銃降ろせ！俺だ！マリオだ！これは町の中走ってた奴のをかっぱらったんだ。・・・・肩を少しやられてる。すまないがちょっと見てくれ！」 マリオは砂に膝をついた。 ジョーは救急用品を持って走り寄り、マリオの上着を切り払うと肩に走る深い傷を消毒して薬を塗り、固定してやった。 「遅くなってすまなかったな。・・・・自分の爆薬でやっちまった。ソーンダイクの奴から聞いたとは思うが、コントロールルームに閉じこめられちまって、そのままふっ飛ばせばこっちもお陀仏・・・・ってんで壁を剥がして障壁にした上、十八個も余計に仕掛けることになっちまった。複数の爆発で俺の居るところでは衝撃が相殺するはずだったんだが、いてっ！もうちょっと優しくやれ！・・・金属片が飛んできて、肩をざっくり切った・・・・いてて。」 「マリオ・・・そのあとは？逃げてくるときどんな様子だったの？」 「ああ、アレックスと思われる軍機がコスモ・アーミー空軍とドンパチやってたな。それに紛れられたから逃げてこられたようなもんだぜ、俺は。」 ジョーは、マリオの小さな傷に消毒薬をスプレーしてやった。 「それで、・・・ソーンダイクとはどこで別れたの？」 マリオはベラベラ話すのをやめた。 「・・�｢�｢あいつ・・まだ来ていないのか・・・？」 ジョーは頷いた。 「他の二人は・・・どうしたんだ。」 「・・�｢�｢ロマノフはまだ来ていないの。」 マリオは海を見ていた。 「カイユンは？・・・・あいつもまだか？」 「いいえ、カイユンは・・・・・」 マリオは笑って立ち上がった。 「中にいるのか！大方疲れて寝てるんだろ？あいつらしいぜ。」 ジョーは立ち上がり、マリオをとめた。 「・・・・違うの！・・・死んだの・・・・・カイユン・・・・死んだの・・・」 「・・・・・冗談・・・・だろ・・・・・？」 ジョーは答えなかった。マリオは何も言わなかった。彼の目からは大粒の涙がはらはらとこぼれていた。ジョーはマリオに背中から抱きついた。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ マリオが柄にもなく優しく言った。 「きっと来るさ。」 ジョーにとってはここで二回目の夕暮れだった。前の日とは違う優しい日没だ。ジョーの横にマリオが座り、二人は肩を寄せあって、海鳥が舞うオレンジ色の海面を見つめていた。 「ソーンダイクも、ロマノフも、約束は破らない男だ。�｢�｢・�｢時間がかかっているだけさ。ソーンダイクはバイクの運転が苦手だから、ことによったらヒッチハイクして来るかもしれない。」 ジョーは小さく笑って、黒い円筒を、そっと、まるで子供をあやすように撫でた。 「ずっと不思議だったんだが・・・・ジョー、その筒は何だ？」 ジョーは微笑を返した。 「�｢�｢�｢これはね、・・・カイユンよ。�｢�｢・・ブラスターを使う前に、技師さんに容器に入れてもらったの。ダメよね。破壊しようとしたものを利用するなんて。特殊な容器だから、15日は大丈夫・・・ですって。カイユン生粋の人類じゃないから難しいかもしれないけれどどこかのお医者さまに頼んで・・・・」 マリオは首を傾げた。 「・・�｢�｢カイユンの配偶子なの。カイユン・・�｢�｢彼、一代で終わるなんてあまりにもったいないでしょ？�｢・・�｢あんなに優しい人、連邦中を捜したって他には居ないわ。�｢�｢�｢私が死なせちゃったんだし。�｢・・�｢彼、こういうこと、きっと嫌いだし、半分変な遺伝子が混じるから、とんでもない性格になって、怒るかもしれないけれど・・・・」 ジョーは優しく・・・・・これ以上ないというほどに優しく笑った。 「私、産んで、育てたい。」 マリオは放心し、それからにっこり笑みを浮かべた。 「そうか・・・・・それはステキだな。�｢�｢あいつの子なら、素直で元気だぜ。頭もいいから小さい頃から教えれば何でもできるようになるだろう。�｢�｢・楽しいだろうなあ。俺はそうしたら爆弾の作り方でも教えてやるさ。�｢・・�｢傍に居て、父親になってやるか。」 ジョーは唖然とした。 「バ、バカ！そういうんじゃないっ！餓鬼には親が必要だろうが？ロマノフとソーンダイクと俺の三人で、父親代わりをやってやろうというんだ！」 「・・�｢�｢そうね・・・そうしたら、銃の名手で、コンピュータの天才で、爆破屋で、イルカとも話せる子になるのかしら。」 二人は笑った。 「�｢�｢�｢二人、いつ来てくれるかな。」 「きっと・・・・すぐさ。」 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 浅い二人の眠りを真夜中に覚ましたのは、妙な音だった。エア・バイクのエンジン音に似ているがトラブルがあるらしく、ガタガタいっている。崖の上なので、音の主の姿は見えない。その音が止まると、ライトを持って誰かが斜面を降りてきた。 「ジョー！マリオ！カイユン！私だ。ロマノフだ！居るかね！」 ジョーとマリオは全速で走り、ジョーは勢いをつけロマノフの首に抱きついた。 「嬉しいの、私！私・・・！」 ロマノフはジョーを軽々と抱えたままクルリと一回転した。 「ただいま、お嬢さん。・・・・あのあときっかり二十三人パラライズさせたあと脱出したんだ。アレックス中尉が空中戦をやって居てくれたんでかなり助かった。途中、あの二人に会って少々遅れたが・・・手を貸してくれ、二人とも。」 「あの二人、って？」 ロマノフにそっと地面に降ろされたジョーは崖を登りながら尋ねた。 崖の上でロマノフは指差した。 マリオが叫ぶ。 「ソーンダイクじゃねえか！」 ロマノフは言った。 「命に別状はないんだが、両足を銃で撃たれている。私が遅れたのも、途中で傷が悪化して手当てをしていたためなんだよ。慎重にね。」 ソーンダイクは薄く目を開けた。 「ジョー、マリオ・・・・無事で良かった・・・」 マリオの肩が傷ついているのを見て、ロマノフはジョーと一緒にソーンダイクに肩を貸し、マリオには足を持つように言った。 下まで降りて、洞窟から持ってきた毛布の上にソーンダイクを横たえると、ロマノフは崖の上に戻って、小さな男の子を抱えてきた。男の子は眠っており、ロマノフはソーンダイクの横に寝かせた。 マリオは訝しげに男の子を睨みつけた。 「この小さいのは何だ？」 「その子はパトリックというんです。」 小声でソーンダイクが答えた。 ロマノフがとめた。 「君は黙っていたまえ、ソーンダイク。�｢�｢�｢アレックスにそっくりだろう？・・・・クローンらしいんだ。�｢�｢ソーンダイクを撃ったのは実はこの子なんだよ。」 ソーンダイクが手当ての苦痛に顔を引きつらせながらも笑った。 「奇妙な子なんです。私を撃って血を見たとたん、半狂乱になって手当てしてくれようとしたんです。痛いよね、痛いよね、って言いながら・・・・頭を撫でてやったら�｢・・�｢他の子供達を一人のこらず逃がして、私をエア・バイクのところまで引きずっていってくれました。・・�｢�｢途中で道に迷って・・・・でも、ロマノフに会うまで、ずっとハンドルを握っていてくれました。・・・・・今はぐっすり眠っているようですね。」 ジョーは、ソーンダイクに鎮痛剤を射った。 「駄目よ、静かにして・・・・・ね・・・・・」 ロマノフはカイユンのことを尋ねなかった。尋ねなくともジョーの表情から察しがついていた。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ソーンダイクとパトリックを後ろにして、三人は朝の海を見ていた。マリオが呟いた。 「・・・・ソーンダイクを動かせるようになったら出発するか？・・・」 「ええ・・・�｢�｢�｢�｢」 「どこにだ・・・？」 「あたしは・・・・どこでもいいわ。」 ロマノフはジョーの手を取った。 「君が決めるんだよ。」 ジョーは笑った。 「どこだっていいのよ。・・・そうね、考えてみるわ。」 ソーンダイクは毛布の上で、首だけを起こしていた。 「ジョー、昨夜からの雰囲気ですと、カイユンはもう来るはずがない、と考えられているようですが、それは死んだ、ということですか？」 ジョーは、少し腹だたしげに言った。 「�｢�｢そうよ。・・・カイユンはもういないのよ。」 ソーンダイクは口を尖らせた。 「ふ�｢�｢�｢�｢�｢�｢�｢む。と、なると・・・むむむむ・・・・む～」 三人はソーンダイクを気遣った。気が狂ったのかと思ったのだ。 「いやあ・・・それじゃ、あれは幽霊に違いありませんね。」 ズボン一枚の人影がよたよたと砂浜を歩いていた。沖ではホワイティーが跳び跳ねている。 カイユンの幽霊は左足をだらしなく引きずり、それでも必死に早く近付こうとしていた。マリオが行動を起こし、抱き留めた。 「馬鹿！ちゃんと生きている、紛れもない本物のカイユンだ！ジョー！ロマノフ！」 ジョーは信じられなくてゆっくりゆっくり近付いた。カイユンは、マリオにもたれかかるようなかたちで立っていた。 「わ、一番最後だったんだ。でもよかったぁ。みんな無事で。僕、心配してたんですよ。ホワイティーも一緒ですよ。海で出会ってここまで案内してもらったんです。」 ジョーは肩を怒らせ、カイユンの前に立った。 「このとーへんぼくっ！てっきり死んだと思ってたのよ！」 カイユンはポリポリ頭を掻いた。 「五階の窓から落ちたくらいで死ぬわけないでしょう？僕の種族、とっても丈夫なんですから。僕が落ちれば僕に目が行って、逃げやすくなると思ったから・・・」 「あんなにたくさんの血が頭から出たのに？」 「？頭からの傷って、血がたくさん出ますよね。ごめんなさい。足からきちんと着地落ちるつもりだったんですけど頭打っちゃって。・・・・ドジですよね。」 「意識もなかったし・・・」 「脳震盪起こしたんんだと思います。気を失うつもりもなかったんですけど。」 「脈もなかったわ。」 「僕のところの種族は、傷ついたりショックを受けたりすると心搏数が極端に減少するんです。」 「それに首も折れてたわ！普通の人間、首があんなに曲がるわけは・・・・」 「僕の首の骨は十三本もありますよ！そうそう折れますか！僕は普通の人間じゃないです！」 「第一遅いわ！」 「あの、目が覚めたら地面に飛び降りたつもりがどういう訳か海の中に居て、しかも海流でかなり流されていたんです！誰かに突き落とされたんでしょうか。必死で泳いできたんですけど、足を捻挫していて・・・」 「そんなこと聞いているんじゃないわ！�｢�｢�｢何も・・・・何も聞いていないのよ・・・・馬鹿・・・！」 ジョーは、カイユンの胸に頭を押しつけて、ぎゅっと抱きしめた。 カイユンは面食らって、手をばたばたさせている。 マリオは優しく二人を見守っていたが、あることに気がつくとニヤリと笑い大声で叫んだ。 「おい、ジョー。�｢・・�｢あの筒はどうする気だ？予定通りに使うのか？それとも実物が来たから、手順を一から教えて・・・」 ジョーはカイユンから慌ててすっと離れると左手でマリオをすっとばし、右手でブラスターを抜き、五十メートル先の円筒を一発で蒸発させた。 「白紙に戻す！全部白紙に戻す！・・・・・もうっ！・・・・・戻さないでどうするってのよ!!」 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊ かくして五人は一堂に会した。一人増えてさえいた。 パトリックはソーンダイクとカイユンになつき、二人の間で指で砂に絵を書いていた。 ジョーは砂に棒を立て、太陽が南中したときに出発しようと決めていた。アレックスのことが少し心に懸かっていたが、無理して頭から追い出した。一先ず、この惑星内の辺境に腰を落ち着けよう。それから先はまたいずれ考えればよい。 パトリックが空を見上げ、目をしばたいた。ジョーたちの居る浜は、突然全体が日陰になった。 「こんなこと・・・・・って・・・・」 ジョーは目を疑った。 アケルナルが、その鼻面を浜に乗せるように着水した。タラップが下がり、上品なチャコールグレーのワンピースのエリザベス、スーツのジャック ルノー、最後にヘルメットをかぶり、飛行手袋をはめたパーカーが降りてきた。 「ジョーっ！」 リジーはジョーを目掛けて一直線に駈けてきて、固く抱き合いキスをした。 「皆さんもご無事ね。良かった、来た甲斐があったわ。」 ジョーは戸惑い気味だ。 「母さん・・・・あたし、嬉しいんだけど、あの・・・・」 リジーは胸をはった。 「あなたっていう子はひどい子ね。自分たちの宇宙船をあんなところに置き去りにして・・・・調子が悪くなると可哀相だから、母さんの基地の中に片付けておきましたよ。あなたは手を貸して欲しくないっていったから、母さんはなーんにもできなかったわ。（ここでリジーは笑った）だから、全てが終わってからこうして忘れ物を届けにきたの。これは手助けじゃないでしょう？パーカーが整備してくれたし、燃料も補充したわ。・・・安心してお行きなさい。あ、コスモ・アーミーなら、今のうちは追ってきませんよ。アンリがアレックス中尉に連絡を取ってしまったらしくて・・・・・あの方ったら、宇宙港を壊滅させて、コスモ・アーミーの総司令部を壊滅させて・・・・・あなたたちの起こした騒ぎもふくめて死者が出ていないのが奇跡としかいいようがないわ。もちろん、中尉さんは生きていらしてよ。おそらくもうじきここにいらっしゃるわ。あなたに会いたがっていたから・・・・もう一人あなたに会いたがっている人がいたから連れてきたわ。・・・・・さあ、ジャック・・・」 ジョーの実の父、ジャック ルノーは、少し距離を置いて娘をじっと見ていた。ジャックの目は充血しており顔は、若い時分は立派な風采だったことを偲ばせるものだったが生気がなかった。 ジョーの方はというと、十年の間、心の中に大きな部分を占めていた父への憎しみがほとんど失せていることに気づいた。彼女は父の右手を両手で握った。 「父さん・・・・・ゼナ母さんの髪は黒かったんですってね。・・・・・そうしたら、私の栗色の髪の色はあなたから貰ったことになるわ。�｢�｢私はこの髪が好き。�｢�｢あたしを生んでくれて有難う。」 ジャックは砂の上に這いつくばった。 ジョーはリジーを見た。 リジーは言った。 「ジャックはちょっと滅入っているの。実は母さん結婚三十周年を記念して、この人の悪業を暴露する書類を世間全般に公表してしまったの。ルノー社はまず崩壊でしょうね。�｢・・�｢私はとんでもない女。�｢・・�｢でもね、ジャックいいじゃないの。・・�｢�｢政略で結婚させられて以来、私はあなたとは名目上の妻でしかなかったわ。でも、心から楽しそうなあなたの顔を一度だって見たことがないのは悲しかったの・・・・権力を握って・・・華々しい生活を送っても・・・・�｢�｢あなた、寂しかったのね。・・・・私も反省しているの。そんなあなたに何もしてあげなかったのだもの。�｢�｢�｢ねえ、ジャック。もう会社にしがみつかないでいいじゃない。�｢�｢�｢あなたみたいな碌でなしに付き合う人間は私とパーカーとあと２・３人くらいよ。こうなったら毒くらわば皿まで。覚悟してね。」 エリザベスはジャックを抱き起こした。 「貴方を男としては愛せなかったし、それはこれからも同じだけれど、友達にはなれると思うわ。ダメかしら。もしも、あなたが”うん”といえばの話だけれど」 「エリザベス・・・君という人間は・・・・馬鹿な奴になったもんだ・・・」 パーカーが合いの手を入れた。 「旦那様、お気になさいませぬよう。奥様は子供の頃からこのような御性格なのです。不肖、パーカーも御供させていただきます。」 ジャックは、エリザベスに、パーカーに、ジョーに向かって微笑んだ。 「あら・・・・中尉さん来たわ！」 中型巡艦サザンクロスは、アケルナルに並んで着水した。ドロップアウトのメンバーは、ジョーの横に並んだ。負傷したソーンダイクは砂の上に座らせてもらい、ロマノフの横に居る。 アレックスは、昇降エレベーターで波打ち際に降りた。額に包帯を巻き、顎から首にかけて傷が一本走っていたが、足取りはしっかりしていた。 「みんな！生きているな！」 五人は軽く手を上げた。 マリオはジョーの背をチョンと押した。 「行ってやれよ。あいつはあんたに会いにきたようなもんだ。あいつがいなけりゃ俺たちは全員死んでいたかもしれないんだしな。」 ジョーは小走りにアレックスの方に行った。 見送りながらマリオは呟いた。 「悔しいが、似合うんだよな・・・・」 ロマノフは父親のような眼差しを投げ掛けた。 「互いに解りあえるだろうしね。」 （精一杯？）無表情にソーンダイク。 「何が襲いかかってきても安心でしょうし・・・」 カイユンは少し寂しそうに言った。 「いい人だし、幸せになれますよ。」 アレックスとジョーは、互いに手の届く位置で向き合った。 「やあ、ジョー・・・・・」 「今度はありがとう、アレックス・・・・・」 アレックスの青い瞳が少し潤んだ。 「君達が生きていてくれて・・・・それだけで十分だよ。�｢�｢�｢ジョー�｢�｢�｢・・・・できればの話だが、僕と一緒に来てくれないだろうか。・・・僕は人殺しだが、君が居てくれさえすれば、少しはましな人間になれるかもしれない�｢�｢・・・」 ジョーは、振り返り、ドロップアウトの四人の男たちを見た。みな、精一杯の作り笑いをしている。 ジョーの頬がほんのりバラ色に染まった。 「ジョセフィーヌ・・・・僕は・・・・・」 アレックスの腕が、ジョーを抱こうとのびてきた瞬間、彼女は素早く右手を差し出し、パンと合わせて握手した。 「アレックス・・・・私、あなたに”君はまだ他人に依存して生きている。甘えて生きている。”って言われたわ。・・�｢�｢本当のことだけに頭にきちゃった。・・・・でもね、今は自分の力で飛び出せそうなの。�｢・・�｢あなたのことは忘れないわ。アレックス、大好きよ。」 アレックスは残念そうに目を伏せた。 「これからどうするの、君は？」 「私は宇宙に出るつもりよ。開拓域だったらやれることもあるから�｢�｢�｢あの人たちが一緒に来てくれれば・・・・ また、四人を見る、彼らはまだ、作り笑いをしている。 「�｢�｢�｢素敵なんだけれど。・・・・私ったら、まだ甘えているみたいね。・・・・・あなたは？」 「僕も宇宙に出る。�｢�｢ついてきてくれる仲間が少なくて、サザンクロスはやっと飛んでいる状態だけれどね。�｢�｢�｢さあ、四人の気を揉ませちゃ気の毒だ！」 ジョーは、一度アレックスに背を向けたが、くるりと振り向くと、アレックスを抱擁した。アレックスもジョーの華奢な体を愛情をこめて抱き締めた。 ジョーはアレックスのもとを離れ、四人の男の元に帰ってきた。 「みんな、あたしと一緒に来てくれる？・・・クリア・ウォーター星あたりの開拓域。仕事は、運送、修理、その他いろいろかな・・・・生活保証はないし、たいへんになると思うけれど・・・・・」 マリオは嬉しげに怒鳴った。 「アレックスはいいのか!?一人で行かせちまって！」 「・・・・アレックス？・・・・あたしはあなた達と居たいのよ？」 マリオはますます大声で怒鳴った。 「わかった！行ってやろうじゃないか。どうせクラッシャーもどきをやるんだろ！爆破屋が要るんだろ？スナイパーや、コンピュータ技術者や、お茶汲みもできる生物学者が居たら便利なんだろ！�｢�｢�｢チームリーダーのいうことには逆らえない。そうだろう？」 三人は各々頷いた。パトリックも状況がわからないながらも一つコクンと頷いた。 「�｢�｢�｢・・・・�｢�｢�｢�｢ありがとう、みんな。」 ジョーは、アレックスに向かい大きく手を振った。アレックスも振り返した。ジョーが叫んだ。 「アレックスー！あたし、この四人と行くわ！・・・いえ、五人よ。あなたのクローンよ、この子。この子も連れて六人で行くわ！」 リジーは黙って見守っていたが、彼らの会話が途切れると呼び掛けた。 「もうそろそろお行きなさい！ぐずぐずしているとコスモ・アーミーが機能を回復するかもしれなくてよ。�｢�｢�｢�｢離陸した後、無事に大気圏を離脱できるかしら、なんてハラハラしながらお祈りするのは嫌ですからね。積むものがあったら積んで、出発しなさい。」 親子は歩み寄った。 「母さん・・・・・母さんはずっとこの星に居るつもり？・・・この星は決して安定していないわ。大きな社会変動が起こって危険になるかも・・・」 母親は娘の髪を撫でた。 「心配するなら自分の心配をなさい。エリザベス母さんは図太いのよ。もしもこの星が滅亡するようなことがあったとしても、宇宙船で逃げて、宇宙から滅亡の様子をじっくり見物してやるわ。�｢�｢�｢さあ、ジョーはキャプテンでしょう？指示を出さなければ・・・・心配はしていないわ。自分の信じるままにしっかり頑張りなさい。あと、メンバーからして・・・」 エリザベスは小声で囁いた。 「孫ができたら見せにきなさいね、絶対よ、いいわね。」 ジョーは思いっきりこけた。 リジーはクスクス悪戯っぽく笑った。 「アンリやアンナ、そして、この星のお友達のことを忘れるんじゃあありませんよ。」 ジョーは、男たちを見て言った。 「乗船開始よ！」 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 轟音と共に上昇するアケルナルとサザンクロスに地上に残された者たちは手を振り続けた。沖では白いイルカが胸びれを振っていた。 「とてつもない娘だ、ジョセフィーヌは・・・・・エリザベス、君にそっくりだ。」 ジャック ルノーは、機影が見えなくなっても尚、空を見上げていた。 「あらあら、あの子、私とは血のつながりはないんですよ。似るとしたら、あなたの方じゃないですか？」 パーカーが、どこから出したのかよく冷えたシャンパンの入ったグラスを二人に差し出した。 「お嬢様はたいした方ですよ。�｢�｢�｢奥様も旦那様ももっともっと誇ってよろしいと私は思います。」 三人は静かに微笑んだ。幸せな時間が流れていった。 「乾杯！」 三人はグラスを合わせた。”チン”と快い音がした。 |
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