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早春の陽の光はやわらかにうす緑の若葉を照らし、小鳥らは楽しげに囀りながら木々の間を飛びまわる。
この世界で最大の大陸の西側を占める長い歴史をもった大国、サントハイムの午後は平和に過ぎていく。
城下町サランから望むサントハイム王宮は高い尖塔を二つもった壮麗な建物だ。その城を国民はたいそう自慢している。城を自慢できるということは、国が安定している証拠だ。世襲の王が長く続くと、政は乱れていくものだというが、サントハイムを治める王達は聖王と呼ばれた初代の王よりの善政を今も尚続けている。
春風の中に、一筋だけぞっとするほど冷たい空気がひそんでいても、今の彼らはそれに気づくことはなかった。いや、気づいても取り乱しはしなかっただろう。彼らには、敬愛する王がいる。そして、王城の左には強力な魔術師たちが研究に励む魔道の塔が、右には癒しの力を持つ神官達が修行する教会がある。この魔法王国を脅かすものなど何一つあるまいと信じきっていたのだ。
本当に平和な……平和な午後……
その平穏が、甲高い叫びによって壊された.。
「姫さまぁ、姫さま〜！」
女性のの悲鳴に似た声が城内に響き渡る。
「姫さまー！」
「姫さまー！どちらにおいでですかー」
声が何人ものものに増えた。ばたばた走りまわる足音に甲冑の鳴る音も混じっているところからして、兵士も駆り出されているらしい。
ほかの城ではともかくとして、ここ、サントハイム城では、日常茶飯事の出来事である。
「やれやれ……」
城内で聖典の整理をしていた司教のディルトは深い皺の刻まれた顔をほころばせ、ふうっと一つため息をついた。
「また姫さまが逃げ出しなされたようだ。本来なら、何をしているお時間だろうね。」
声をかけられた青年がにっこり笑った。ま新しい緑色の神官衣が長身で細身の姿によく似合っている。彼は、羊皮紙に書き写していた分厚い本から目を上げ、窓から外を見て太陽の位置を確認すると答えた。
「この時間ならば、裁縫のお時間です。あの声は刺繍教師のグレタさんのものに違いありませんし。」
司教はゆっくりと青年神官の前に歩いていって彼を見つめた。
「クリフト、この間姫様の居所を知っていたのに教えなかったでしょう？今日はグレタさんの味方をしてあげてはどうでしょうか。あの人も悪い人ではないのですし。」
「はい、あ、でも……」
司教は机に置かれた本を持ち上げて微笑んだ。
「ここはいいから、行って来なさい。今日の分はこれで十分。」
「はい！」
クリフトは立ちあがり、聖堂を通って三つの扉を通りぬけたところにある庭に出た。そこにはクリフト達城詰めの神官達の暮らす質素な宿舎があり、そこから柵を越えると、何頭かの鹿が放し飼いにされている広い堀に行き当たる。視線を上に向けると高い城壁が聳え、兵士が外敵の見張り……というよりは[姫様の逃亡]を防ぐ任務についている。
神官は庭の外れに立って口に手をあてると神官宿舎の横あたりに呼びかけた。
「アリーナ様！」
返事はなかった。クリフトはごほん、と大げさに咳払いしてみせる。
「姫さま。そこに隠れるのはお止めくださいと私は何度申し上げましたか？折角の長い綺麗な髪が台無しになりますよ。」
「綺麗な髪なんかしていないわ！」
薪の山の中から、金色がかった美しい赤毛の可愛らしい少女がひょっこり顔を出した。木屑が髪にひっかかり、薄い紅色のドレスはすでにあちこち汚れている。
クリフトはくすっと笑った。
「はは、ひっかかりましたね。姫さま！いいですか。いつもいつも勉強から逃げてばかりいてはいけませんよ。お部屋に戻って下さい。」
アリーナはえいっと薪の山から飛び出ると、可愛い口を尖らせた。
「嫌よ！刺繍なんかしたくない。あんなもの、女の子のすることだわ！」
神官は自分の胸の辺りまでしかない小さな姫の髪からそっと木屑をとってやってから、少
し厳しい声で言った.。
「姫さま、どうお考えになるかは別として、神様は姫さまを女の子としておつくりになったのですよ。それに刺繍というものは本当に古い時代からあるものなのです。古くから伝えられているものにはなにかしらの意味があるものです。第一、教えて下さるグレタさんに失礼ではありませんか？加えてグレタさんは姫さまを逃がしたということで、陛下からお叱りを受けてしまうかもしれませんよ……」
アリーナが少し下を向いた。
「グレタがお父様に叱られるの？」
「陛下は滅多なことでお怒りになる方ではありませんが、姫さまは先週も、その前も逃げましたよね？」
「………」
アリーナはしおらしく黙ったが、クリフトの新しい神官衣に気づくとぱあっと顔を輝かせた。
「まあ、新しい服ね……ってことは、また階位が上がったんだ！凄いね、クリフト！」
「姫さま！話を逸らさないで下さい！」
だけれど、神官は少しだけ誇らしかった。正確には階位は上がっていない。この分厚い緑の神官衣は神官戦士としての証。僧兵としての訓練を積んだ印であった。
「ん、もう、水臭いじゃない。言ってくれりゃあドーンとお祝いしたのに。」
アリーナのハシバミ色の瞳が悪戯っぽく輝いた。
「おめでとう！神様もきっと祝福していらっしゃるわ。」
そういって、アリーナはクリフトに飛びついて頬にキスした。神官は面食らって棒立ちになる。随分年下の十四才とはいえ、まぎれもなくこの国のたった一人の王女である。
その隙に、アリーナは小さな舌を覗かせて神官から逃げていってしまった。
「姫さま！おてんばもほどほどになさいませんと、このクリフト、あ、いや、陛下がご心配・・・…に…」
風一陣。
アリーナはあっという間に見えなくなっていた。
クリフトは赤らんだ頬を押さえ、ぶるぶると首を振って十字を切ると、神に“姫さまが淑やかになりますように”とおそらく容易には叶えられぬだろう祈りをささげた。
“しかし……全くしかたのない姫さまだ。何を考えていらっしゃるやら。”
十年以上そば仕えの任についている彼だが、姫にはいつもいつもはらはらさせられる。
お后に先立たれた王は一人娘のアリーナを立派な貴婦人に育てようと懸命だったが、姫は、そこからいかに逃げるかに闘志を燃やしている。国一番の仕立屋に作らせたレースの
ドレスは着たまま,茨の茂みを突っ切って破ってしまうし、外交使節の前で高い木から飛び降りてみせたりもした。友達に、と連れてこられた貴族の令嬢や令息とは決して遊ばず、城の下働きのものたちと仲がよい。
だいたい、見かけはあんなに華奢で可憐でも、素手では城の兵士の誰より強い。門番を気絶させ、兵士長を泣かせ…・・夢は世界一強くなること。クリフトの後見人であり姫の教育係である宮廷魔術師のブライ老だけは姫も苦手なようだが、そのブライも出し抜かれることは少なくない。父王から自室で謹慎を命じられれば、部屋の強固な石壁までも武闘の稽古の勢いあまって蹴破る始末。何かと引きずりまわされ、日夜姫の怪我の手当てをし、時には新しい武闘の技の練習台もさせられてきたクリフトも同僚の神官達に何度なぐさめられたことか。
いくら子供の頃からの付き合いとはいえ、平民の出で、成人年齢の十八を超えた青年が王女のそば仕えなど勤め続けるのは極めて異例のことだが、ほかに諌め役が見つからないのだろう。ずるずるずると今に到る。
“ああ……姫さまがご結婚されない限り、お亡くなりになった王妃さまもあの世ではらはらなさることだろうな。”
クリフトは大きくため息をついた。
しかし、クリフトは姫がおてんばなだけはないこともよく承知している。
クリフトが宿舎の前庭に腰を下ろし,一人で本を読んでいるとき、そっとアリーナがそばに
やってくることがある。そんなとき、クリフトは本を傍らに置き、自分が生まれ育った村のこと
や、大火事で死んでしまった自分の両親が教えてくれた物語を独り言のように話すのだ。
アリーナはそれを黙って聞いている。そして、気持ちが収まると去っていく。
おてんばで、本当は寂しがり屋の、危なっかしいお姫様。
“王妃様。力不足ではありますが、陛下が私の任を解かれるまでは、このクリフト、お約束通り、姫さまをお守り致します。”
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「アリーナ！」
アリーナは玉座の前で肩をすくめた。サントハイム王は声を荒げて娘を叱責する。
「やっと戻ってきたと思えばまたそのような服を着て！一体お前はどういうつもりなのだ。」
毛足の長い深紅の絨毯の上で、黒いタイツに膝上丈の黄色いチュニック姿のアリーナは
父の顔を真っ向から睨み付けた。警護の兵士達は毎度のことながらのぴりぴりした空気から
逃げるように部屋の隅へと移動する。姫は父に負けない大声を張り上げた。
「この服のどこがいけないのッ！お父様の下さる服は破れやすくて裾が長くて動きにくいものばかり。あれじゃ跳んだり走ったりできないわ。」
「跳んだり走ったりしろと誰が言った！」
王の怒声でステンドグラスをあしらった大窓がびりびりと震えた。
王女はふてくされ、絨毯を靴のつま先で蹴飛ばす仕草をした。王は玉座の背にもたれかかった。
「ああ……お前の母上は、とても物静かで淑やかだったのに、お前と来たら。……よいかね。母上は十五のときにここに嫁いできたのだよ。お前ももうすぐ十五を迎えるではないか。
準備をするのには遅すぎるくらいだ。」
王は嘆息する。アリーナは毎日大暴れしているせいか、鍛え上げられてはいるが年の割には細くて小さい。長い髪さえ隠してしまえば、美しい少年だと偽っても違和感のない体型 だ。そんなアリーナに婿を迎える話などしている自分が妙におかしくも思えたが、為政者と して、娘に釘をさしておくことは可哀想だが必要なことなのだ。
「武闘など王女として相応しくない。」
「それっておかしいわ！」
アリーナの顔が真っ赤になり、声の調子が変わった。兵士がその剣幕に肩をすくめる。この間は親子喧嘩のはて、いらいらした姫に蹴られた柱が一本崩壊したっけ。
「書庫でかくれんぼしてたときに見つけた古い本で読んだわ。この国でも古い時代には王女も武術を習っていたって。武術は体と共に心も磨く。そして、サントハイムは魔法王国と
いえども、人の上に立つ王族は武術の技を極めて悪しき者を退けるために強くならねばな
らないって書いてあった。お父様だって武術の修行をしたんでしょう！どうして私が武術をやっちゃいけないの！私は魔力がないんだから。サントハイムの王女なのに、ブライみたいな攻撃魔法もクリフトみたいな回復魔法もぜんぜん駄目。だったら武術で強くならなくち
ゃ！お父様はいつもいっているじゃない！自分を磨けって！」
「武術の腕を磨けと言った覚えはないっ！古の時代と違い戦乱はなく、退けるべき悪しき者もいない！魔物が増えてきたといっても男達に任せておけばよい。お前は城の中でおと
なしくしておれば良いのだ！武術の鍛錬をこれ以上することは許さん。」
小さな姫は地団太を踏む。
「男の人達は武術の腕を鍛えて誉められるのにどうして私は叱られるのよ。私は誰より強
くなってみせるわ。世界一の武闘家になるわっ！お父様は私を城の外に出したがらないけれど……他の国のお祭りどころか、遠乗りにさえ連れていって下さらないけれど、私は自分の力で外の世界を見に行くわ。お父様の言いつけなんかぜえったいに守らない！結婚なんてしないッ！私がしたいのは冒険なの！」
王は天を仰いだ。天井画の天使達がくすくす笑って見下ろしている。
王の傍らに立っていた小柄な白髪の老人が、赤い宝玉のはまった杖で、こつんと軽くアリ ーナの頭を打った。
「姫様！陛下は姫様のためを思ってこそお説教なさっておられるのですぞ。ご自身の父君に楯突くとは、王妃様がご存命でいらしたら、どれほどお嘆きになることか！いや、陛下や王妃様が許されてもこのブライが絶対に許しませぬぞ。さあ、姫様、早く陛下に謝罪なさいませ。」
アリーナは口をへの字に曲げていた。なぜ謝らなくてはいけないのか、まったく納得がいかなかった。
「じいもお父様も大っ嫌い！」
姫はそれこそ飛ぶように走って自室へと消えた。
ブライは王を慰めるように、落ち着いた低い声で言った。
「気になさいますな。姫様は陛下のお気持ちが今一つおわかりにならないのです。それに、あんな態度をしていらしても、陛下のことを心から愛しておられます。」
そして、ぽんぽんと、肘掛に置かれた王の腕を手で叩いた。
「野の小鳥はかごに入れると自由に飛べないことを悲しんで死んでしまうこともあるようですからな。」
王は横目でブライの表情を窺った。
「ブライは、アリーナを止めることがもはや無理だというのか。」
姫の教育係はくるりと杖を回してみせた。
「今を去ること二十五年前、この国の皇太子が家出をし、時の王から護衛の使命をうけた彼
の教育係がそれはもう過酷な旅に付き合わされたことがございましたなぁ。あのとき、皇太子
は十五の誕生日を迎える少し前であったかと。」
王は剣呑な目でブライを見る。
「何が言いたい？」
老練な宮廷魔術師はのほほんとした表情のままもう一度杖を回した。
「いや、ただ、まぎれもなく親子ですな、と思いましただけですわい。……陛下、何をおそれていらっしゃるのです。不吉な夢でもみられたのですか。」
この王宮にあっては王の見る夢は重大な意味を持つ。というのも、王家の血筋をひくもの には未来の事象が夢に出てくる“夢見”の力があるからだ。
王は立ちあがって窓枠に手をかけ、彼の王国の風景を眺めた。
「いや、確かな夢は何も見ていない。……ブライよ。アリーナはきっと城を抜け出すだろう。
そして、今のあの子には世界を見てくることが、何よりの勉強になるともわかってはいるのだ。
しかし、私は素直に送り出してやることはできない。后の残してくれた、私の一番の宝を危険な目にあわせたくないのだ。」
ブライは深く頷いた。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
その夜。 どーん、がらがら、という音でクリフトは跳ね起きた。鎧戸を押し広げると、銀色の月明かり に照らされて、穴が開いた王宮の壁が見えた。かすかな風にゆうらりと揺れている白く長い物 はつなぎ合わせたシーツか。
「！」
そこが、姫の部屋であることを見て取って、彼は急いで身支度を整えた。深夜に壁を蹴破
ったことから考えて、いつもの小さな脱走とは違う。神官衣のボタンを片手で留めて自室の
ドアを開けると、廊下に封蝋の施された手紙がちょこんと置かれていた。
“クリフトへ
前から話していた武者修業の旅に行ってきます。いくらクリフトでも、これは絶対止められると思ったから手紙で知らせることにしました。今よりもっと強くなって帰ってくるね。面白いものがあったら、お土産にします。楽しみにして待っていて下さい。しばらく留守をしますが、必ず帰りますから安心してください。私がいない間も元気でね。じいとお父様にそれなりによろしく。 アリーナ”
「だああっ！安心できるわけがないじゃないですかっ！家出するときにはきちんと行き先を言ってくださらなくては」
……それでは家出にならない。
「まだ、遠くにはいっていないはず……」
今一度自室に駆け込むと旅装の黒手袋を身につけ、マフラーを巻く。小さなつばの付いた大きな神官帽をかぶり、薬草と携帯食料などを詰め込み、わずかばかりの蓄財を入れた皮袋を最後に押し込むと彼は廊下に飛び出したが、宿舎を出る手前で急停止した。そこにはディルト司教が立っていた。
「司教様！大変です。姫さまが壁を蹴破って家出なさいました。置手紙もあり
ます。今度ばかりはひょっとしてひょっとするかもしれません。私はこれから追いかけてみま
す。」
「ああ、そのことだが……」
ディルトの後ろから、緑色のローブを纏った小柄な老人が出てきた。
「ブライ様。」
ブライはちら、とクリフトに目をやり、ディルトに問うた。
「司教殿、姫の教育係として問うが、クリフトの腕はどの程度か。」
「ご老人もご存知のことですが、神官学校を最年少の十六、それも主席で卒業し、神学全般に広い知識を持っております。」
「呪文は？」
「回復呪文を一通り。防御呪文にも際立った才能があるかと。」
「剣術は？」
「護る剣に優れてはいても攻め込む剣はまだ身につけている途中です。」
「性格は？」
「そうですね。真面目すぎるところがあります。それから、他人のことを思うあまりに自分を蔑ろにする傾向も。それは長所でもありますが。」
ブライはぐるうりと青年神官の周囲を一回りした。
「ふむ。改めて見ると随分と背が伸びたもんじゃな。お前さんをここに連れてきたときには ほんのひよっこだったが……わしのところに来ておれば魔術師になっておったじゃろうに、 神の道など目指しおって。」
言葉はぶっきらぼうだが、その口調は優しい。
「あの、ブライ様、何のご用ですか。」
「そう堅くなるな。内々では“じいさま”でたくさんじゃ。わしも行くぞ。」
ブライはくるりと杖を回した。
「は？」
「姫様の今度の脱走、陛下も十分予測されていたことなのじゃ。陛下はおっしゃった。姫様に帰る気が少しでもあるなら連れ戻せ。もしもそうではないのなら、護って供に旅をせよ、 と。お前はどうやら護り手として陛下にも司教にも相当評価されとるようじゃのぉ。何をぼっとしておる。 わしとお前さんとで出撃じゃ！」
ディルトは古代語で書かれた神聖魔法の本と、銅の長剣をクリフトに差し出した。
「クリフト、のんびり行ってきなさい。姫様は生傷が絶えない方だから、あなたの呪文は良い助けになるでしょう。言うまでもないことですが、私達神官の振るう剣は相手を傷つけるためではなく身を護るための剣です。しかし、大切な者を護るためには躊躇なく敵に向かって切りつけなさい。城から離れるに従って,魔物の数も増えていくでしょう。神への祈りを欠かさ
ず、恐れずにいくのですよ。」
父とも思う司教としっかりと握手をし、彼は長剣を背に負い、きっちりとベルトに止めた。
「司教様、行って参ります。不在の間ご迷惑をお掛けしますが宜しくお願い致します。」
ブライは目を細め、ふぉっふぉっと笑う。
「それじゃあぼちぼち出立するかのぉ。」
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そのころ、アリーナは王城と城下町サランの中間ほどの場所にいた。まだ、夜風は冷たい季節だったけれど、この小さなおてんば姫の心はこれから始まる冒険への期待で熱く沸き立
っていた。どんなところがあるのだろう。どんなに強い人がいるのだろう。見上げた夜空に澄
んだ色の青い星が一つ光った。
「お母様……見ててね。」
そして、王城の方に振り向くと明るい声で言った。
「お父様ー、ブライー、クリフトー、お城のみんなーっ、行ってきまぁす！」
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