アケルナルの愉快な仲間たち

　「そうですか、そんなこともあったんですか。あ、これ、この間作った杏のジャムです。さっき焼いたスコーンにつけてどうぞ。」

　「お、おお！先ほどの月餅といい、このスコーンといい、絶品であるなｖそして、この紅茶。……たっぷりとミルクが入り、喉越し優しく……」

　「そんなに褒めないで下さい。それは市場でとおっても安かった紅茶なんです。」

　「そうか？これが安価な茶葉であるのなら、これだけ美味であるのは貴公の茶の淹れ方に秘密があるのであろうな。」

　「そんなことないです。僕、紅茶のこととかよくわからないでここにきて、たくさん本は読みましたけれど、専門の学校に行ったり、誰かについて習ったりしたことはないので。」

　「学ぶのに、師が必要なことは多いが、精進を重ねれば一人でも向上していくものだ。貴公がそのよい例なのだろうな。うむ、向上心を常に持つものを私は評価し、歓迎するぞ。どうだ、私の艦に来ないか？」




　「何をまったり茶を飲んでいる!?」

　そう叫んで飛び込んできたのは、爆破屋であった。

　いや、丁度茶の時間だということで、勧められてな、とジンベエが言えば、お客様がいらしたの、本当にいいタイミングだったんです。スコーンが焼きあがったところで、とニコニコしながらカイユンが言う。

　「おかしいだろうが！ワープから準光速運航に移行したばかりのアケルナルの中にどうして客が来るんだ！」

　カイユンが首を傾げる。

　「前にもいきなり人が来たことがありましたよね……『姐さん』とかいう人で(←総帥のこと、バクロマンの登場人物。３周年記念すごろく企画では通るルートによって、アケルナルに来ています)……ここ、ときどきそういうこと、おこるんですよ。……ステキ、ですよね。だって、遠くから、僕たちのところにわざわざお祝いのお知らせに来てくださるんですもの。マリオさん、10周年のアニヴァーサリーがやってきたのですって！僕たち、随分古くから居るのに、気づいてませんでしたよね。ジンベエさんが来てくださらなかったら、ずうっと知らないままだったかも。ほら！こんなに素敵なふきんもいただいちゃったんですよ。僕、ずうっと使ってたのが古くなっちゃったので丁度欲しかったんです。」

　「おお、喜んでもらえてうれしいのである！……して、我が艦には来て貰えぬのか……。」

　カイユンは即座に言った。

　「はい、僕、行きません。……こんな僕でも、ここで、できることあるみたいだし、僕の家はここなので。」

　そうであるか、それは残念である……、と悄気るジンベエに、カイユンはスコーンを入れた紙袋を握らせる。

　「ジンベエさんの家は、このふきんに書いてある艦なんですよね？あちらの皆さんに宜しく。」

　ジンベエは手を振り、カイユンは手を振り返し、そして、消えた。

　カイユンはしばらく手を振っていたが、しばらくして手を下ろし、マリオの腕にぎゅっと齧りついた。

　｢馬鹿、俺にそういう趣味はないぞ！……どうした。」

　「あの人……ジンベエさんの調べだと、この世界は、10年前、僕たちの為に作られたのですって。……僕たちが暮らしているところではまだ10年もたっていなくて、だから、僕、よくわからない、っていったんですけれど、確かなことなんですって。…………どこかしらないところで、知らない人が、僕たちのためを思って作ってくれた……なんだか、とっても嬉しいことですよね！」

　「……それで感きわまったってか？……大方そいつは自己満足のために世界をつくったんだろうし、俺は、誰かに作られた、なんて胸が悪くなる。俺は俺自身がいいように好き勝手に生きてるんだからな。勿論、この世界を作った奴のためなんかになんか生きちゃいない。」

　しかし、マリオはがしがし、とカイユンのサラサラした黒い髪を自分の長い指で少しの優しさをこめてかきまわした。

　それがわかっているカイユンは、マリオに笑いかけると、お茶、淹れますね、今度は皆さんとパットの分を。と、紅茶の缶を掴んだ。その缶の上には薄紫色の紙が……
　
『宝物庫への招待状： A 』


　
意外かもしれませんが、このサイトをたちあげた一番の目的は、この話をアップするためでした。
スペースオペラにしても、荒唐無稽に過ぎますが、認識しつつもずっとこの路線で。

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