「さあ、人助けミッションは見事に終了しましたわッ！次は何ですの!?」 　丁度サイコロを振る順番が来ており、シーマは華麗なフォームでダイスを転がした。 　「１」 　「ま・・・このダイスは不良品ではなくってッ!?」 　姐さん、怒らないで下さい、そうです。たかだか20分の１の確率です。ほらほら、美しいお顔が台無しに・・・と取り成され、次のコマへと向かう。・・・・・・・そしてそこにはまたしてもミッションカードが待っていた。 　「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 　市販の双六では同じ指示のマスが続くことはあまりないですけどねー。ま、めくって下さい。シーマが真ん中のカードを引くとめくったカードには 　何か美味しい菓子をゲットしてくること 　と書かれていた。そしてまた不思議な空気の塊が…しかし今度は固まりは1つだ。 　「・・・今回は1つですのね？」 　「あ、これは…おそらく『欲しいものを思い浮かべて入るとそれが手にいれられるところに出る』パターンだと思います。」 　いろいろ考えるね、ジンベエ。 　「ふうん。そうですの。どういったものがいいかしらね。」 　シーマは歩を進める。さて、どんなものをゲットしよう。 手作りのお菓子　　　未知の可能性に賭ける！

「やはり美味しいものといったら手作りですわッ！愛が篭ってこそ舌も蕩け、心も蕩けて………きゃッｖ何を言わせるんですの！」 　だから言わせてないってば。 　ひとまず念じながら空気の塊に入っていくと・・・・ここは台所だろうか。きちんと整頓されており、甘い匂いがしている。そして、小さな金髪の男の子がぽかん、とシーマを見上げていた。その子を見るなりシーマは可愛いｖと思った。 　（ああ、もしも願いが叶った時、四季の花々と強固な魔方陣（←何か違わないか）に囲まれた庭に、こんな可愛い子が居て、「お母様ｖ」なんて言ってぎゅー、なんて抱きついてきたらｖｖｖｖｖｖ） 　・・・・無理だ。パトリックは総帥にも『あの方』にもぜんっぜん似ておらんぞ。 　「お姉さんはどなたですか。」 　来訪者に対しては警戒すると同時に礼儀正しく振舞うことを教育されてきたパトリックは、攻撃されたらどう反撃しようかといういささか物騒なことを考えつつもそう訊いた。 　「坊や、あのね、ここにはとても美味しい手作りのお菓子があるはずですわッ！それを戴きたいと思って…。」 　すると、物音を聞きつけたか、男が一人入ってきた。黒い髪に黒い瞳、デニム地のエプロンをつけた、いわずと知れた家事担当である。 　「パット・・・・・あ、お客様でしたか。」 　ぺこり、とお辞儀されて４人も反射的にお辞儀を返した。シーマがお辞儀することなど非常に珍しい事であったが・・・ちゅうか、カイユン、もっと警戒しようね。 　「・・・でも、この状況だと警戒のしようがないと思うんですけど。アケルナルはセキュリティシステム完備ですから、誰かが平然と中にいたらお客様だと思うのが普通で…えっと…まさかお客様ではない、とか？」 　シーマは嫣然と微笑んだ。 　「いいえ、私はお客様、よｖ」 　…断言したな。どうでもいいが、初めに入ってきたのがカイユンでよかったよ。 　カイユンは『誰のお客さんなんだろう。後ろの３人の人だったらロマノフさんかキャプテンのお客さんだと思えるけど、この女の人は…まさか、マリオさんが・・・！こ、この人にいけないことをしたのでなけりゃいいんだけど・・・』などと考えている。…ソーンダイクのお客だという選択肢はひとまずないらしい。 　「あまりゆっくりはできませんのよッ。ここにはお菓子があるはず。それを譲ってくださらなくって。」 　「・・・・・・？普通のお菓子でいいんですか？」 　「特別ならばそれに越したことはないわ。でも普通でも結構よ。」 　だったら・・・とカイユンは大型のオーブンから焼きあがって冷ましていたらしいクッキーをカゴに盛ってテーブルに置いた。 　シーマは眉をしかめた。・・・ごく普通のクッキーに見える。・・・いや、形はごく普通のクッキーよりいびつだったりする。 　パットが1つとってシーマに『はい、どうぞ。』と差し出した。期待せずに一口齧り、シーマは目を見張った。 　「こ、これはッ！なんて美味しいんですの!?」 　オペレーター３人組もパットに渡されて齧り、幸せそうな顔つきになる。 　「・・・喜んで貰えて嬉しいんですけど…うーん。美味しいのかな。パット。これいつもと同じだよね。」 　ねー、と言い合う二人の背後から、先ほどのシーマの叫びを聞きつけたほかの面子が走りこんできた。あー、ロマノフさんもジョーも、やっぱり銃構えてますよね。普通はそうですよね。マリオも催涙弾所持。ソーンダイクは…手ぶらかい。 　「あッ！キャプテン。この人、僕のお菓子が美味しいって言って下さったんですよ。」 　・・・・カイユンのニコニコ顔で、あとから来た４人はこの不可思議な人々がカイユンの客だと誤解したらしい。ひとまず武器をしまう。マリオは『すげえな。いったいどこで拾ってきた？押し倒しがいが無闇にありそうな女・・・』と呟き、ジョーに肘鉄を食らわされ、ロマノフに後頭部を殴られた。 　「反則ですわ！こんなに美味しいなんて！まるで魔法がかかっているようではありませんこと？」 　どうやらこの菓子の美味しさの秘密を次回の己の菓子作りに応用したいと考えているらしいシーマである。 事細かに材料を聞く　　　　作る上で一番大切なことを聞く　　いや！今ここで指導してもらうわッ！ 　「材料は何ですの!?」 　「え？えーと、ただのバタークッキーですよ。無塩バターと、お砂糖と、小麦粉と、卵と・・・・」 　「特別な厳選素材ですのねッｖ」 　「・・・この前寄ったステーションでバーゲンセールやってたとき、まとめて買い込んだ奴なんですけど…」 　「その“すてーしょん”の場所はどこですのッ！私もそこで材料を購入しますわ！」 　「えーと、フラハーン星系の203ステーションだったかな…あ、あの・・・材料はたくさんありますから良かったらお譲りします。」 　シーマの目はきらきらと輝いた。 　「まーッ！素晴らしいですわッ！あなたも恋する乙女のピュアな気持ちに協力して下さいますのねｖ。」 　「は？濃い？？」 　そのままギューッとシーマに抱きつかれ、カイユンは大混乱である。…ほら、マリオ、『うらやましい』なんて言ってる暇あったら引き剥がしてやれ。そうそう。 　カイユンに材料を揃えて貰い、オペレーター達に持たせると、シーマは焼きあがっていたバタークッキーの籠を小脇に抱えた。 　「有難う。私、忘れませんことよ。そして、そこの黒い髪のあなた、あなたこそは私の『恋の究極のお呪い』を施した御菓子の製造に寄与したものとして永遠に私の世界で名前が刻まれていくのですわ！名誉なことですけれど、私に礼等言わなくてもよろしくってよｖそれでは！」 　シーマの後ろでオペレーターたちもにこやかに手を振っている。 　出てきたときと同じようにシーマたちはさっと消えていった。 　そのとき、カイユンは急に泣きそうな顔になった。 　「どうしたの？」 　「・・・・クッキーを入れた籠まで持って行かれちゃいました！あの籠気に入っていたのに・・・」 　シーマオーカー、罪作りな女である。 　総帥のカリスマに＋５して下さい。 　さ、次に行きましょう 　「大切なこと・・・って言われても・・・」 　戸惑うカイユンに、パトリックが 　「カイユン、カイユンはお料理するときには、食べる人の顔を思い浮かべながら一生懸命つくるのが大事だって言ってたよね？」 　カイユンはにっこり笑った。 　「ああ、そうだね。そうかもしれないです。僕がいつも気をつけてることってそれくらいしかないですから。」 　シーマの目がキラーンと輝いた。 　「基本はやはり愛ですのね！」 　「はあ・・・そう言ってもいいのかなぁ。」 　シーマはつかつかつかとジョーの所に言ってにこにこと微笑みかけた。 　「幸せ一杯ってことですわねｖうふふふふ。なんかあなたとですとバランスが取れない感じがしないでもないのですけれど愛の力の前には全てはひれ伏さざるを得ませんものねッ!!」」 　「は？」 　ジョーはシーマの意味するところに気づくとくすっと笑った。 　「あー、ご免なさい。そうじゃなくって・・・・」 　シーマはカイユンの方に振り向いた。 　「あなた、あなたはこの女の方を好きではありませんの？」 　「え？キャプテンのことはとっても大好きですけど…」 　ジョーがくすくす笑いつつパットを指差す。 　「パトリックのことも大好きだし・・・」 　ジョーがロマノフを指差す 　「ロマノフさんのこともソーンダイクさんのことも大好きだし、マリオさんのことだって概ね好きだし。」 　…微妙にマリオのことだけ表現が違う気がするのは気のせいか？ 　一方シーマは真っ赤になっていた。 　「あ、あ、あ、そういうことでしたの？い、いいんですのよ!?恋の数も形も幾千幾万あっても宜しいですものね、ほ、ほ、おほほほほ。」 　・・・・だから・・・・・・すべてを恋愛に結び付けて考えるその悪い癖、早く直そうね、シーマ。 　「でも・・・いくら相手のことを思っても、こんなに美味しいクッキーが焼けるなんて・・・」 　また一口齧ったシーマはため息混じりに言った。 　すると爆破屋が 　「考えてもわからんことなんてたくさんある。…結局のところ、カイユンがカイユンだからってことになるんだろうな。」 　　ソーンダイクが何故か誇らしげにカイユンの肩に後ろから両手を置いた。 　「つまり・・・あなたの存在そのものが『鍵』だという・・・!?・・・・ならば一緒に来てくださいませんことッｖ!?」 　・・・・・・強引過ぎだってば。 　その瞬間、シーマはあたりの空間がかなり危ない空気にはりつめられたことを察知した。殺される。強引にこのの青年を拉致すれば殺される。・・・・この青年の周りだけほのぼのオーラで中和されているが・・・ 　「ほ、ほほほ！冗談ですわ！・・・・・・・私、今思い付きました。作る側だけでなく、食べる側の状況もこのクッキーの美味しさには関係あるのではないかと・・・・」 　シーマ、ちょいと学んだようである。 　「それでは皆さんごきげんよう！」 　シーマはカイユンにクッキーを入れて貰い、その場を後にした。 　総帥のカリスマに＋２してください 次に進みます 　「そうですわッ！丁度ここはキッチンではありませんこと！ここで指導していただこうではありませんか！なんて好都合。」 　カイユンは仲間達を見た。マリオは勝手にやれといった風情。ロマノフとジョーはじっと見守っている。ソーンダイクは胸ポケットからハンカチを出して左右に振っている。何のつもりだろうか・・・ともかく下を向いたらパットがやる気満々そうだったので、クッキー作りが開始された。 　「混ざりましたわ！次は小麦粉ですわね！さあ、篩ってここに持って来て下さいなッ！何をぐずぐずしていらっしゃいますのッ」 　・・・・・オペレーター三人組、下働き（でも楽しそう）・・・ 　そして彼らはクッキーをオーブンに入れている間、アケルナルの機器の調整をやってくれていた。つくづくマメな連中である。むろんすべての要は副官だが、ソフト面では彼らこそがギャラクティックジョーズを今日も安全に運行させているといっても過言ではないのだ。 　クッキーが焼きあがる頃にカイユンは紅茶をいれ、皆でティータイムとあいなった。シーマは紅茶の美味しさに感動し、こんなに美味しいお茶を毎日飲めるなんてあなた方は幸福者ですわ！と熱弁をふるった。クッキーの出来そのものはシーマの満足がいかないものであったようだが、カイユンが一緒に焼いたパウンドケーキをオマケにつけてやったので、シーマはほくほく顔であった。 　「・・・作っている最中に、何かこう、掴めそうな気がしましたわ！次に来る時には完全に秘密を盗んで見せますわよｖそれではッ！」 　来るのか・・・また・・・・・迷惑だと思うぞ。 　４人は来たときと同じく瞬時に消えていった。 　マリオがボソッと言った。 　「おい、ジョー、あんたは菓子なんてつくらないのか？」 　「面倒よ。」 　カイユンが首を傾げる。 　「キャプテンが焼いたらきっと美味しいと思うんですけど・・・」 　「気が向いたら、ね。」 　総帥のカリスマに＋３して下さい さあ、次、いってみよー！

出たところは一面の砂だった。遥か遠くに海が見える。 　「なんですの？こんな砂だらけのところにどうしてお菓子があるというんですのッ！あの紫大魔王（←酷）、ヘマをやらかしましたわねッ！」 　風が吹くと目に砂が入りそうである。と、遠くに何か動いているものが見えた。 　シーマは魔法力を開放してその動いているもののところまで瞬間移動した。…オペレーター３人組は遥か後ろから砂の上を走っている。…お疲れさま・・・ 　「白い大きな袋！あなたもまた恋人の心を結び合わせる聖人の使者の一人と見ましたわッ！」 　白い袋を持っていた主…イナバさん（←サイトのどこかに出没している二足歩行の白兎）は、ド派手なシーマにいきなりそうまくしたてられてびくぅっ！と肩をそびやかした。 　「その白い袋の中には夢と希望と愛が詰まっているのですわね!?」 　イナバさんは、そうっと袋の口を開けて覗き込んでみた。…中にはさっきからの清掃活動中に拾った空き缶やペットボトルがいくつか入っているきりである。 　「ふふ。黙して語らないのですね。良いのですことよ。聖人というのは無闇に喋っては有り難味が減りますものねｖ」 　ウサギは喋らないってば。 　「本来ならば別のお願いをしたいところなのですけれど、今日はお菓子をいただきたいと思って。今はミッションの途中なのですわ！そうですわねぇ。」 多くは望まない（といいつつ強気）　　　　　　そこそこいいもの　　　　　　究極のお菓子を！ 　「いきなり押しかけたのですもの、多くは望みませんわｖええ、もう不味かったりしょぼかったりさえしなければｖ」 　・・・・・・・・・・ 　イナバさんは少し考えると、自分の腰のあたりに手をやり、魔法のように“俵まんじゅう”を二個取り出してみせた。 　「まあッ！どこから出したんですの？魔法のオーラは感じなくってよ!?」 　シーマはずい、とイナバさんのわき腹に手をやった。…あ、イナバさん、くすぐったがって転がってる。 　「ポケットは・・・ないようですわね。」 　あったら怖いってば。ド○えもんじゃないですからッ！ 　「もう一度！もう一度お見せなさいなッ！」 　イナバさんはシーマの気迫にびくぅっとしつつ、また俵饅頭を二個出した。 　「・・・・・ど、どうしてでてくるんですのッ！もう一度ッ！」 　・・・かくてオペレーター三人組が追いついたとき、彼らは俵饅頭ゆうに４00個に囲まれたシーマと、疲労困憊して砂の上に仰向けに延びているイナバさんを目にしたのであった。 　「有難う、このお饅頭はなかなかおいしくってよｖまたどこかで会いましょうねｖ」 　去っていく４人をイナバさんは倒れたまま手を振って見送った。そして袋の中に這いこむと、袋ごと姿を消した。 総帥のカリスマに＋４ じゃ、次、行こう 　「そこそこのもので何かないかしら？」 　イナバさんは考え、・・・頭の天辺の毛を少しむしるとふうっと吹いた。すると、一本一本の毛がウサギの姿になり、大群となって瀬戸内海方面に跳ねていった。そして大群が戻ってきた時、その手には一個ずつ紅葉饅頭が握られていた。イナバさんは一人一人から紅葉饅頭を受け取り、どこからともなく風呂敷を取り出すとそれに包んで、 　「はい、」 　というようにシーマに差し出した。 　「あ、有難う。・・・・凄い技ですこと！毛で分身をするとは！もしやその毛には特殊な力がありますの!?」 　さすが魔道士総帥。魔法的なことで疑問があればとことん追求するらしい。 　ぶちッ 　抜いたよ・・・・・ 　この人ったらイナバさんの毛を抜いたよッ！ 　「アッ！ごめんなさい、私ってばついつい熱くなってしまいましたわ。勘弁して頂戴ね。」 　そのときやっとオペレーターたちがやってきた。 　「遅かったですわね。さ、帰りますわよ！」 　毛を抜かれたところを自分で撫でながら、イナバさんは消えていくシーマ達を見送った。完全にシーマが消えた時、イナバさんは上の方から懐かしい優しい声が降ってきたのに気づいた。 　「おやおや、また怪我をしたね。」 　白い大きな袋を背負い、みずらを結い、勾玉を首から下げた青年が毛をむしられたところに手をおくと、白いふわふわの毛がすぐに生え揃った。イナバさんは嬉しそうに青年と笑顔を交した。 総帥のカリスマに＋３して下さい さて、次に行きましょう 　シーマは芝居がかった調子で言った。・・・ああ、こりゃ女王さまモードロックオンだわ。 　「究極のお菓子を下さいませんことッ！」 　イナバさんは硬直した。一応この仕事を何百年もやっているが、こんな風に願われたことなど初めてだ。 　「その白い袋には素晴らしいものが入っているのでしょうｖ夢と希望と愛が詰まった袋ｖそこから出てくる物は夢と希望と愛に満ち溢れたお菓子。なんてリーズナブル！さ、じらしっこはなしですわよｖ」 　イナバさんは一応もう一度袋の中を覗いてみた。…駄目だ。やっぱり空き缶とペットボトルしかない。 　「さあッ！どうなさいましたのッ！」 　脅迫してどうする。 　イナバさんは気圧されてぶるぶる震えていた。もしも毛がなかったら鳥肌が立っているのがわかっただろう。 　「さあッ！」 　イナバさんの頭のなかに『いっそのことどうか僕を食べて下さい』というどこかで聞いたようなフレーズが思い浮かび、いや、そんなこと、とふるふると首を振った。もしかしたら、もしかしたら袋に入っているかもしれない…うんと奥の方になら…イナバさんは袋に飛び込んだ。そして、しばらく奥の方を探っていたが、小ぶりの石臼を手にして戻ってきた。 　「何ですの、これは。」 　イナバさんが石臼を右に回すとさわさわと白い粉が石臼からあふれ出てきた。シーマが舐めるとそれは砂糖であった。しかも上品で舌がしっとりと潤うような極めて上質の砂糖だ。そして、イナバさんは左に石臼を回すと別の粉が出てきた。シーマが舐めるとそれは塩だった。 　・・・・・・・イナバさん、その石臼、かなりやばくないですか？ 　（海の水は何故塩辛い、とかなんとかの石臼では・・・？） 　「ＯＫ、右にまわせば宜しいのね。砂糖はお菓子とは言い難いかもしれませんけど、このお砂糖なら問題はありませんことよッ！」 　そのときやっとオペレーター３人組が追いついてきた。シーマは石臼を彼らに持たせると軽く手をあげた。 　「それでは使者様、ごきげんよう！」 　イナバさんは手を振って見送った。 総帥のカリスマに＋５して下さい。 さ、次行こう！