ネネさんと不思議のダンジョン（後編）
　ネネさんはあまりのことにしばらく立ちすくんでいましたが、はっと我に帰りました。

　ポポロ君はこの暗い洞窟のどこかにいるのです。こんなところに止まっていてはいけません！

　幸いにも洞窟の地面はうっすらと光るコケのようなものに覆われており、歩くのに不便はありませんでした。いえ、地面だけではありません。壁となっている岩のそこここもぼんやりとお日様色に光っているのでした。
　ネネさんはすうっと大きく深呼吸をしました。足元では真似してちびモグラも息を吸っています。

　(冒険で一番大切なことはね、どんなときにも慌てないことだよ。落ち着いていれば、きっといい考えが浮かぶものさ。)

　トルネコさんが繰り返しいっていたとおり、この深呼吸一つで頭の中がすっきりしてきて、何をやるべきかすぐにわかりました。皮袋を地面に置いて、巻物を何本か取り出します。トルネコさんから数多くの冒険の話を聞いて、どんな巻物がどんな効果をもっているのかはネネさんにははっきりわかっています。

　「あ、あったわ。」

　一つ抜き出すと、よく通る声で叫びます。

　「レミーラ！」

 白紙の巻物の上にダンジョンの地図が魔法のように浮かび上がります。ちびモグラは肩の上から小さなビーズのような黒い目をぱちくりさせて眺めています。・・・・・いくつ者通路が曲がりくねった道で繋がっていて・・・・階段を表わす印がただ一つ青く浮かび上がっていますが、それは今いる場所からずっとずっと離れたところでした。ネネさんは続いてもう一本の巻物を抜き出して読みました。読んだのは『地獄耳の巻物』・・・・・巻物の効果で魔物達の居場所が赤い点になってさきほどのレミーラの巻物の上に現れます。それを見たネネさんはもう少しで手から巻物を落としそうになりました・・・・・地図の上には無数の赤い点。部屋の中にはほとんど魔物で埋め尽くされているような所まであります。・・・・こんな場所にポポロがいるなんて！・・・・・一人で来たのは間違いだったかもしれません。スコットさんやロレンスさんを待つべきだったのかも・・・いえ、もう手遅れなのかもしれません。いくらポポロが勇敢で素早い男の子でも、魔物に囲まれて、捕らえられて、そして・・・・

　ちびモグラがキイキイと心配そうに声をあげ、ネネさんの頬をそっと触りました。
　ネネさんははっとして、ちびモグラのつやつやの毛皮を撫でるとぶるぶると首をふりました。考えていても何も変わりません。今はポポロの無事を信じて進むだけです！
　と、赤い点に混ざって、黄色の小さな点が地図の上に現れたのにネネさんは気がつきました。黄色の点はダンジョンの奥、階段がある部屋の方に向かって移動しているようです。

　もしかしてポポロ!？

　黄色の点はすうっと消えてしまいましたが、それだけで、ネネさんは元気がでました。もう一度地図を見ます。使えそうな巻物を取り出しやすいように肩掛け鞄に入れなおします。


　そのとき！

　一つの大きな赤い点が通路からネネさんがいる部屋に移動してきました。ネネさんはぎゅっと正義のそろばんを握り締めます。

　魔物が現れました！赤紫色の大きなドラゴンです！ドラゴンはネネさんをじっと見つめるとすうっと大きく息を吸い・・・・・

　「えいっ！」

　ネネさんは掛け声と共に勢いよく杖をドラゴンに向かって突き出します。あたりは一瞬光で満たされ、ドラゴンの悲鳴が聞こえ、光が収まるとドラゴンの姿はなくなっていました。
ドラゴンは凍える吹雪を吐き出そうとしたのでしょう。霜のようなものが地面に落ちており、こわごわ触ったちびモグラはその冷たさにキャッと声をあげました。・・・・吹雪の直撃を受けていたとしたら・・・・戦う力もなく魔法も使えないネネさんには真っ向勝負ではとても相手ができる敵ではありませんでした。
　でも、数々の冒険でトルネコさんが鍛え上げた正義のそろばん（もちろんレベルは＋９９です）は怖ろしいドラゴンさえも光の彼方に飛ばしてくれたのでした。

　（あなた・・・・ありがとう）

　と、ちびモグラはくんくんと地面の匂いを自慢の鼻で嗅ぎ、ぴょんと一つ飛び上がると目を糸のように細くしてドラゴンが来たほうとは別の通路を指差しました。

　「ポポロの匂いがするの？」

　こくこくと頷くちびモグラをネネさんは抱き上げてキスしました。少なくともポポロはこのドラゴンに食べられてしまったのではなさそうです。

　（ポポロは生きている！きっと生きているわ！）

　もう一度正義のそろばんをきゅっと握り締め、ネネさんはスカートを翻すとダンジョンの奥に向かって小走りに移動し始めました。

　（ダンジョンではね、魔物の動きに気を配ることが大切なんだよ。やみくもに進んでいって鉢合わせしたら大変だ。それから、移動する時は最短距離でね。魔物も追いかけてはくるけれど、私よりも足が速い奴はあんまりいなかったからね。斜めに移動するとうまく逃げられることが何度かあったよ。）

　夕ご飯のあとにのんびりと冒険の話をしているトルネコさんの声が頭に響きます。

　大きな狼の姿をした魔物が現れました！まるで人間のように後足だけで歩き、人を丸呑みできそうな大きな口からは赤い舌がだらりと垂れ下がっています。

　（相手を殺そうなんて思っちゃいけないんだよ。・・・・・魔物だって生き物だからね。殺される、とわかったら、必死で反撃してくる。とにかく無事で帰ることを考えるんだよ）

　即座に正義のそろばんを掲げます。

　「えいっ！」

　・・・・・狼の化け物は光の彼方に消えうせました。

　「ふう・・・・」

　息をついたネネさんの頭を何かが蹴飛ばしました。上を見るとキラキラと輝く金色の蝿がこちらを窺がっています。光るものが大好きなちびモグラは場違いに蝿に向かって手を振ります。体は小さくそれほど怖ろしい相手ではないように思いましたが用心にこしたことはありません。・・・・正義のそろばんを掲げると蝿はすぐに消えました。蹴られたところも特に腫れてはいません。毒をもってはいなかったようです。

　「ちびちゃん！お願い！ポポロのところに連れて行って！」


　ネネさんはちびモグラの鼻を頼りに急ぎます。途中で出くわしたすべての魔物を正義のそろばんで光の彼方に飛ばしながら・・・・

　「はあ、はあ・・・・・」

　大きな部屋から通路に飛び込んでネネさんは大きく息をつきました。・・・・有り難い事に近くに魔物はいないようです。

　ここには本当に多くの種類の魔物がいました。しかし、不思議なことに、一度追い払った魔物と同じ種類の魔物とは二度と出会わないのです。・・・・・鋭い歯をもった大きなリス。どんな大柄の人間よりも大きな黒い犬。豚のような化け物はトルネコさんが言っていたオークという魔物でしょうか・・・・一頭のみならず三頭揃ってやってきたときには冷や汗が流れましたっけ。熊のような魔物は暴れ熊という奴でしょうか、それとも、グリズリー？どんな動物にも似ていない魔物もいました。ライオンのような、水牛のような・・・・いかにも邪悪そうな魔法使いや魔女・・・・・片腕が鉤のパイレーツ・・・・・・・

　幸いなことに、ネネさんが正義のそろばんを掲げる前に襲い掛かってきた魔物は居ませんでした。どうやら相手はネネさんの出方を待っているようなのです。ネネさんの服が戦士というよりは魔法使いに近いので正義のそろばんが杖に見えるのかもしれません。攻撃はしてこなかったものの、不思議な踊りを踊ってくる魔物が多数いました。・・・・・・ネネさんにはそれがどういう効果をもたらす踊りなのかは皆目見当がつきませんでしたけれど、ちびモグラは楽しそうにつられて踊りまくっていましたから結構強力な踊りで、ネネさんは運がよかっただけかもしれません。

　と、くいくいとネネさんのスカートの裾をちびモグラがひっぱりました。
　ネネさんが視線を向けるとちびモグラはクンクンと地面の匂いを嗅ぎながら別の部屋へ移動していくところでした。

　ネネさんが追いつくと、ちびモグラはダンジョンを流れる川のほとりでこっちだよ、こっちだよ、というように前足を振っていました。・・・・そこは天然の船着場のようになっており、ボートが繋がれていました。

　「ポポロはここまで来たのね！」

　ネネさんはボートに乗ろうとして躊躇しました。川は急流ではありませんが、流れに逆らって泳ぐことなどできそうにありません。・・・・・ダンジョンの中を歩くのとは違って元の場所に戻れるかどうかわからないのです。

　（ううん！ポポロは船に乗ったはずですもの！もし引き返さなくてはいけなくなったら・・・・）

　ネネさんは肩掛け鞄の中の「ワープの巻物」にそっと手をふれました。どこに出るかはわかりませんが、きっとダンジョンのどこかに出てくれるはずです。

　（どんなときにも神様はなにかしら道を残してくれているものだよ。・・・・ただ私達がそれに気づかないことが多いだけなのさ）

　「ちびちゃん！行くわよ」

　ちびモグラを肩に乗せ、乗り込むと、ボートは魔法のようにすうっと動き出しました。そして、川の流れる音に混じって奇妙な歌が聞こえてきました。初めは意味を持った言葉でしたが、すぐにそれはどこの国のものともわからないような言葉に代わりました。そして、両岸には岸を埋め尽くすように人形が配置され、うつろな眼差しでこちらを注視しています。ネネさんはとっさにミズゴケで耳栓をしました。不思議な歌に惑わされたのか転がるように踊っているちびモグラの耳はネネさんが手で塞ぎます。

　（これがミステリードールという魔物なのかしら・・・・それにしてもなんて数なの！）

　耳栓をしても不思議な歌は頭の奥まで侵入してくるようでしたし人形の単調な動きは見ていると幻惑されそうでした。

　ボートは動き出したときと同じように静かに止まりました。・・・・・何が待っているのかはわかりませんが、行くしかありません。

　地図ではここは奥の階段のある部屋に近い場所です。そして、その、階段のある部屋には赤い点がびっしりとひしめいていました。

　・・・・・間違いなく魔物の巣窟です。

　ちびもぐらが地面の匂いを嗅ぎ、一本の通路を指差しました。
　・・・・・・それは階段のある部屋へと通じる道です。間に一つの小さな部屋があり、その先に大きな広間が待っています。そこに階段の青い印があるのでした。

　ネネさんはゆっくりと足を進めます。右手で正義のそろばんを握り、左手でリレミトの巻物を触ります。この巻物は一番大切なものです。もしもポポロ君を見つけだせたとしたとき、この巻物を使えば一瞬で地上へと戻れるのですから。

　通路から小部屋に出ると、大きな鳥の魔物が待ち受けていました。今までの敵と違い、ネネさんを見ると、怒ったように地団太を踏み、わけのわからない声を浴びせかけます。

　（大ニワトリ??いえ、あれはニワトリというよりもアヒルだわ）

　ネネさんは迷わず正義のそろばんを掲げ・・・・

　！

　一瞬姿は霞みましたが魔物は消えてくれませんでした。見掛けによらず高いレベルを持っている魔物なのかもしれません。ネネさんは左手の巻物を草に持ち替えました。「惑わし草」、ひきつけてから投げなければいけませんが、確実に敵を怯えさせ立ちすくませることができます。

　大きな白いアヒルの魔物はガァガァとがなりたて、ずどどどど、とネネさんに向かって突っ込んできます。・・・・・が、ネネさんが薬草を握りつつ、ひょいとかわすと反対側の壁に激突してそのままひっくり返ってしまいました。

　（な、なんなの???）

　レベルの高い魔物にしては不甲斐ない結末に気が抜けながら、ネネさんは通路を進みます。・・・・・・この先が最終地点です。ポポロ君は無事でしょうか・・・・怪我などしていないでしょうか・・・・・・

　狭くて暗い通路を抜けるとそこは光に満ちた大きな空間でした。広間にひしめいていた魔物たち・・・・・その魔物の中には、ネネさんが正義のそろばんでどこかに飛ばした者も混ざっています。・・・・・・そして・・・・・何故だかみんな・・・・・・邪悪な顔をした魔女やパイレーツでさえ、優しそうに微笑んでいました。

　魔物たちはまるで城の門番が賓客を迎えるときのように左右にざっと分かれました。ネネさんの前に道ができます。そしてそれは部屋の奥の一段高くなったような場所に続いているのでした。

　「ママ！」

　間違えようの無いポポロ君の声が響きました。段の上からです。まさか、まさかこれはいけにえの祭壇!?

　リレミトの巻物を片手にポポロ君に走りよります。

　「ポポロ！」

　ネネさんはぎゅっと痛いくらいにポポロ君の体を抱きしめます。

　「よかった！よかった！・・・・・無事？怪我はない？」

　「？え？怪我？なんのこと？」

　「ううん、それより帰りましょうね。」

　巻物を読もうとしてネネさんは表情を凍りつかせました。こともあろうにちびモグラが魔物たちのところにいってしまっているのです。・・・・・いくらちびモグラが魔物の端くれだからといって、こんな場所に残してはいけません。

　「ママ、ママ、もうちょっとここに居ようよ。そりゃあ、ちょっと脅かされてドキドキしたりもしたけれど、それも面白かったよ。ここの皆、とってもいい人たちだよ！」

　それは一体どういうことなの？と問いかける前に、魔物の群れから一匹がネネさんの前に進み出ました。ネネさんは正義のそろばんを掲げましたがこの魔物には全く通用しませんでした。・・・・・・このダンジョンのボスに間違いありません。

　「駄目！この子だけは！この子だけは絶対に護ってみせる！」

　怯えてポポロ君を抱きしめボスから遠ざかろうとするネネさんを見て、ボスはちょっと悲しそうな顔をしました。そして、仲間の魔物たちを振り向くと、白い手袋を嵌めた手でパンパンと手拍子を打ちました。するとどうでしょう！

　魔物たちの何匹かが笛や太鼓を持って明るく楽しい音楽を演奏し始めました。広間の魔物たちが一斉に踊ります。ネネさんは後ろから大きな熊の魔物にふわりと抱き上げられ・・・・・踊りが一番見えやすい場所に座らせてもらいました。壇の上ではアクロバットのようなダンスが展開されていました。さっきのアヒルもいます。リスもいます。大きな犬もいます。そして、ボス自らが中央に立ってくるくると回り、跳ね、踊りまくります。

　異常とも思える展開についていけなかったネネさんでしたが、だんだんと楽しい気分になってきました。もうちびモグラは魔物に混じって跳ね回っていますし、ポポロも手を差し伸べて誘いに来たボスに導かれ、壇の中央で踊りはじめました。
　
　（この魔物たちは、私達を楽しませたかっただけなの？？）

　唖然とするネネさんの頭の横に、さっき光の彼方に飛ばした金色の蝿がやってきました。・・・・・・いいえ、蝿ではありません。透き通った羽を持った妖精です。妖精は光の粉を撒き散らせながら飛び回ると口を尖らせて一度怒った顔をしましたが、すぐに笑顔になって額にキスしてくれました。

　何匹かの魔物が一緒に踊ろうとネネさんの手をとります。ネネさんは一度目のあたりをごし、とこすってから立ち上がり、ダンスに誘われたお姫様がそうするように、スカートの裾を少し持ち上げて一礼しました。

　くるくる回って、飛び跳ねて・・・・・・ネネさんとポポロ君とちびモグラは顔を見合わせにっこりしました。

　魔物たちはニコニコ顔の三人を見て、自分達もニコニコ顔になりました。この魔物たちはここに来てくれた人の笑顔がなにより嬉しいようです。

　ネネさんは魔物たちを見渡して言いました。

　「今日は本当に有難う！とっても楽しかったですわ。・・・・・・こんなにいっぱい笑って踊ったのはもう十年ぶりくらい。」

　魔物たちから歓声が巻き起こります。そして、みんな身振り手振りでまたおいでよ、と誘います。

　ネネさんは困った顔をしました。

　「あのね、よく聞いて。この世界にはあなたたちとよく似た姿をした魔物がいるの。・・・・そしてその魔物たちは人間を襲っているの。」

　驚くような呻き声が魔物たちから洩れる。

　「ポポロのように魔物だからといって悪いものばかりじゃないとわかっている人間、そして多くの子供たちはきっとあなたたちとすぐに仲良くなれる。でも、大人は・・・・・私もそうでしたけれど、貴方達を怖いと思ってしまうの。もしもここが見つかってしまったら、きっと貴方達を退治するために剣士や魔法使いが送り込まれてくるわ。・・・・・そして貴方達を傷つける。捕まえて見世物にしようとするかもしれません。私達が貴方を護るといっても限りがあるし・・・・・・ごめんなさい。まだこの世界はあなたたちを受け入れるだけの準備が整っていないんです。・・・・・もう少し、もう少ししたら、きっと準備が整います。そうしたらまた、きっとこの世界に・・・・・・・」

　最後は消えるような小声になってしまいました。俯いたネネさんを慰めるように魔物のボスが大きな鼻をネネさんの茶色の髪にぐりぐりと押し付けます。そのとき、この魔物の声が頭に響いてきました。

　（気にしないで。僕ら、慣れて居ますから。あの石版を今度この世界の別の人が拾ったときには準備が整うように祈っていますから。）

　そういってボスはズボンのポケットから小さな種を一つ取り出すとポポロに握らせ、頭を撫でました。そして広間の隅の階段を指差します。

　「さよーならーッ！またね〜！」

　ちびモグラを抱いたポポロが先に階段を上っていきます。「また」はもうおそらくはないのだとわかっているネネさんが、ぴたりとあとに続きます。

　魔物たちは二人が見えなくなってしまっても尚手を振り続けていました。

　ボスは・・・・・・漆黒の毛皮を持った大ネズミはその大きな瞳から涙を一粒こぼしました。



　「ネネさん！」
　「ネネ殿！」

　地上に戻った二人を待っていたのはロレンスさんとスコットさんでした。

　「ご無事でよかった！今ネネさんの書き置きを見て、石版を調べようかどうか迷っていたところなんです。」

　・・・・・・地上ではダンジョンに入ってからほとんど時間は経過していなかったらしい。

　「怪我などしておられぬか？」

　心配そうにいうスコットさんにネネさんは微笑みかけます。

　「ええ、親切な人ばかりでしたから。」

　「？？？？」

　首を捻るスコットさんの横でネネさんは石版を拾い上げました。声に出さずに石版の文字を読みます。

　（我ら汝を導く。来たれ我らの夢と魔法の王国へ・・・・・）

　石版はネネさんの手の中で光を発し、消えていきました。ポポロが泣き出しそうになって目をみひらきます。

　「大丈夫。石版はおひっこししただけなのよ。・・・・そしてね。私達の準備が整ったらきっと戻ってきてくれるわ。」


　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊


　「ほほう・・・・それはまた凄い冒険だったね！」

　夕食後、でトルネコさんは二人から話を聞いてにこにこと笑いました。

　「それでね、これがその種なんだよ。ねえ、パパ、これってどんな花が咲くのかな？」

　トルネコさんは虫眼鏡を使ってしばらく見定めていましたが、首をふりました。

　「今まで見たこともない種だね。これは凄い発見だぞ！」

　得意げに胸を張るポポロ君に、トルネコさんは釘をさしました。

　「種には不思議な力をもったものが多いからね。魔法の専門家に見てもらって危険がないものかどうか調べてもらってからまくことにしよう。それまでパパが預かっておくよ。いいかい？」

　「はい！」

　「それから・・・・・今日のことは必ず日記に書いて置くこと。・・・・・・子供のうちに出会った出来事はね、大人になるとそれが本当にあったことなのか夢だったのかわからなくなってしまうことが多いものだよ。だから、今のうちに一体何があったのか小さなことまで書いておきなさい。」

　ポポロは頷いて、日記の置いてある自分の部屋に行きかけて振り向きました。

　「パパ。日記は書くけど・・・・・書かなくても僕はちゃんと覚えているようにするよ。あれが夢だったなんて絶対に思わないように覚えているよ！」

　ポポロが部屋に入ってしまってからトルネコさんはネネさんに尋ねました。

　「ポポロはああ言ったが、・・・・・あんなに不思議な出来事そうそうあるものじゃない。一晩眠ったらもう夢だと思ってしまうかもしれないね。」

　ネネさんはくすっと笑いました。

　「大丈夫ですよ。ポポロは絶対に覚えておかなければいけないことを忘れたことはありませんもの。・・・・・・・ねえ、あなた。私、ポポロはもう少し大きくなったらきっとたくさんの魔物とお友達になれるような気がします。」

　テーブルの上で丸くなって眠っているちびモグラのつやつやした毛皮を撫でながらネネさんは言います。

　「・・・・・・このちびさんのように、人間と友達になれる魔物はこの世界にだっていっぱいいるはずですもの。その魔物さんたちと一緒に冒険したりするかもしれません。」

　「ネネ、それはいくらなんでも無理だよ。」

　ネネさんはにっこり笑っています。

　トルネコさんもにっこり笑いました。そんなことが実際に起こるかもしれません。なんといってもネネさんの言うことはとてもよく当たるのですから・・・・

　
アサルトももんじゃＳ様31415ＨＩＴキリリクＳＳ後編です。
妙な魔物が多数出て来ますが、もうお分かりの通り、例の今年20周年記念になる場所に生息している連中です。・・・・知人は子供の頃あそこで漆黒の大ネズミに出会い、怖くて泣いたそうです。そうですよね。知識がなければ怖いと思います。・・・・・一方管理人の会社の先輩はあそこが大嫌いで「あんな場所、結局は金を吸い上げているだけじゃないか」とのたまいました。・・・・・夢と魔法の世界。きっとそれは万人にとって同じ気持を起こさせる場所ではないんですよね。変な話とはわかっていましたが、気合いだけは入れて書きました。
キリリクいただいたのに何のパロディなのかわからない文になってしまいました。
深くお詫びいたします。

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