「時代劇の決まり台詞を一発決めてみるのである！」 　資材部Aチームの面々の顔に安堵の色が浮かぶ。どうやら彼らにとっては優しいミッションらしい。彼らは最も年長の乗組員を中心にし、並んで立った。 　「助さん、格さん。もういいでしょう。」 　「ええい！皆の者、控えおろう！」 　「ここにおわすお方をどなたと心得る！畏れ多くも先の副将軍、水戸光圀候にあらせられるぞ！頭が高い！」 　はは〜！っとそこここから声が上がっているのは、参加している人員皆（つまりは乗組員全員）がノリノリ状態である証拠であろう。ジンベエも満足げに拍手をしてみせた。 　　正規ルートに戻ります 　「ワーグナーのアリアを一曲歌ってみるのである！」 　資材部Aチームの面々は顔色を悪くした。どうもこのお題は彼らにとっては在り難くない者だったらしい。顔を見合わせ、額をつき合わせて相談した結果、 　「ジン様、パスさせていただきます！」 　と悲痛な声で言った。ブルーはフィリアに囁く。 　「自分達に荷が勝ちすぎていると思ったら、パスすることができるのです。しかし、次の順番でダイスを振ることができません。いわゆる『一回休み』状態です」 　ジンベエは 　「よい、気にするな。撤退する勇気も時には必要であるのだｖ」 　と笑顔で答え、次の瞬間、どこからやってきたか、わらわらと現れた生オーケストラをバックに背負って「夕星の歌」を歌い始める。なかなかどうして堂にいったものである。ちょいとばかり声域に無理があるようだが。 ・・・・・もしやあんた、パスするチームが多いことを見越した上でこのカードをつくったのでは・・・？ 　さて、本筋に戻ろう 　「おお！ラッキーカードであるのだ！今少し待て、すぐにその場に届ける。」 　ジンベエはツリーから林檎飴とあんぽ柿を人数分外すと、風呂敷に包んで資材部Aチームのコマに向かって投げた。」 　「受け取れッ！元気の素だッ！」 　……某アニメーションのDVDを見ているのかどうか定かではないが、紫色の正絹風呂敷は美しい放物線を描いて資材部Aチームのもとに正確に飛んで行った。Aチームから歓声があがる。 　ブルーが説明する。 　「何せ長丁場ですからあのような食糧供給手段もあるのです。…何の食料も引き当てられなかったチームが出ることを考え、お握り弁当が用意されているようではありますが・・・・・ツリーに下げられているものは各地から集められた厳選物件。・・・乗員一同、あの菓子を食べられることを楽しみにしているのです。あ、茶は各自水筒を下げておりますのでご心配なく。」 　Ａチームは満足そうに舌鼓を打っている。 　さて、そろそろ本筋に戻ろう。