| その頃、他の人々はどうしていたであろうか？ タニアは村に戻った。彼女に村を出る気は今のところはない。しかし、固く決心していることがあるらしい。 ノートン夫妻はジョイスと共に小国の一つに落ち着いている。小さな畑を始め、貧しいながらも幸せそうだ。 アンリは許婚者のアンナと一緒に、何者かによって頭を強打されたビクトールを病院に見舞っていた。ビクトールは気弱なアンリが自分を殴ったなどとは夢にも思っていない。 ダウンタウンは何事も変らなかった。サムおじさんは黄金の人差し指を使って生計を立て、ジャンは酒をきかせたコーヒーを啜りながら力なく笑い、レオは自分の酒場の裏で物思いに耽っていた。 コスモ・アーミーおよび政府は大わらわだった。これは当たり前。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ まだくすぶっている宇宙港方面を、ビルダーは手を後ろに組んで眺めていた。 彼のまわりには、政府のお偉方がずらりと並んでいる。 「�｢�｢�｢随分と破壊されましたね。・・・・」 ビルダーが言うと、担当係官が進み出た。 「ビルダー博士、誠に申し訳ございません。遺伝子工学施設は、全力を上げて以前より充実したものを建設いたします。�｢�｢�｢失われてしまった遺伝子サンプルを取り戻すすべはありませんが、どうか、連邦の方にはなにとぞ・・・・・」 ビルダーは男たちを見もせずに言った。 「何のことです？�｢�｢�｢私は種族学者�｢�｢�｢遺伝子工学などに手を染めたことは一度もないのですが？」 部屋の中がざわついた。 「ほとんどの方が種族学者の仕事を正しく理解していらっしゃらない。�｢・・�｢我々は人間を変えたりはしません。変っていく現象を見るだけです。どのような人間が生き、生かされて、人類という種が宇宙的規模でどのような方向に向かっているのか判断するのが私の役目です。・・・・いや、たいへん貴重な体験をさせていただきました。・・・・今回の例を分析する限り、人類の”種”としての停滞は当分来そうにありませんね。�｢�｢�｢事実は事実として連邦に報告します。悪しからず。�｢�｢�｢・・・・・あと・・・そうですな、階級制は全廃したほうがよろしいでしょう。私の観察では、Ａ級と呼ばれる人々よりもＤ級とされている人々の方がよほど生き生きしている。�｢・・�｢いや、これは年寄のたわごと�｢・・�｢別便で、連邦の遺伝子工学者がじきにくる予定になっています。言い訳はその人に�｢�｢�｢私はまるで管轄が違うのでね。」 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 大気圏を離れたアケルナルとサザンクロスは全速でワープ可能域に近付きつつあった。 「ジョー、具体的な行き先を決めたよ。」 アケルナルのスクリーンにはアレックスの顔が映っていた。 「どこ？」 「ミランダ星域。そちらと全く逆だ。」 「そう・・・・元気でね。」 「ああ、�｢・・�｢一先ず、第一ワープを先にさせてもらうよ。アケルナルよりも短時間でワープ可能になるんでね。・・�｢�｢それじゃ、ドロップアウトの諸君、いずれ、また！」 スクリーンがブラックアウトした。 マリオはふーっと息を吐き出した。 「ついに行っちまったか・・・・しかし、”いずれ、また”ってのは何だ。逆方向に向かうってのに。・・・・・アレックス最後のお茶目か？」 カイユンが、パトリックにワープ酔いの薬を飲ませながら言った。 「僕はあながちそうは言えないと思うな。・・・どこへ行こうが宇宙はつながっているでしょう？いつかまた会えますよ。」 「・・�｢�｢にしても・・・・最後までかっこつけやがって・・・コスモ・アーミーも抜けたことだし、”ドロップアウト”なんて呼ぶ必要はないはずだ。」 ジョーは、リマンの主星を見ていた。 「あんな星でも、生まれたところから離れるって、少し寂しい感じ・・・・・」 マリオは、鼻を鳴らした。 「そうか？俺なんざ、故郷のドルガ星には死んでも戻りたくないが・・・」 「�｢�｢・・結局メチャクチャやったのよね。命懸けでかけずりまわってひっかきまわして・・・・でも、施設はまたいつか元に戻るし、あれが人々のためになったとはとても思えない。�｢・・�｢何も変っていない。変なことやって、はみ出して、そこに居られなくなって、とうとう星から落とされた・・・・」 サングラスをかけなおしてソーンダイクが呟いた。 「�｢・・�｢しかし、宇宙に出てしまえば、上下はありません。落とされたというのは変です。�｢・・�｢強いて、リマンの重心を基準とすると、むしろ上昇したことになりますよ、ジョー。」 「・・・・理詰めで行けばそうなんでしょうけれど、どうしても”上”って感じがしないのよ。あたしだけかしら？どんどん”下”に行くような気がしているのは・・・・あたしをはじめ、このメンバーじゃ、どこに行ってもはみ出して落ちていきそう。」 男たちは思わず頷いていた。 「アレックスのつけたコードネームの”ドロップアウト”ってのが言い得て妙なのよね。・・�｢�｢いっそこのままチームの名前にしてしまおうかしら。」 「だめ！」 カイユンが叫んだ。 「そんな普通じゃない名前駄目です。僕、諦めてませんからね。キャプテンには普通の暮らしをしてもらうんです！ドロップアウトなんて駄目ですっ！」 「うるさい！普通の暮らしをしてもらいたいのはカイユンの方よ。あたしも諦めないからっ！」 ロマノフは、呆れてものが言えなかった。どう考えても普通のわけがないではないか。 マリオがちゃちゃを入れた。 「ま、名前なんてものはあとから決めようぜ。」 ソーンダイクの几帳面な声が響いた。 「キャプテン、ワープ可能です。」 「よし！了解！」 ジョーは、ワープ装置に手をかけ、新たな生活へのレバーを引いた。 「ワープ・インよ！」 �｢�｢ＥＮＤ�｢�｢ |
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