三人が席につくと、まさに試合がはじまろうとしているところだった。二人とも鎧に身を固めている。体が大きく、ブロード・ソードを構えているのがホスラム、サイモンは、アリーナに声をかけてきたすらりとした剣士で細身の剣を構えていた。両者とも、防護のために兜を深々とかぶり鉄の盾を左手に持っている。
審判の手が上がった。二人は間を保ち、相手の出方を窺っている。最初に仕掛けたのは、大男のホスラムだった。彼は剣を軽々と振りかぶり、サイモンの頭目掛けて打ち降ろした。サイモンは素早く盾を突出し、がっしりと受け止めた。剣は盾の上をすべり、ホスラムはサイモンの左によろけた。だが、サイモンが反撃する間もなく再び次の一旋が襲いかかってきた。サイモンは咄嗟に後ろに下がってよけた。重い装備をものともしない身の軽さだ。サイモンは、しなやかな身のこなしでホスラムに切り掛かり、ホスラムが打ち返そうとすると素早く避けた。アリーナの戦い方と少々似通っている。あるいは、アリーナの戦いぶりをみて、ヒントを得たのかもしれない。
両者は、組んではほぐれ、また刀を合わせた。剣がぶつかるたびに、金属音が響き、火花が散った。
ホスラムが、渾身の力を込めて振り降ろした一撃は、サイモンの剣で止められたが、体格でおとるサイモンはじりじりと押されていった。アリーナは、自分の対戦相手ということではなく、勝負の行方がどうなるかはらはらしていた。握ったこぶしは汗で濡れ、手足の先が妙に冷たくなっている。
押されていたサイモンはじつにゆっくりとだが姿勢をおこしていった。細身の体のどこにそんな力があるのか不思議なくらいだ。そしてついにホスラムの剣を解くと、自分の方から連続して打ち込みにかかった。細い剣は小刻みな攻撃にうってつけのようで、ホスラムは右から左からやってくる攻撃に、盾での防戦にかかりっきりになった。サイモンは回り込み、自分の影が相手に落ちる位置までくると、ジャンプした。ホスラムは防ごうとしたが、サイモンの背から差し込んでくる真昼の日光に目を射られた。次の瞬間、ホスラムの喉元にはサイモンの剣先がつきつけられていた。ホスラムは負けを認め、二人の剣士は礼をしてその場を分かれた。
アリーナは、頭のなかで模擬戦をしていた。自分は素早い的確な攻撃が身上だ。サイモンは、しっかりした防具をつけているにしては身軽であり、しかも攻撃を連続してしかけてくる。勝算はなくはなかったが、自分の思い通りの位置に攻撃を決めようと思うと、時間がかかりそうだった。ミスター・ハンの時には余裕を持って逃げ回り、相手が疲れるのを待ったが、サイモンにその手は通じなさそうだった。体力で言えば、アリーナはサイモンに勝てないのだから。とにかく、全力を尽くすまでだ。
しかし、ほれぼれするような剣裁きだった。迷いのない流れるような剣の扱い。”切ったほうがよいだろうか、切らないほうがよいだろうか・・・・神はどうお考えだろう”と悩みながら魔物を切るクリフトの剣術と大違いだ。
そのクリフトは姫に昼食を食べるように促した。アリーナが控え室に行こうとすると、ブライが風呂敷包みを高く掲げて、エンドール城の中庭に行きましょうと提案した。
美しく手入れされた庭園の芝生に、ブライは大きな敷物を広げた。食事は、城の料理番がつくってくれた簡単な軽食だ。ブライはアリーナが、表面上は変わりなくてもかなりの重圧を感じていることに気付いていた。控え室では、それが増すばかりだろう。
姫は楽しげに二人に話し掛けていたが、食は進まなかった。ブライが小さなコップについだリンゴのジュースだけを少しずつ飲んでいる。クリフトも心配し、しばらく姫が手持ち無沙汰にパンをゆっくり千切っているのを見ていたが、急に駆け出すと、城の中にひっこんだ。そしてハアハアいいながら戻ってくると、荷のなかにあった小瓶をアリーナに差し出した。
「姫さま、これを食べて見ませんか？」
アリーナはビンを見て表情を弛ませた。黄色いマーマレードが入っているガラスの壷だ。フレノールのターブレ神父の手作りだ。アリーナは壷のふたになっているコルク栓をポンと外し、木のスプーンでマーマレードをすくって丸パンに塗り付けた。端っこを少しかじると苦みがあるが程よくさわやかに甘い。ハシゴをオレンジの木に掛けて、手入れをしている丸顔の神父の姿が思い出された。一口、又一口と食べているうちに、パンはすべてお腹のなかに収まっていた。クリフトは、自分もちょっとだけ手のひらに乗せてマーマレードを味見した。
「爺さま、なかなかのものですよ。一口どうぞ。」
「・・・・・おまえさん。わしをあとどのくらい太らせる気だ？」
内心、よくぞ姫さまの気持ちを和らげたと言いたいブライだが、態度には表さなかった。
昼の日は暑いくらいで、サントハイムよりずっと南にあるここエンドールは、もうすっかり夏だった。サントハイムを出て四ヵ月。早いものだ。
三人は談笑しながら昼食を終えた。
アリーナは、控え室で、呼び出しがかかるのを待っていた。ブライとクリフトは既に観客席に移っている。だいぶ長い時間待たされて、待ち切れなくなったアリーナは、コロシアムへ続く通路に扉を開けて出た。そこには、自分と同じように出番を待っているサイモンの姿があった。サイモンは手甲をつけた右手を差し出した。アリーナは、対戦するもの同士が握手などしてよいのかしらと考えたけれど、素直に握手に応じた。兜から唯一見えている目が、笑ったような気がした。
「アデル君。いい試合をしようね。私は君の戦いぶりを予選の時からみていたが、素晴らしい動きだ。手合せするのが楽しみだよ。」
アリーナは、優しい言葉を掛けられて少々面食らった。が、すぐに嬉しくなった。少なくともこの剣士はデスピサロとは違い、暖かい心をもった、武人だ。
「ええ、わた・・・・僕も精一杯戦います！」
「よろしく。君が小さいからといって手加減はしないからね。」
そこに小走りにやってきたのはモニカ王女だった。王女はサイモンの方を気にしながらアリーナの肩を抱いて話した。
「・・・・無理はしないで下さい。・・・・前にもお話ししたけれど、私はあなたが来るまでは、優勝者と結婚するということを運命だと思って受け入れようとしていたのですから・・・・・」
「大丈夫です！わた・・・僕、きっと頑張って勝ってみせます！王女さまが結婚しなくて済むように。」
「でも・・・・こちらの剣士もとても強いし、・・・・・デスピサロは・・・・今、準決勝であたるはずだった人が、デスピサロを恐れて試合を放棄しました。・・・・私は、自分一人のために他の人を蔑ろにできない。」
サイモンが歩み寄った。モニカの足元に跪く。
「モニカさま。この少年はあなたの友人のようですね。・・・・・ご安心ください。私はあなたと結婚したいがためにこの地まできたのではありません。アデルと同じく腕試しのためです。・・・・聞けばあなたは優勝者と結婚するのがいやでありながら、もしも優勝者があなたと結婚を望めば、そうするつもりでいらっしゃる。何故ですか・・・？」
モニカはサイモンを立たせた。
「・・・・お父さまは、国民に楽しみを与えるために武術大会を開きました。そして私との結婚を国民に明言なさったのです。・・・・今、豊かなこの国にも暗い雲が迫っているような気がします。魔物が増え、交易が途絶えがちになり、人の心に隙間ができつつあります。・・・・私が結婚すれば、国は祝いで景気がよくなるでしょう。私一人のことで多くの民が活気づくのです。ですから・・・・」
サイモンはじっとモニカを見つめているようだったが、口を開いた。
「あなたは優しいかただ。しかし、あなたがご自分の感情を殺すことによって国が栄えるとは私には思えません。私は旅してくる途中、あなたや、あなたのお父上である王の噂を何度も聞きました。民は王家を慕っております。いくら優勝者だとしても、その男があなたにふさわしくないと思えば、民が決してあなたと結婚させようとはしないでしょう。・・・・とにかく勝負は、対戦するものの間でつけるものです。あなたがなんといおうとアデルは全力で私と対戦するでしょう。・・・・さあ、モニカ姫。観衆が待っております。あなたなしでは試合は始められません。」
サイモンとモニカはしばし見つめあって・・・・モニカがはっとしたようにサイモンから目を離すと、アリーナに祝福のキスを送って去っていった。
「さあ、じきに出番だ。」
サイモンは鎧の革紐を締め直し、アリーナは鉄の爪（削って刃は落としてある。）を左腕にはめた。
”準決勝。サイモン対アデル！”
二人は並ぶようにして。広い競技場に出ていった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
コロシアムは、観客の歓声で溢れていた。そのあまりの大きさに、アリーナはぼうっとなりそうになるのをこらえながら、サイモンの方を向いてブーツの先で黄色い砂を踏み付けて足場を確認した。サイモンは早くも剣を下段に構えている。
”始め！”
アリーナは先手必勝とばかりに、相手に向かって全速力でつっこんだ。ところがサイモンも同じように突っ込んできた。
二人のからだが交錯し、すれ違って反対側に離れた。サイモンは、鉄の爪の突きを、脇腹の鎧の継目辺りに感じ、アリーナは肩の辺りに剣の打撃による凄まじい痛みを感じた。ブライは思わずピクリと体を震わせ、クリフトは反射的に祈りの言葉を口に出した。
”早いし、重い剣だわ。”
アリーナはサイモンの力が思ったより強いと感じていた。まともに戦えば自分の負けだ。もしも自分があの剣を受ければ押し返すことなどできない。
”動きをよく見ること。そしてどこに隙があるのか調べること。・・・・そして一点に力を集中させた効果的な攻撃をする。・・・・さあ、サイモンの隙はどこ？”
アリーナは必死に、打ち込んでくるサイモンの攻撃を飛び回って避けた。そうするうちにアリーナは、サイモンのあるかないかの隙は、盾を構えたほうの側、左にあることを見付けた。もしも充分に自分が素早ければ、サイモンが盾を上に上げる前に、鉄の爪で頭を捕らえられるだろう。体を反転させ、アリーナはサイモンの盾を直視する向きに出た。
”この一撃が勝負！”
助走をつけて、盾の上側に飛び込む。サイモンはアリーナの意図に気付いたが、盾を上げるのは間に合わなかった。鉄の爪が押し上げるようにあたり、金属製の兜がカランと地面に転がった。
サイモンは慌てたように兜を拾い、かぶり直した。そのとき攻撃しようとさえすればできたのに、アリーナは動くことができなかった。
観客たちにはサイモンの顔が見えなかったに違いない。しかし、近い位置にいたアリーナには、はっきりわかったのだ。
涼しい目元。引き締まった口元。彫像のように美しい鼻から顎に掛けての線。
”リック王子！”
アリーナはサイモンの本当の名を思い出した。忘れようがない。リック王子はボンモール王国の第三皇太子。サントハイムにはボンモール王に連れられて一度来たことがある。他の貴族の少年に対してと同じく、アリーナは全く興味を示さなかった。だが、サントハイム城の片隅で、剣の練習をするリックをたまたま見かけ、その剣裁きの見事さに思わず見とれていた。リックはそんなアリーナを見付けて笑い掛けたのだ。
”アリーナ姫様。よろしかったらいらっしゃいませんか。父上たちの政治の話も、兄上達の気取った話もどうも退屈で退屈で。姫さまはサントハイムの城のことならばなんでもしっていらっしゃるとか？司教さまに教えていただきましたよ。”
傲り高ぶったところのない自然な話し方だった。
あのとき、しばらく話していて、リックは姫の髪のことを誉め、
”こんなに美しい髪は今までみたことがない。”
と感嘆した。そのときなぜだか急に息苦しく感じた。今まで髪を誉められたときには”そんなことないわ！”と口答えしたり、何も言わずにきびすを返したりした。アリーナはその時に”ありがとうございます。”と言いたかった。でも、口から言葉が出なかった。胸が痛くてどうしてこんなにどきどきするのかわからなかった。素直に感謝の言葉が言えない自分が悲しくて、アリーナはリックの前から逃げてしまった。気付いたら、自分の部屋に居て、見事な長い髪を裁ちばさみで目茶苦茶に切ってしまっていた。聖堂に泣きながら走っていって、司教やクリフトに訳を聞かれたけれど、答えることはできなかった。なにより、アリーナ自身、自分に何が起こったのかわからなかったのである。
「危ない！」
クリフトの金切り声が耳に入った。サイモン・・・いや、リックの剣が頭上に迫っている。アリーナは鉄の爪で受け止めた。受け止めて、その瞬間しまったと思った。自分はこのあとどう逃げようと言うのだろう。
「どうなされた！」
気の抜けたようなアリーナを気遣って、ブライが老人らしからぬ大声を張り上げた。
「勝負を捨てなさいましたか！世界一の武闘家になるという夢はどうしましたのじゃ！」
アリーナは我にかえった。 そうだ。私の夢は、世界一の武闘家・・・・・リック王子が相手とわかって、なぜ腑抜けたようになっていたの？リック王子自身と約束したじゃないの精一杯戦うって！実力を発揮しなければ、アリーナ、あなたは弱虫のお馬鹿さんよ！
アリーナは、急に力を抜いた。強い力で押していたリックの剣が泳いだ。その間に、姫は地面を転がって傍らに逃れた。観衆はもう大騒ぎだ。
”呼吸と、気合い。どちらかでも揃わなければ負け、両者が揃って勝てないことはない。・・・・あとはやるだけよ！”
急にアリーナの動きが良くなった。リックも打ち込んでくるが同じ回数だけアリーナも蹴や突きを入れている。それらは確実に人間のからだの壷を押さえていた。
”この人を倒せば、私はもっともっと強くなれる！”
アリーナはふっきれたように微笑んだ。そして、リックの真正面に立つと、高くジャンプし、剣をやり過ごすと気合いをこめて左手をリックの右胸に突き出した。リックはよろけ、膝をついた。十秒たって審判が”アデルの勝ち”を宣言しても、リックはしばらく動けないでいたが、小さなアリーナが手を貸すと、ゆっくり立ち上がった。観客は勝者に対する祝福と、敗者に対して良い試合を見せてくれたと感謝の拍手を送った。
アリーナはリックの手を支えながら、この人の正体は自分の胸の中にだけしまっておこうと決意していた。 試合の途中から立ちっぱなしになっていたクリフトはぐったりして椅子に倒れこんだ。
「ああ・・・・・よかった。・・・・・・・一時はどうなることかと・・・・・・」
だが、すぐに険しい顔で立ち上がった。
「姫さまの治療をして参ります。・・・・・次はデスピサロ・・・・爺さま、爺さまも行きましょう。」
ブライは頷いた。
控え室では、リックとアリーナが固い握手を再び交わしており、王子は決勝戦をずっと観客席で見ていようと、アリーナに約束をしていた。そばには王子の友人だろうか吟遊詩人らしき若者が、立っている。
クリフトは姫の腕をとって軽く左右にねじったが、アリーナはいててててと顔を歪めた。
「サイモンさん、相当あててくれましたね。」
クリフトがアリーナの痛みを止めると、リックは感心したようにクリフトを見た。
「神官殿ですか。あなたのような若さでそれだけの治癒呪文を身につけておられるとは・・・」
アリーナが嬉しそうに口を挟む。
「そうよ・・・じゃない。そうなんだ。とっても便利だよ。一緒に居ると。」
ブライが笑った。リックも兜の奥で笑い、片手を上げてその場を辞した。
リックが行ってしまうと、アリーナは急に静かになった。
「爺。・・・・・私、もしも勝てなかったらどうしよう。」
ブライとクリフトは、小さな椅子に座った。
「何を弱気なことを。姫様らしくもない。」
アリーナは、はみ出しかけた髪を帽子のなかに押し込んだ。
「・・・・さっき負けそうになって考えちゃったの。私、ここにくるまでは勝つことがあたりまえだと思っていた。単純で浅はかで、負けることなど考えていなかったわ。優勝するんだぞって思ってた。・・・・・・・ねえ、爺、もしも私が負けてしまったら、私は何のために家出をしたことになるのかしら。・・・・・・負けてしまったら、今までの旅が無駄になってしまうような気がして・・・・勝ち負けよりも、そのことのほうが今は心配になっているの。変ね。私。」
老人は杖でこつんと姫の額を叩いた。
「日々是鍛練。武術大会に限らず、魔物との戦いも姫さまにとっては修業ではなかったのですかな？ただ、栄光の座を追い求めることが真の武闘家のめざすものではないはず。しっかりなさいませ！」
「ええ。それに、私は姫さまにお供しましたこの旅が楽しかったです。無駄だなんておっしゃらないでくださいよ。クリフト、今回のことは一生忘れません。」
ブライが呆れたように言う。
「するとなにか？お前さん。また姫様が家出をなさるときはやはり一緒にいって魔物と戦うか？それが楽しいか？」
「爺さま！そういうことではないんです！私はただ・・・」
アリーナは笑顔を見せた。
「御免なさい。きっと私、やっぱりデスピサロのことが恐いのかもしれない。しっかりスタンドで見ていてね。怪我をしたらクリフト、お願いね。わたし、殺されはしないように頑張るから！」
”殺される”と聞いて、クリフトは顔を青くした。
「姫さま、駄目だと思ったら、倒れてしまってください。・・・・たとえ負けても。」
「ま、姫さまの性格上、それは無理じゃろうが。」
二人は立ち上がった。クリフトが神官衣の下に着た鎖帷子が、しゃらしゃらと小さな音をたてた。
「あら、戦う訳でもないのに鎖帷子を？」
クリフトはちょっと淋しそうな笑顔をアリーナに投げ掛けると武運を祈ってスタンドに上がっていった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
アリーナは、コロシアムへ続く出口に目をやって、じっと立っていた。もう、この控え室には自分とデスピサロの他には誰も居ないはずだ。何人もの人間を傷つけ殺した剣士。いったいどんな男だろう。試合の上のこととはいえ、神様は殺人を許して下さるのだろうか。・・・・普通の人間なら、きっと殺しをしたことで心が痛んでいることだろう。きっとそうだ。
アリーナはその場に両膝をついた。胸の前で、鉄の爪をつけた左手に右手を重ねた。
”神様。私をお守りください。また、デスピサロという人に、哀れみをおかけ下さい・・・・・”
目を開け、立ち上がると、すぐ横に長身の剣士が立っていた。肩までの銀の髪を金の髪飾りで押さえ、赤い瞳をした若者だ。その表情は、氷のように冷たく固く、全身から発せられる殺気と威圧感とあいまり人間でないような印象を与えた。アリーナは立ちすくんだ。
「おまえが私と戦う最後の相手なのか？」
アリーナは声が出せずに首を縦に振った。
デスピサロは呟くように言った。
「お前のような子供までが、戦うというのか。人間とは生れ乍らにして争いを好む生き物なのだな。」
彼はじっと姫を見つめた。
アリーナは、恐怖で胸がはりさけそうだった。しかし、自分を見つめるデスピサロの目は美しく澄んでおり、邪悪なものとは思われなかった。
アリーナは、勇気を出して口を開いた。
「私は争うことが好きなのではありません。」
デスピサロは、アリーナの声を聞いて、ピクリと眉を引きつらせた。
「お前は・・・・・・もしや女か？」
その瞬間、金色に光る羽を持った毛むくじゃらの小さなコウモリがデスピサロの頭の横辺りに出現し、何やら黄色い声で騒ぎたてた。
デスピサロは感情の動きを氷のように冷たい瞳のなかに顕に見せた。
そして、アリーナの目の前で、煙のように消えてしまった。
アリーナは呆然としていた。 何度呼んでもコロシアムに出てこない二人を捜しに兵士がやってくるまでは、何が起こったのか掴めなかったほどだ。兵士たちは控え室を調べ尽くし、デスピサロが居ないのを確かめると、王の元に報告しに走った。アリーナは、二人の兵士に付き添われて、コロシアムの真ん中まで出ていかされた。 観客は、不安げに周囲のものたちとざわめいている。アリーナが王座を見上げると、喜色を満面にたたえた王が立ち上がり両手を広げて観衆を静めていた。
「勝負は終わった。デスピサロは試合を放棄した。優勝者はそこにいる小さき者だ！」
モニカが長いドレスの裾を上品に持ち上げて、アリーナの所まで走り出た。観客はどよめいた。そうだ。あの少年が我々の王女さまと結婚する権利を獲得したのだ。モニカはそれを告げるために降りてきたのだろうか？
モニカはうっすらと目に涙を浮かべてアリーナに飛び付いてきた。アリーナは笑い、ピョンピョンとその場で一緒に飛び跳ねた。
「皆の者。優勝者を紹介しよう！」
モニカはアリーナに耳打ちし、これからやってほしいことを説明した。アリーナは了解して帽子に手を掛けた。
「・・・・・サントハイムの少年、アドルとは偽りの名。本大会の優勝者は、サントハイム王国の王女、アリーナ姫である！」
アリーナは帽子を取って放り投げた。赤い美しい髪が波打って肩へとこぼれ落ちた。観衆は一瞬息を飲み、続いて一斉に歓声を上げた。アリーナは両手を振って歓声に応え、モニカと手をつないで王さまに会釈した。誰もが幸せな気分に浸っていた。デスピサロのことが気に掛かるアリーナも、このときばかりはモニカとの約束を守れたことと、旅の目的の一応の達成の喜びに胸を一杯にしていた。
観客席の片隅では、リック王子があまりに意外なことの次第に面食らいながらも面白がっていた。
「私の剣の腕は、さらに磨きを掛けねばならないようだ。七歳も年下の可愛い姫君に破れるとは。」
隣に座った、長い髪の詩人がとんぼがえりをうって喜ぶアリーナの姿を観ながら王子に囁いた。
「私には、あのお姫さまはとてつもない大きな仕事をこれからなさるような気がします。王子さまの剣の腕が未熟なのではなく、あの姫さまの素養が人間離れしているのでしょう。」
「ロレンス。君の言うとおりかもしれない。・・・・・私は国に帰らねば。やらなければならぬことができてしまったからね。この平和な国を征服しようなどどいう父上をお諌めしなくては・・・・君にも力を貸してもらうよ。」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
観客への挨拶が終わったアリーナは、城の謁見の間に通された。既に王とモニカは椅子にかけており、ブライとクリフトがそばに控えている。
「サントハイムの元気な姫よ。よくやってくれた。おかげでわが娘モニカは意に沿わぬ結婚をせずに済むことになった。元はといえば私が口を滑らせたのが原因。深くお礼を申し上げますぞ。」
モニカが父王に続けて礼を述べた。
「アリーナ姫、本当にありがとう。おかげで、まだしばらくお父さまのそばで暮らすことができますわ。・・・・・でも、もしもあなたが男だったら・・・・・・・」
アリーナは不思議そうに首を傾げた。
「あら・・・・わたしったら何を考えているのかしら・・・・」
一人で赤くなっているモニカである。
王はアリーナに、椅子に掛けるよう勧めた。アリーナは有り難くその通りにした。三試合を戦って相当に疲れていたのだ。
「アリーナ姫。このまましばらく滞在していらっしゃるとよい。が、元気な姿をサントハイム王、そなたの父上に早く見せることも大事ですよ。父上はそなたを目のなかに入れても痛くないほど愛しているのだから。・・・・・大きな帆船を用意させよう。船の旅ならばサントハイムまでは一週間で足りる。」
アリーナは王の申し出を喜んだ。旅のこと、試合のこと、色々なことを父親に聞いてほしかった。そして、旅の先々で買った品を見てほしかった。そして、昔よくしてくれたように、そっと頬摺りしてほしかった。なつかしいサントハイム！帰ったならばきっと城の中のいろいろなことを新しい目で眺められるようになるだろう。自分はやはり、裁縫や手芸は大嫌いでグレタからは相変わらず逃げ回るだろうが、グレタにも旅の話を聞いて貰いたかった。
王の前を退いて、謁見の間の扉が閉まると、二人のお供は祝福の言葉を姫に浴びせた。アリーナはしたくてたまらなかったことを実行した。すなわち、ブライに飛び付いてゆったりした緑のローブに顔をこすり付けたのである。ブライは笑った。
「甘えん坊の姫様じゃ。ああ、爺もやっとはらはらしどおしの生活から開放されるのですな。本当にようごさいましたな。お城に帰りましたら少しは落ち着かれて女らしく・・・・」
アリーナは舌を出してブライから離れるとクリフトにピョコンとお辞儀し、何かを期待する眼差しを向けた。クリフトはやれやれといった・・・・しかし笑顔で腰を屈めると、アリーナの腰を抱いて自分の肩の上にふわっと腰掛けさせた。ブライも今日ばかりは怒らずに容認している。
「クリフトは、今度の旅、楽しかったって言ってくれたわね。」
神官帽を掴んで身を乗り出し、アリーナは顔を突き出した。
「ええ。爺さまと同じくハラハラしどおしでしたが。」
・・・ハラハラなどという生易しいものではなかったなあ。とにかく姫さまときたら危ないことばかりなさる。しっかり見守っていないと、小鳥のようにどこかに飛んでいってしまいそうだ。・・・
「またいつか一緒に旅をしましょう！魔物がでてきたら私が追い払うわ！」
クリフトは苦笑した。アリーナはまだまだ・・・・いつまで続くのだろう、とにかく今は子供だ。
そのあと、姫はデスピサロと言葉を交わしたことを告げた。そして、自分はもしも今日戦っていたら負けていただろう。こんどこそもっと修業していつの日に彼を倒すことができるようになりたいと語った。
姫の話にブライと神官は思いを巡らした。使い魔がやってきて姿を消したデスピサロ。・・・・魔導士なのか。それとも人間以外の種族の生まれなのか。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
十日ののち、自分たちに割り当てられた気持ちの良い部屋でブライとクリフトは城に持ちかえる大きな荷物を前にして最終点検をしていた。エンドール王からの贈り物も加わり、結構な量だ。
「爺さま。一応あるべきものはありますよ。荷造りもしっかりしています。今一度見なおして下さい。」
「・・・・お前さんが大丈夫というなら見直しの必要はなかろうが・・・姫様がご自分でお持ちになるという背負い袋の中身はどうじゃろう。」
「それは大丈夫です。」
クリフトはパンパンに膨れ上がった背負い袋を叩いた。
「昨日の夕方、姫さまと一緒に私が詰めましたから。・・・・ターブレ神父が作ったマーマレードだの、折畳みナイフだの、リアのブラシだの・・・・真っ先に陛下に見せたいものだけいれるんだとのことでしたが・・・・・珍妙なものが揃ってしまいましたよ。」
ブライは、エンドール王から贈られた、絹の反物が一杯につまったつづらに腰をかけて杖の宝玉に息を吹き掛けた。
「いかにも姫さまらしいわい。・・・・正直言って今回の旅はいろいろなことがありすぎた。また城で姫さまを追い回しながら世界のことをお教えできる生活ができるのが本当に嬉しいぞ。お前さんも神官の修業にはさしてつながらん旅でご苦労だったな。」
クリフトは懐から書物をとりだすしパラパラとページをめくった。
「・・・・普通の神官ならば唱えないような呪文を覚えられはしましたが、それは良かったのか悪かったのか。・・・・・・旅の間に変な祈りばかり続けてしていましたし。」
「何を祈ったのじゃ。」
「姫さまのおてんばがおさまりますようにと。途中から祈りの折りに数えておりましたが既に百回を越えております。」
「・・・・・お前さんが真面目なのか冗談好きなのかはっきりわからなくなってきたわい。」
もちろんクリフトは大真面目である。
アリーナが勢いよく入ってきた。
「おお、どこにいらっしゃいましたのじゃ？」
「モニカ姫が贈り物がしたいって、私に何着もドレスを着せてたのよ！悪いけれど、私はドレスが好きじゃないのって何度も説明したら、やっと納得してくれてこれをくれたわ。」
アリーナは紫色の宝石ををブライに差し出した。
「へえ。姫さまも宝石がお好きになられましたか。」
石がどんなものか知らないクリフトは尋ねたが、ブライは眉をそびやかしている。
「いいえ。クリフト、これは守り石。戦いの時に命を守ってくれるのですって！」
どうにも女らしくならないアリーナである。
「王さまが、あと一時で船を出しましょうと言ってくださったわ！ああ、私、早くお父さまに会いたいわ！会って、黙って出ていったことと、出ていく前にひどいことを言ったことを謝って・・・・」
そのとき、エンドール王自らがマントを翻して部屋に入ってきた。目には焦燥が浮かんでいる。そして右の手には息絶えた鷹が掴まれていた。この城に来たときに金のとまりぎにとまっていたあの大鷹である。たしか、姫がエンドールにやってきたことを知らせるため、武術大会が始まる前の日にサントハイムに向けて放されたはずだ。その鷹が血だらけになって目を閉じている。
王はアリーナに、鷹の足に結ばれていたとおぼしき小さな紙片を差し出した。紙には、乱れているが間違えようのない王の筆跡で”わが娘よ、希望を失うな”とだけ書かれていた。
「姫よ。何が起ったかはわからぬが、とにかくお国に今すぐ戻られよ。」
王は大きな白い羽を差し出した。
「我が国に伝わるキメラの翼じゃ。御老人は使い方を心得ておられるだろう。」
ブライは重々しく頷き、姫とクリフトに大切な荷物一つだけを背負うように指示した。エンドール王はアリーナを抱き締めた。
「もしもなにか助けが必要になった折りはわが王国にいらっしゃるように。精一杯のことをさせてもらいますぞ。」
王はアリーナをブライの前に立たせた。
ブライは杖をゆっくりと回し、自分達の周囲に円を描いた。そして呪文を唱えると勢い良くキメラの翼を放り投げた。
辺りが真っ白になり、体が浮くような妙な感覚を覚えた三人は、次の瞬間、懐かしいサントハイム城を目の前にして立っていた。
城は三人が旅立った時と同じように堂々と聳え立っている。二本の尖塔、ステンドグラスのはまった窓、そして、家出するときにアリーナが開けた壁の大穴・・・・
不安が心を押さえつけていたが、三人は歩き出した。
”もしかしたら何事も起きていないのかもしれない”と一縷の希望を抱いて。
いつも通り、草花が風に揺れていた。
いつも通り、堀には跳ね橋が下ろされていた。
しかし、城門の両側に控えているはずの兵士の姿はどこにも見当たらなかった。そして、城の中から聞こえるはずの賑わいも全く聞こえなかった。
ブライは閂のかかっていない城門をギイ、と開いた。
ホールには誰も居ない。
衛兵も、侍女も、下働きの者も・・・・
黒い冷たい霧のようなものが辺りにたちこめていた。三人は息苦しさを感じたが、耐えて奥へと進んだ。
「誰か！誰かおらんのか！陛下！どこにおられますか！」
「司教様！返事をして下さい。」
答えはなく、城の天井に自分達の声が空しく反響するだけ・・・・
二階に通じる大階段を駆け上り、謁見の間についたが、王の姿はなかった。執務室にも寝室にも。
アリーナが・・・・人に涙を見せることが大嫌いなアリーナがわっと泣き出した。
「お父様！お父様、どこにいってしまわれたの？一体どこに！」
霧が濃くなり、城内にいることが困難になってきた。
ブライは姫の体を抱きしめ、城の裏手に抜ける階段を降りた。そこはクリフトとディルトの住居があったところだ。黒い霧はここにも進入している。と、少し離れた聖堂から幽かな光が漏れていることにクリフトは気づいた。彼は可能な限り速く走り、聖堂に飛び込んだ。
そこには祭壇に縋る様にして祈っているディルト司教の姿があった。祭壇の周りにだけは霧がなく清浄な空気に満ちている。
「司教様！しっかりして下さい！」
若い神官は気を失いかけている老司教を背に負い、聖堂を出た。二人が去ると、黒い霧はすぐに祭壇をも覆い尽くした。
城から少し離れた草原に座り、三人は司教の話しを聞いていた。
「それは、私が聖堂で昼の祈りをしているときに突然おこったのです。昼だというのに外からの日の光が失せ、冷たい暗黒が城に侵入してきました。それは、聖堂の中にさえじわじわとやってきたのです。そして、私の心と体をどこか遠い暗黒の穴の中に連れ去ろうとしているのを感じました。私はひたすら祈りました。すると、私を連れ去ろうとしていたもの力が弱まったのです。私は祈りつづけました。少しでも神に対する信仰が揺らぎ、疑いが頭をもたげようとする度に霧は私に迫ってきました。もう駄目だ思ったときに、クリフト、お前が助けに来てくれたのだよ。」
アリーナがしゃくりあげた。
「では、お父様は、その霧に連れ去られて？」
司教は、アリーナを膝の上に抱え、髪をなでながら、神が正しき者を守ってくださると、自分に言い聞かせるように何遍も何遍も繰り返した。
ブライは眉根に皺をよせ、城を襲った悲劇を静かに受けとめていたが、何事かを思い出し、クリフトを従えると再び城に入っていった。
「祈ってくれ。お前さんの祈りならば、この霧に負けぬはずじゃ。」
二人の周りには薄い光の膜ができ、体が凍るような恐怖に襲われながらも城の中を進むことができた。ブライは自分の自分の居室に直行すると、大きな風景画を壁から外して呪文を唱えた。壁に書くし扉が現れ、ブライはその中から小さな箱を掴んだ。
「これでいい。さあ、行くぞ。」
二人が戻ったときに、アリーナはまだ司教の膝に泣き伏していた。ブライが優しく姫の頭を起こす。
「姫様、お聞き下さい。・・・・爺がまだ若く、陛下が少年だったおりのことです。陛下は夢をご覧になりました。サントハイム王家の血筋には、予知夢を見る力がございます。陛下は夜中に爺を起こされ、ご自分で書かれた手紙を託されたのです。
”将来、僕には娘ができるだろう。その子が悲しみに打ちひしがれた時この手紙を見せて欲しい。時がくるまではお前も見てはいけないよ”と。今からお読みいたします。
アリーナは立ち上がり、よろけた。
若い神官は自分の胸に姫の頭をしっかりと抱き寄せた。
「”まだ生まれていない僕の娘へ。僕はまだ、結婚もしていない少年ですが、あなたが生まれることを知っています。あなたは元気で可愛らしく育っていることと思います。僕は何か大きな運命が僕を襲うことを知っています。邪悪で強大な何かが、この国、いや、世界中を恐怖に陥れるでしょう。この夢が間違いであってくれれば、そして、ブライがあなたにこの手紙を見せずに済めばどんなに良いかと僕は思います。
僕の愛するまだ見ぬ娘、あなたが戦いの中にいるのを私は見ました。命をかけた戦いのようでした。・・・・僕はあなたを戦わせたくありません。大人になった僕はきっとあなたを城の外に出そうとはしないでしょう。あなたを失いたくないからです。僕が、そしてこの国がどんな窮地に陥ろうとも、あなたにだけは生き延びて欲しい。
ブライがこれを読むときに、僕は生死すらわからないのでしょう。
僕の娘、この大地を愛し、そして、いつの日にか、王国を継いで下さい。
神を信じ、希望を捨てることのないように。”」
王がなぜ、アリーナを外に出そうとせず、武術の練習をさせようとしなかったか、それはすべて彼女のことを思ってのことだったのだ。
アリーナはしっかりと自分の足で立った。もう彼女は泣いてはいなかった。唇を噛み締め遠くの空を見つめるハシバミ色の瞳は確固とした決意に満ちている。
「私、お父様を捜して旅に出るわ。」
司教が”いけない”というように首を振る。
「お父様の見た夢が本当ならば、私は戦わなくてはならなくなるわ。でも、いいの。それが運命ならば戦う。戦ってお父様を助けたい。そして、この世界が恐怖に飲み込まれそうになるならば、それを止めてみせる。」
ブライはくるりと杖をまわした。
「姫様、ならば、爺もお供いたしますぞ。」
クリフトも優しく言う。
「私も一緒に参ります。」
アリーナは俯いた。
「駄目。爺はもう年だし、クリフトは、戦いをする人じゃない。私、誰も巻き込みたくない。」
ブライがくるくるまわしていた杖でこつんとアリーナの額を叩いた。
「こりゃ！爺はまだ、足腰立たぬ訳ではありませんぞ。第一、姫様のお供をせなんだら、爺に仕事はありません。なにしろ、城のものが誰一人おらぬのですからな。それに、姫様一人では行く先々でサントハイム王国の名を辱めるようなことをなさらないかと限りなく心配ですわい。この教育係に毎日悩みながら暮らせとおっしゃるか？」
「私とて同じことです。それに、姫さまはおっしゃったではありませんか。また一緒に旅をしようと。それに・・・・」
クリフトは、腰を屈めて姫の目の位置に自分の頭をもってきて片目をつぶった。
「私が一緒にいると便利なんでございましょう？薬草も毒消しも買わずにすみますよ。」
姫はにっこり微笑んだ。
自分はこう言ってもらえることを期待していたのかもしれない。二人が居たからここまで来られた。二人がいるから自分は前に出て戦える。
ブライが姫の右肩に、クリフトが姫の左肩に手を置いた。ディルト司教は静かに祈った。
”神よ、願わくば三人の上に祝福を！”
おてんば姫の長い旅はまだ始まったばかりだ。
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