ホーカ・シリーズ
「地球人のお荷物」
（Earthman'sBurden)
「くたばれ！スネイクス！」
(Joy in Mudville)
著者　ポール＝アンダースン＆ゴードン・Ｒ・ディクスン
　　　　（Paul Anderson&Gordon R.Dickson)
発表年　195１〜57年　アザーワールズ誌・ユニヴァース誌・Ｆ＆ＳＦ誌
　　　　　など
国内出版：地球人のお荷物（ハヤカワ文庫ＳＦ）
　　　　　　　くたばれ！スネイクス（ハヤカワ文庫ＳＦ）
分類：　異星人　異文化交流クマ　アレックス君、不幸！
　ＳＦ紹介を始めて３冊になるわけですが・・・・・
ま、真面目な本を２冊続けてしまったッ!?こ、これではＳＦの持つ楽しさやいい加減さ(?)が全く伝わらない！本棚を見渡せば、そこはスチャラカでおちゃらけなＳＦ群もずらぁりと並んでいるではないか！（…というか、多い…多すぎる）さあ、いざ紹介しようではないか！お気楽ご気楽ＳＦの数々を！

・・・・・ってなことで、３回に１回くらいはお笑い系、もといユーモア溢れたエンターテイメント系ＳＦを紹介させていただこうと思います。いや、笑いは必要ですよね、うんうん。

　そして、輝ける第一回目は「地球人のお荷物」。作品の形としては連作短編集ということになります。

　このＳＦは惑星トーカに居住する「ホーカ」という異星人と、トーカの全権大使に任命された地球人、アレックス＝ジョーンズの心温まる汗と涙の交流記録である。

・・・・・・・たぶん、間違いない、と思います。

　最後の「心温まる」という表現を除いては（笑）

アレックス（←あ、初出時は星間調差部隊所属の少尉さんです）は不時着した惑星トーカで確かにホーカと交流するのですが、心温まるというよりは心休まらないといった方が正しい。更に言えば心乱されっぱなし。まさに『アレックス君、不幸！』。ハンカチなくしては読めない作品なのです。

　異星人ホーカは身長約１メートルほど。外見は一言で言えば、巨大なテディベア。到って気のいい平和的種族で、知力も高く、ちょっと物事を教えたら文明は光の速さで発展繁栄。好奇心たっぷりというか異様に旺盛、真似っ子大好き。しかもなりきるとなったらとことんそれになり切らずにはいられない！

　（うちの「おと〜さん」を小型化して性格は仔ペンギン、喋れるようにしたら似ているかもしれません。）

　昔の西部劇のビデオを見せれば西部開拓時代の町を作り上げ、テンガロンハットに真っ赤なスカーフ、でっかい拍車のついたブーツに六連発のピストル挿して歩き回る。無能な保安官がおり、町を牛耳るやり手の賭博師がおり、牧場には“孤独な騎手”と呼ばれる格好いいカウボーイが・・・しかも皆が“孤独な騎手”をやりたがるもんだから、あっちにもこっちにも“孤独な騎手”だらけ。
　指輪物語を読めばつけひげをつけてギムリになったりガンダルフになったり・・・（しかも、嵌ったものがかわると自分の名前まで変えてしまう！）

　悪気はないが迷惑掛け捲りのこの愛すべき友人たちによってジョーンズは振り回され、ずたぼろになり、可愛い恋人のタニ（後に結婚）との仲が険悪になったり、やがて生まれた可愛い息子（アレックスＪｒ．）も巻き込まれ…
いい人なんですけどね・・・アレックス（涙）、真面目で一生懸命で、『ああ、またか、またあいつらがやってくれてる・・・どうして、どうして俺がこんな目に・・・』と思いながらも、しっかり頑張ってくれるんですよ・・・（涙）
ホーカの巻き起こす珍事件そのものも抱腹絶倒ものではありますが、読者はアレックスが不幸になればなるほど「ああ、またこんな不幸が！可哀想に」と笑いながらこの話に引き込まれていくのであります！

　欠点といえば、プロの作家さんが書いた書評にもありましたが、ホーカ族が嵌ったモノを知らないと面白みが半減することくらいでしょうか。

　たとえば、「ここにおわすお方をどなたと心得る！」「私に対する挑戦とみてよいのだな。」「ゲットだぜぇッ！」「おー、心の友よー！」「あっちょんぶりけ」「逃げちゃダメだ！」・・・なんていう言葉は、使われている場所を知っていてはじめて特別の感慨をもつわけで、知らなかったら単なる言葉（「あっちょんぶりけ」は言葉ではないか・・・）でしかないわけです。

　というわけで、予習(?)しておくと楽しさ百倍といったものを作品ごとに箇条書きにしてみます。『　』内がホーカ・シリーズの作品名です。

『ガルチ渓谷の対決』…カウボーイとインディアンが対決するパターンの西部劇。
『ドン・ジョーンズ』…モーツアルト作曲のオペラ「ドン・ファン」
『進め！宇宙パトロール』…能天気ＳＦ諸作品（笑）。
『バスカヴィル家の宇宙犬』…シャーロックホームズのバスカヴィル家の犬。
『ヨー・ホー・ホーカ！』…ネルソン提督時代の海賊退治モノ。
『諸君、突撃だ！』…アラビアのロレンス。
『くたばれ！ヤンキース』…アメリカ大リーグ
『スパイをつかまえろ！』…もちろんスパイ物です。
『ホーカミの群れ』…ジャングルブック。アニメでも実写でも、もちろん小説でも。
『ナポレオン事件』…これも題名でわかるようにナポレオン関係。


　しかし、予備知識がなくても「どんどん不幸になっていくアレックス」を見ているだけで大笑いできますので、もしも書店で見かけましたら、お手にとってみて下さい。

　そしてアレックスが少しずつ不幸になっていくのをにやつきながら読み進めてしまっていたならば、それは皆さんがこの話に嵌められた証拠ですｖ

作者のお二人は、ユーモア物ではないものも書いていらっしゃるのですが、そういった作品はまた機会があったら・・・ということで。
ホーカが出てくる同じ作家の本
 「がんばれ！チャーリー」（ハヤカワ文庫ＳＦ）…「不幸のカタマリ」たるわれらがアレックス君は出てきませんが、一応ホーカ物に分類されています。


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