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トッパーの冒険物語は（５）までで完結しています。ですからこの６番目のお話はおまけのお話です。このお話がなくてもトッパーのお話に支障はありませんし、また、付け加わったからといって、今までの内容がひっくり返ってしまうということもありません。 ただ、本編をお読みになっていないと、どうしてこういうことになっているのかわからないと思います。 まだ、本編の最後まで読んでいらっしゃらない方は、ご面倒をお掛けしますが読み終えてからこちらにまたお越しください。 よろしくお願いいたします。 |
| ６番目の話し手 アレックス |
“クリームソーダの店”で町の子供たちとはしゃいでいたパットは踊り疲れて戻ってきました。 そこにはカイユンもジョーも・・・・ロマノフもソーンダイクもいなくなっていて、マリオとアレックスが二人でお酒を飲んでいました。 パトリックは不思議そうに二人を眺めます。マリオがこの人と仲がいいなんて、今まで知りませんでした。むしろ、仲がよくないと思っていたのです。 それにしても・・・・ パットはアレックスの横顔を見つめました。 この間、「ブラックドラゴン」の中で、パットはアレックスさんと出会いました。無駄のない動き。はきはきした言葉。きっとカイリ フォン リベダイクさんはこの人のような人なんだ！とあれからずっと思っていました。アレックスさんは、強くて、格好よくて・・・・・・カイユンもいっていた通り、素敵な人のはずです。 そんなことを考えていたらなんだか楽しい気持になってきました。パットは訊ねます。 「ねえ、アレックスさん、アレックスさんは悪い竜をやっつけた騎士のお話を知っている？」 そして、みんなの話してくれたお話をアレックスさんに説明しました。アレックスさんはときどき笑ったり頷いたりしながら静かに聞いていました。 「僕、トッパー達がこのあとどうしたのか知りたいんだけど・・・・・」 アレックスはカパカパとお酒を飲み続けているマリオをその場に残してパットを少しはなれたソファーの上に抱き上げて座らせました。 |
「さあ、行きましょう！」 海の方を向いていたフローレ王女は振り向きました。トッパーは、ああ、これで皆一緒にいっちゃうんだな、と思って少し寂しくなりました。王女様も、騎士も、国に帰ります。そして魔法使いさんも魔法使いさんがいた国に帰るのです。 ところが、騎士はその場に跪くと王女様に向かっていいました。 「フローレ様。私は魔法使い殿の国に共に行こうと思います。災いを呼ぶ不思議な石。それはこの石一つだけではないようです。人々を守るためには、すぐに行動を起こし、すべての石を封じなければなりません。姫さまをお送りできないこと、お許し下さい。」 トッパーはびっくりしました。なぜって騎士は王女様のお供をするものだと思っていたからです。 でも、お姫様はにっこり笑っています。 「カイリ。ご苦労です。私のことなら心配いりません。これはきっとあなたにしかできない仕事です。魔法使いさんと助け合ってどうか一刻も早く災いを呼ぶ石のことを解決して下さい。」 トッパーは首を振りました。 「カイリさん！お姫様一人じゃ大変です！慣れていなくちゃ船だって操れないし、ご飯にする魚だって捕まえられない。お姫さまには騎士がついていなくちゃ！」 お姫様はふわり、とトッパーの頭に手を置きました。 「大丈夫。私も少しだけですけれど、魔法が使えます。でも・・・・・そうね・・・・・・心配してくれるのならあなたとルイとシアとシャチが私の騎士になってくれればいいわ！」 トッパーは目を見開きました。 騎士に？そんなの駄目です。騎士は強くて、立派で・・・・・ 「お姫さま！僕は・・・・僕はまだ子供だし、弱いし、だから・・・・・！」 「・・・・・・騎士はね。初めから強かったわけではないのよ。これから強くなればいいの。ね、ルイ、シア、シャチ！私の国に帰る前に、たくさんの村や町に幸せを配っていく仕事、お手伝いしてくれますね？」 ３匹は騎士になるのが嬉しくて、得意になって海の上を跳ね回っています。 「カイリ！魔法使いさん！私、先に行きますね！」 海岸にあった白い小船にお姫様は乗りました。舳先に結んであるロープをシャチが器用に銜えて、船は動き出しました。トッパーも急いで海に入りルイの背びれに捕まります。 「いってきまーす！」 お姫様が島にいる二人に向かって大きく手を振りました。 みんなの冒険はまだまだ始まったばかりです。 |
| 「トッパー、騎士になったの？」 「まだ、騎士ではないようだね。もっともっと冒険して強くなったら、きっと素晴らしい騎士になるよ。」 「カイリ フォン リベダイクさんと同じくらい？」 「いや、きっともっと素晴らしい騎士に。」 パットはにっこりしました。トッパーがなれるのなら、自分にも可能性はありそうです。 「カイリさんは不思議な石の謎を解けたの？」 「・・・・・・それはまた別のお話。・・・・・・・・君がどうしても聞きたければ誰かが続きを話してくれるよ。でもね、自分で考えるのも素敵なことだよ。カイリがこのあとどうなったのか。トッパーがお姫様と一緒にどんな冒険をするのか。考えてご覧。そして素敵なお話になったら誰かに話してあげるんだよ。」 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 長い時間がたちました。 あれから何度か、パットはカイユンやロマノフやジョーにお話をしてもらいましたが、トッパーの冒険の続きのお話はしてもらいませんでした。一人一人が少しずつお話を作ったので、きっと続きが話しにくかったのでしょう。 そして、長い時間がたつうちに、パットはお話をしてもらう年齢ではなくなりました。 寝る前にお話をしてもらうことを恥ずかしく思うようになり、一人で読む本も、冒険のお話ではなく「駆動理論」や「ナビゲーション概論」といった本を読むようになりました。 それでも、昔にみんなからお話してもらったことははっきり覚えていたのです。 優しくて素敵な人たち。カイユン、ジョー、マリオ、ソーンダイク、ロマノフ 忘れる筈がないのです。 |
| ７番目の話し手 パトリック |
「そしてみんなは幸せに暮しました。」 パトリックはそういって言葉を切りました。お話を聞いていた小さな子はくるり、と大きな瞳を動かしました。 （皆幸せになったの？） 「そうだよ。みんな幸せになったんだよ。」 （トッパーも、お姫様も、魔法使いさんも、カイリさんもルイもシアもシャチも？） 「大丈夫。みんなみんな幸せになったんだよ。」 パットはみんなから聞いたお話に、自分で考えた続きを付け足して長い長いお話にしたのです。ベッドの中で聞いている子は、パットが付け足したところもとても面白がって聞いてくれました。 （トッパー、世界一の騎士になるために、また冒険に出たんでしょう。） 「もちろん！トッパーは冒険が大好きだからね。」 （続きをお話しして！） 「それはまた別のお話・・・・・・いつか、またね。今日はお休み。」 （う・・・・・はぁい、おやすみなさい！） パットは子供の額にキスをして、立ち上がると明かりを消しました。 「おやすみ。」 絶対零度の宇宙空間を疾走する宇宙船の中、そこだけはどんな場所よりも暖かなのでした。 おしまい。 |
・・・・ということでオマケでした。 最後の子供が誰なのかは適当に想像して下さい。管理人の設定はありますが、今は誰だと考えても支障ありませんので(^^) 予定より妙に長くなってしまったトッパー話。これで完全におしまいです。 長い間有難うございました。 |
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