ほむらとスイカ

とーとつであるが、星の台警察署、少年課所属の警察官、とは仮の姿、警視庁のスペースクリミナル対策チーム「スペースレンジャー」のリーダー、レンジャーレッドこと呉内　焔（くれない　ほむら）は、チームの同僚と共に海に来ていた。するとどんぶらこっこと沖合いからスイカが流れてきて、彼は考えるより先にだーっと走ってだーっと泳いで（←つまり、常日頃何も考えていない奴である）スイカを拾って戻ってきた。 　「やりぃ！儲けもの！なんだか冷えてるっぽいし、喰おうぜ！」 　レッドだけあって、バーミューダパンツも真っ赤である。と、横合いから青いパンツに実用的なパーカーを羽織ったレンジャーブルーこと蒼井が氷のような鋭い視線を向けた。 　「それが落し物でないという証拠はどこにある。そのスイカを落とした市民が泣いているかもしれんぞ。」 　ぐ、と詰まった焔を蒼井はちら、と見、極めてひそやかに微笑んだ。 　「…ひとまず今回だけは遺失物扱いしなくともよいようだ。管理人より連絡が来た。そのスイカは私たちへの贈り物だそうだ。」 　「な、なんで俺がリーダーなのに蒼井に連絡するんだよ！蒼井、知っているなら俺に教えてくれればよかったじゃん。」 　「・・・・貴様の警察官としての心構えを試したかっただけだ。」 　なんだ、こんにゃろう、私はこのやろう、ではない、と一触即発状態の二人の間に黄田（←もちろん黄色いパンツね）がその大柄な身体で割って入る。 　「蒼井さんも、先輩も喧嘩はやめて下さい。折角大きなスイカが手に入ったのですから、スイカ割りでもやりませんか。」 　「えー!?スイカ割りー？ガキじゃあるまいしさー」 　焔はぶーたれた声を出したが、指令補佐の白石さん（←無論、水着は白）が 　「そうですね。なんだか懐かしくていいですね。」 　と言った途端に 　「俺、スイカ割り大好きなんです！」 　と満面の笑顔になった。地域の子供会のボランティアリーダーもつとめる黄田は手馴れた様子でスイカを四つ折りにしたレジャーシートの上に置く。 　「準備完了です。」 　純香が黄田に微笑みかけると、世界柔道の覇者はそそくさとリヒトの背に隠れた。それを見、純香はゴメンナサイ、と小さく言って俯いた。 　「よーし、手頃な棒も拾えたしっと、で、誰が割るんだ♪」 　焔の言葉にリヒト（←パンツの色は緑ですだ）がバレンチノのサングラスをすっと押し上げ、涼しい翠の瞳を細めると焔を指差した。 　「俺？どーしてだよ。リヒトだっていいじゃん。」 　仲間達は顔を見合わせた。 　「だーって、」 　ピンクの水着を着た園子が言う。 　「私たち、超感覚（←何だ、ソレ）の訓練受けているからスイカの位置が目隠ししてもわかっちゃうじゃない？白石さんだけは訓練受けてないけど、可愛い白い水着のパレオにスイカのしみをつくっちゃ可哀想。」 　「・・・・・あのなあ、俺だって同じメニューで訓練受けてるんだぞ！超感覚くらいある。」 　蒼井は呆れたようにびしい、と焔を指差す。 　「・・・・・・・・・・貴様、加速をかけたダッシュモードに入ると超感覚が使えんようになるだろう。」 　「・・・・・うえッ！・・・・・・うわ、みんなにばれていたんだ？」 　うんうん、と頷く一同。 　「ゆえに、スイカ割りを楽しむためには、貴様が遠距離からダッシュし、一撃でスイカが割れるかどうかを試みるしかない。」 　「・・・・・・・はいはいはいはい・・・・やりゃあいいんでしょう。」 　「まー、私の蒼井様にむかってその投げやりな言葉遣い。いかにも童顔バカが吐きそうな台詞ですわねッ！」 　園子の肩にのっていたマゼンタが叫ぶ。と焔は『黙れ、ぬいぐるみッ！』と逆襲した。 　で、ぶつぶついいつつも、白石さんの笑顔に負けて焔はスイカから直線距離で100メートルほど離れた距離に遠ざかる。 　「園子、ところで、加速をかけたダッシュモードって、変身しないでも移行できるものですの？」 　「うーん。そういわれてみれば」 　固いことを言ってはいけない。ほーら、夏の太陽があんなに眩しいじゃないか。 　「おーい、じゃ、始めるぞー。」 　手にしたタオルで目隠しする。 　「おーう、頑張れーｖ一発で割れたらドンペリで乾杯してあげるよｖ」 　リヒトが無責任に明るい声で応援する。 　「トンブリで乾杯？俺、トンブリは飯の上に載せて醤油かけて食うのが好きだけど…」 　間違ってる間違ってる。 　「よーし、んじゃ、ぐるぐる回るか？」 　「どうでもいい。貴様の身体は三半規管も含めて無闇に丈夫だということは私も理解している。」 　「よーし、んじゃ、行くぞ！チェンジ！ダッシュモードオン！」 　疾風の如く焔は走り、手にした棒を振り下ろしたが、スイカからはたっぷり10メートルは離れたところの砂が飛んだ。そして100メートルオーバーランして止まった。 　「あっれーッ!?」 　目隠しを外した焔は頭を掻いた。 　「・・・・・・何を遊んでいる。」 　「クッ！今のはただのテストだ。一発で割っちゃったら楽しめないだろうッ！よーし、今度こそ！」 　また目隠しをし、大きく外れてオーバーラン。 　園子が隣の純香に囁く。 　「焔、小学校の頃からまっすぐに走るの苦手なのよねー。運動神経いいくせに、障害物競走の平均台からボロボロ落ちてたし、行進のときも曲がっちゃって、まっすぐ歩こうとしたら変に緊張したらしくて右足出す時に右手も出しちゃって、それが癖になったのか中学でも行進の時はソレやってたの。」 　「ま、まあ(^_^；)焔君もいろいろと苦労したのね。」 　見ているうちに焔は５回割りそこね、５回オーバーランした。リヒトは邪気なく微笑む。 　「焔〜！見ていてとっても面白いんだけど、テストはもういいから早く割っちゃいなｖ」 　（割れたら苦労しないよ(T_T)/） 　という焔の心の声はリヒトには届かない。 　「先輩！気合いです！頑張って下さい！」 　「・・・・・・・・・・・・・・いい加減に割れないと折角冷えていたスイカが生温くなるぞ。」 　「あなたはリーダーですのよッ！そんなことでどうしますのッ！」 　「焔、意地張らないで、もっと近くから走ったら？」 　遠くから浜辺の清掃員を装った灰谷警悟がその様子を見て微笑んだ。 　「青春しているねぇ・・・・・・・」 　さて、この光景を見ている者が実はもう一人存在した。そう、あのッ！ダーマ一族の要、人呼んでダーマ四天王の一人、情報収集をその役目とするカクーシ（←酷い名前だ）である。彼は焔の様子を薄笑いしながら見ていたが、すっと姿を消すと、悪の権化、アック・ダーマの元へと転移した。 　「ご機嫌うるわしゅう、閣下。今日は耳寄りな情報をお持ち致しました。」 　カクーシは焔とスイカの果てしなき戦いの様子を克明に語った。 　「これで、あのにっくきスペースＲのリーダー、レッドめにトドメをさせるかと。私に策がございます。」 アック・ダーマは話が終わるとその漆黒の兜の下から低い声を響かせた。 　「・・・・・・・許す。話してみよ。」 　「はッ！戦闘が始まったなら、あの“スイカ”という果実をバトルフィールドの中央に置くのですッ！レッドはあの果実を挟んでオーバーランを繰り返し、戦闘どころではなくなるはず。その隙に我らは奴を・・・」 　ふぅー、というため息ににた音が聞こえた。 　「閣下？閣下？どうなさったのですか。」 　アック・ダーマは疲れたように“行ってよし”と身振りで出口を示すだけであった。 　頑張れ、カクーシ。一族の汚点と、できそこないといわれ様とも、名前が情けないと笑われようと、いつかは君の出番が来る！ 　す、すくなくとも焔とだけは張り合えると思うよ？ 　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 　「おーい、焔〜、早く割ってくれよ〜！」 　「うるせー！ほっといてくれ！」 　「ああ、放っておけ、放っておけ。我々は向こうでバーベキューの準備をしているからな。スイカが割れたら持って来い。」 　「蒼井君、焔君をあのままにしておいていいのかしら？」 　「白石さん、いいんですよ。彼はあのくらいさせないと向上が望めぬ男ですから。」 　振り向きつつ去っていく白石の前をスタスタ歩く蒼井に向かって焔は叫んだ。 　「ちくしょー！蒼井の奴！末代まで呪ってやるー！」 　しかしながら、この蒼井の愛の鞭のお陰で、焔はダッシュモードでも超感覚が使えるようになったという。 めでたしめでたし。 　そして、レッドは今日も戦い続けるのであったッ！その活躍の陰に「スイカ」の存在があったことは・・・・誰も知らない。

途中まで書いてあまりの馬鹿さ加減に一度破棄したもの。呆れてやって下さい。 （でも、こういうのがお好きなかたがいらしたらまたなんか書きます）