10万HIT記念へっぽこおとぎばなし
イナバさんはギュッと拳を握り、目の前のケルベロスを見据えます。そして、素早く一歩後ろに下がったかと思うと、猛然とダッシュして魔犬の脇をすり抜けようとしました。 しかし、ケルベロスは動きを読んでいたのか、前足で白兎の額を勢いよく殴りつけました。ウサギはゴロゴロと転がって木の幹に叩きつけられます。しかし、ウサギは諦めませんでした。起き上がると、また勢いをつけて突破しようとします。魔犬はいとも容易くそれを打ち据えて再び転がしました。 三度、四度、五度…ウサギはそのたびにむくりと起き上がって再び突破しようとします。でもその体はふらついています。白い毛皮に血が滲んでいます。ケルベロスは動きをとめたウサギに向かって大きく口をあけました。炎を浴びせようというのです。ウサギは肩掛けカバンをしっかりと抱えて蹲りました。 すると、何か黒い塊が横合いから走り出ました。そして、ケルベロスを弾き飛ばしたのです。ウサギは蹲ったままその光景を見ました。ケルベロスはその黒い「何か」を追って走り出しました。二つの黒い影が相手を求めて光速で動き回ります。それはまるで黒い弾丸のようでした。時折、二つの影は交差し、ガツンという鈍い音が響きます。そして、ケルベロスは立ち止まりました。その体にはところどころに打撲傷があります。そして…そして何か大きなものが木の上から一直線に飛び降りてきました。 フライングボディーアターック！ （わたしがおしえました） あ、ロコが珍しくみんなに自己主張してますね。 飛び降りてきたものはケルベロスの背にのしかかるように落下し、それが勝負を決めました。四肢をだらしなく伸ばし、白目を剥いているケルベロスに、黒い影がペタ、ペタ、（←いや、水かきだから）と足音をさせて近づいてきます。とどめをさすつもりなのでしょう。 しかし、イナバさんはその前に立ちふさがり、首を振りました。そして、自分に怪我をさせた魔犬の頭を気遣うように撫でました。意識を取り戻した魔犬は、自分の主人であるあの王妃よりもずっと大きな、澄み切ったオーラがこのウサギを取り巻いているのに気づきました。そして、一度深く首を垂れると、離れていきました。 白ウサギは助けてくれた黒い影にぴょこんとお辞儀をすると、赤い肩掛けカバンを背負いなおして、一路お城へと全速力で走っていったのでした。 それを見送った黒い影は自分の手のひらを開きました。 可哀想だが、助けたものから何か奪うのが大王ペンギンの掟なのです。そこには“俵まんじゅう”の包みがありました。よく見ると、紙には何か書かれています。 “有難うございました。これはお礼です” ウサギが書いたのでしょう。キング・オブ・キングスは苦笑しました。 （ミッションは失敗だな。これでは“奪った”ことにならん。） そして、すっとレターセットを取り出すと（←どこから？）こう書き始めました。 （親愛なるルドルフよ、聞いてくれ、久しぶりにミッションをしくじったのだ…） 失敗したというのに、彼の目は細められていました。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 鉱夫たちからの手紙は、イナバさんの手を通して、王様のもとに届きました。 「むッ！姫は森の奥の小屋にいると!?」 死んだかもしれないと思っていた末娘の居所がわかり、王様は微笑みました。 「むむッ！しかし、何者かの手によって、今は仮死状態!?うーむ！」 バタン、と倒れそうになった王様の耳元に、妖精が現れました。 「王様ー！ナナが言ったのはこのことですー。王女様は死んではいないのですー！でもこのままでは悪い魔物たちに本当に殺されてしまうかもしれないですー。誰か強い人が眠っている王女様を護らなくてはいけないのですよ。」 王様はすぐに３人のメイドさんを呼び寄せました。 「わかった！魔物を蹴散らせばいいんだなｖ望むところだッ！」 …フィリア、その言葉遣いなんとかならんか。王様に話しているんだし、女の子なんだし、その「ｖ」は怖いよ。台本読みなよ。 「（汗）…へ、陛下、お任せくださいませ、私達が魔物から王女様をお守り致します！…これでいいか。」 いい。んで、メイドさん服のスカートの裾を持ってこう、可愛く一礼。そうそう。よくできましたｖあ、白金先輩、笑ってる。 「覚えてろ…ファル…今度お前にもコレを着せてやる。」 「……私には似合わないぞ。光太郎の方がよく似合う。」 「ハルカさん、冗談にもほどがッ・・・」 「冗談ではないぞ？」 あー、とっとと話を進めて下さい。 「じゃ、テレポートで小屋までいくから二人とも掴まって…」 あのねー、シルちゃん。 「何？」 これは『おとぎばなし』なんでテレポートはまずい…それにメイドさんたちは魔法使い設定じゃないんで、物理的移動方法を使ってね。 「…だったら…このくらいの文化レベルで速く移動するためには何を使うの？…馬？」 「よし、おと〜さんがシルちゃんたちのために馬になってあげようｖ」 チェイス、あんたは王様なんだかダメ。 「くすん。将来の娘のために折角役にたてると思ったのに。」 「何が娘だ!?」 うーん、このサイトに馬なんていたっけ？ 「ふッ……しかたないわね。」 おお！パトリシアさん！さっそく変身してくださって、どうもすみません。ああ、綺麗な白馬ですね。さあ！パトリシアさんの変身した馬ならなら３人乗っても大丈夫！だってドラクエ４人の馬車曳いて平気だったんだから。ほら、行け！ 「戦うメイドさん」を乗せた白馬は風のような速さで森をつっきっていきました。鉱夫たちの住む家がすぐに見えてきます。なんということでしょう！そこは王妃が送り出した黒い姿の魔物たちが取り巻いていました。７人の鉱夫たちは家を護るように戦っています。 「待たせたわね！」 スカートを翻してメイドさんたちは鉱夫たちの前にたちました。 「王女さまは私達がお守りします。あなたたちは下がっていて下さい。」 ん、焔、不服そうだね。 「…だってだな。あの格闘家っぽい子を除けば俺達の方が遥かに戦闘力高いんだぜ？それを黙って見てるなんて。そして、あのキャピキャピした子はむしろ邪魔っぽい。」 ん、じゃ、共闘してもいいよ。えーと、蒼井君は何を悩んでいるのかなあ。 「なぜ『戦うメイド』なのだ？」 いや、それはぎょーかいではそれほど珍しいものではなく。 「…だとしたらその“ぎょーかい”とやらは不可解極まりないものだな。」 は、はい。仰るとおりです。（汗）あれ、リヒトはくるみちゃんにギューってされてますが… 「そんなに僕にしがみついて、怖いのかい、フロイライン。だったらこのベンチに座ってｖそう。君がそこに座って声援を送ってくれるだけで、僕のテンションのメーターは針が振り切れるまで上がるからｖそこから動かないで。君が怪我でもしたら、僕はどうしていいのかわからなくなっちゃうからね。」 うわ、なんて速やかな排除。リヒト、あんた偉いわ。 「じゃ、いくわよ！」 メイドさんの一人、フィリアの叫ぶ声で、改めて戦いが開始されました。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 丁度その頃、炊事場の倉庫の奥ではカイ少年が滅茶苦茶にフライパンを振り回していました。一回振り回すと小さなコウモリを７匹叩き落すことができました。神様はカイに味方をしてくれていました。でも、魔物はあとからあとからやってきます。 「誰か！誰か来て下さい！」 必死に叫んでも誰も来ません。尚もフライパンを振り回していると、前掛けのポケットから、ご飯をつくる最中に飛び込んだ豆が一粒転がり出ました。 再三いうようですが、神様はカイの味方です。正直で働き者の子は神様に愛されるのですよ。 転がり出た豆は傍らの水を汲んだ桶に飛び込み、そこからみるみるうちに芽がでて、天まで届く大きな豆の木が… 管理人！それでいいのか!? いいんです。（断言） カイは必死で豆の木を登って逃げます。魔物たちは追いかけます。 （豆の木の天辺までいったら僕はどうしたらいいんだろう!?） 泣きそうになりながらカイは逃げます。と、魔物の様子がおかしくなりました。カイを追うのをやめ、地面の方を向いています。 「ジョセフィンさん!?」 あの綺麗な女の人と、見知らぬ男の人が魔物と戦いながらこちらにやってきます。ジョセフィンは細身の剣、男は短剣を構えて次々と魔物を切り捨てます。 綺麗なだけじゃなくて、ジョセフィンさんはとても強いんだ！ 逃げている途中なのですが、カイはそんなことを思いました。やがて、魔物の中を突破して二人はカイのところまでやってきました。 「ジョセフィンさん。王妃様が！王妃様がこの魔物を呼んで…！」 ジョセフィンはそのハシバミ色の瞳を一度瞬きしました。 「そうだったの…！では、王妃を倒さなくては!!」 男が豆の木の下を見てはっとしました。 「下を！」 叫び声に答えてジョセフィンも下を見て頷きます。 「カイ、飛び降りるわよ。」 「ええッ!?こんな高さから!?」 「私を信じて…！」 男が先に飛び降ります。カイはジョセフィンに抱きかかえられて宙に飛び出しました。 ぽふ。 地上にはクッションが山のように積まれており、カイたちはその上に無事に落ちました。その周りを11羽の仔ペンギンたちが取り囲んでいます。先に降りた男が壁に立てかけられていた手斧で豆の木を切り倒しました。魔物たちは倒れた豆の木と一緒に固い地面へと落ち、翼を持った少数の魔物は、負けを悟ったのか逃げていきました。 「さあ、王妃のところへ!!」 男とジョセフィンは走り出しました。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 王妃は鏡を使っていろいろな場所の様子を見ていました。そして、向き直ると扉をじっと見つめました。もう、人々がここにやってくるのがわかっていたからです。 扉をあけるとまずジョセフィンと男が走りこみました。そして、近衛騎士隊長と筆頭宮廷魔道士も。そして、隣国の王子も銀の剣をすらりと腰から抜き放ちます。 （「あれって聖剣？」「いや？バルムンクやミストルティンやティルフングのようなオーラは感じられないが」「うーん、管理人さんは私達に『修理代が嵩む！』って言って鉄の武器ばかり使わせていたけど、最後くらいは特殊武器で決めてほしい所だね。」） いや、ほら、紙面もないし…（汗） 「ほほほほほ！私のことが気づかれてしまったのですわね。いいでしょう。ここまで来たならば今まで隠してきた私の本当の恐ろしさをお目にかけてあげましょう！」 「いや、お前さんの本当の恐ろしさはわしゃ、よーっくわかっておる積りぢゃが…」 「親父さまッ!?」 「（びくうッ！）は、はいッ!?」 「何かおっしゃいまして？（←艶やかでぞっとするような微笑）」 「な、なんにもいっとらんぞ？」 「それならば宜しいですわ。さあッ！私の魔法を受けてみるがいいッ！」 うわ、本気モードですか？コープル君とクリフト。本当にもしかのことがあったら頼むよ。 王妃は皆に魔法を浴びせかけます。しかし、『黒森の賢者』はその魔法を悉く跳ね返しました。 「親父様…じゃなかったですわねッ！魔道士！よくも私の魔法をッ！」 「伊達に人生長くやっておらんぞｖほーれ、ほれ、わしの防御魔法を破れるものなら破ってみい！このヒヨッコめが！」 「きーッ！その小馬鹿にしたヒヨッコ呼ばわり、いくら親子と言えど許しませんことよ。」 「ち、違う、これは台本に…」 「いいえ、素が入っていましたことよッ！」 あー周りが呆れてる。ここで親子喧嘩してどうするよ。シーマさんシーマさん。隣国の王子さまが顎を落としかけているので、先に進んで下さいな。 「あッ!?うふふ、私としたことが、見ていてくださいましね。私、華麗に悪役を全うして見せますから、その暁には褒めて下さいねッ！あ、あ、別に褒めるだけではなくてあんなことやこんなことをしていただいても私は気にしませんことよッ！きゃッ！何を言わせるんですのッ！」 …言わせてないってば。…いまので副官の顎が完璧に一度落ちたのには気づいていないようだね。 ま、とにかく 賢者が魔法を押えている間にローンと王子がかわるがわる王妃に切りつけます。まだ残っていた魔物はジョセフィンたち二人が相手をします。と、ローンの太刀が王妃の腕に浅い傷を負わせました。王妃は凄まじい声でからからと笑います。 「私の美しい体に傷をつけるとはッ！ならば、お前達を地獄の底まで連れて行ってやろう！」 女王は呪文を唱えました。すると、次の瞬間、そこには大きな竜が…って…ええっと…あのぉ…竜になって欲しいんですけど…ああ、ダメだマーニャさん、完全に出来上がってる。 「ホエ？…ごめんれ。なんか、このおしゃけ、やけにつよくっれ。（ゴメンネ、このお酒、やけに強くって）」 「ああッ！俺のクラッキングダイナマイトを空にしやがったのか!?」 怒るな、マリオ、酒瓶を持ち込むあんたが悪い。 「管理人さん、これで良かったんですよ。だって姉さんが竜になったら、全てを焼き尽くすか体力を使い果たすまで人間には戻らないんですから。」 うわあ、確かにこのサイトではそうだった。 「おと〜さんが化けようか？」 だから、王様でしょ、チェイスは！ 「あの…私が呼びましょうか。」 あ、えーと、ミラさん、あなた、ドラゴンなんて呼べましたっけ？ 「…何かそれに近いものは出せるかもしれません。」 うーん、とんでもないものが出るかもしれないですね… えーと、アルテナさんやアリオーンさんの竜は…？ 「この子たちはおとなしいですけれど、刺激されると暴れるかもしれません。ね、兄上。」 「ああ、そうだな。」 うわあ、一体どうしたら… 「あらあら…また私の出番？」 …すみません、パトリシアさん、またお願いします… 王妃が呪文を唱えるとそこには竜が…って邪悪って言うより綺麗な竜ですねぇ。ま、いいか。おや、パトリック、何故そこで出てくる？ 「竜を倒すのは騎士様なんでしょう？ここには騎士様がいるの？」 ええっと、騎士が居たら手をあげて出てきてやってください。うわ、ＦＥ方面には多いと思っていたけど、正式に叙勲受けたのはフィンさんだけですか？あとはは…ライアンさんとローン兄さんだけ？少ないッ！ 「うわー、本物の騎士様なんですね！皆さん、竜を倒したことがあるんですか？」 すみません。この子、騎士に憧れているんで。 「サイト上では描かれていないが、一頭。」 「……トラキア半島ではかなり。」 「ドラゴンに分類される魔物は数多く。」 「わあ、やっぱり騎士様って凄いな。そうしたら、素敵なお姫さまと結婚したの？」 「ああ、ほら、あそこに居るミラとね。もうすぐ式をあげる予定だよ。」 あ、ミラ王女、照れながら手を振ってますね。 「わ、私は…サイト上ではそういうことになっているらしいのですが、私自身もどういう経緯でそこに到るのか…」 アルテナさんは恥ずかしそうに苦笑してますね。 「…私は一介の王宮戦士に過ぎないゆえそのようなことはない。」 あ、ミネアさんがパットを手招きしてますか？ 「坊や、あのね、あの戦士様はね、王女様とではなくてあそこにいる『へべれけ』と結婚するのよ。少なくとも私はそうなってほしいの。」 「へべ？」 「…今に判るわｖ」 ……いらんことを吹き込まないで下さい。 竜は首を伸ばし城の天井をぶち割り…いや、窓から外に飛び出したことにしましょう、うん、そうだ、それがいい（だってブライがこっち睨んでるんだもの！） 竜の後を追って飛び出してきた一同に竜は炎を浴びせかけました。（パトリシアが炎を吐けるか不明ですけどこの際吐いて貰いましょう） 筆頭魔道士が氷の盾を作ってやり過ごします。おお！凄い冷気だ！あー、ブライさん、ランディ君、特殊効果サポート有難うございます。 「騎士殿！」 「王子陛下！」 こうしてみるとローンと副官って体格似てますね。あ、話を続けなきゃ。 騎士と隣の国の王子さまは一度左右に分かれると同時に竜目掛けて走りました。そして、二人が駆け抜けたとき、邪悪な竜はどう、とその身を大地に横たえたのでした。竜はそのままちりになり風に吹かれて消えてしまいました。 戦っていた人たちはにっこりと笑顔をかわしました。しかし、そこにガラスの棺を担いだ７人の鉱夫たちが３人のメイドさんに先導され、しゃくりあげながらやってきました。邪悪な王妃は滅びましたが王女は目を覚まさなかったのです。 城の広間に下ろされた棺に王は駆け寄りました。 「姫よ！ファナよ！目を開けてくれ。お前が死んでしまったらわしはどうすればよいのだ！」 隣の国の王子さまが王様に歩み寄ります。 「おお、公子殿。…昔話では、王子の口付けで王女は目を覚ますもの。どうか娘を…」 あ、シーマがふるふるしてる。 となりの国の王子さまは項垂れました。 「陛下、申し訳ありません。私は陛下を騙しておりました。…私は隣国の王子の従者でございます。こちらの国に向かう途中、王子が姿を消してしまわれ、お探ししたのですが見つからず…幸いにも王子がこの国に来るのは初めて。失礼ながら身代わりとなった次第でございます。いかような罰をも受けますゆえ、わが国の無礼をお許し下さいませ。」 あ、シーマがガッツポーズしてる…なんて判りやすい娘なんだ… そのとき、爽やかな声が響きました。 「ブルーよ！お前が罰を受けることなどないぞ。全ては私に責任があるのだからな！」 紫紺のマントを翻し、カツカツと足音高く見目麗しい青年がやってきました。…ああ、なんだか両手に飴だのクッキーだのわんさか持っているよ。 「…陛下、失礼した。国情を調べるには、城下に出るのが一番なのでな。…私は様々な国を巡ってきたが、貴公ほど国民に愛されている王も珍しい。いや、感じ入った。…む！うらわかい娘ごが倒れているではないか。どうしたのであるか？」 王様が説明すると、隣の国の王子さま（←ホンモノ）は白いシルクの手袋の嵌った手を顎にあてて考えました。 「うーむ。この美しき深紅の薔薇、どこかでこの薔薇の伝説を聞いた覚えがあるぞ。…昔麗しい王子がいたのであるが、心が奢っており、貧しい身形をした年配のご婦人が一晩泊めて欲しいと頼んで来たのを素気無く断ったのだそうだ。ところがそのご婦人は魔法使いでな。王子に魔法をかけ、醜い姿に変え、この薔薇が枯れるまでに清い心の乙女に愛されなくては魔法がかかったまま死んでしまうということだった。噂では、その王子は自棄になり、ますます心が荒んで魔物に姿が変わったということだったが…」 と、そのとき、窓から大きな黒い鳥が飛び込んできました。そして、ガラスの棺に近寄るとじっと王女を見つめました。そして、人間の姿に変わりました。醜い吟遊詩人がそこに立っていました。 「王女は死んではいません。私がこの薔薇に念を込め、仮死状態となるようにしたのです。…この優しい人を護るにはこうするしかなかったのです。でも、もうすぐ薔薇は枯れます。薔薇が枯れたら王女は目を覚まします。安心してください。」 王女の胸に乗っていた薔薇の花びらが一枚、また一枚と落ちていきます。そして、最後の一枚が落ちたとき、王女はぱっちりと目を開きました。そして、花のような微笑を浮かべました。王様が駆け寄ってしっかりと抱き合います。王女さまは王様の額にキスをし、ゆっくりと立ち上がると横たわっている吟遊詩人の所に歩いていって抱き起こしました。 「起きて…起きて下さい。」 吟遊詩人は目を開きました。 「あなたは…何故あなたが目を覚ましていて私がまだ生きていられるのでしょう。薔薇は散ってしまったはずなのに。」 「そんなこと…仮死状態になっていても、私にはあなたの声がずっと聞こえていたのです。私を護ってくれたあなたを私はとても愛しいと思いました。だから魔法は解けたのです。有難うございます。」 そう言って抱擁してきた王女から青年は顔を背けました。 「このような醜い者を抱きしめてはいけません。」 「外見など、小さなことです。それに…」 王が手鏡を差し出しました。そこには美しい顔が映っていました。 「魔法は…解けたのですよ。」 齧り付いてきた王女さまを魔法が解けた王子さまは抱きしめました。そして優しくキスしました。王女さまが大好きで大好きでしかたなかったからです。 うわー、顔、真っ赤だよ、カナン。ファナさんも負けないくらい真っ赤だけど。ま、とにかく顔近づけてね。 ・・・・・・・・・・ あー、うー、ええっと…フリだけでいいんだけど…お芝居なんだから…って言うの遅かった？かすっちゃった？触れ合っちゃった？…遠くから見ている私達にはわかんないんだけど、あの尋常でない慌てぶりは… 「ねー、ラル、私、とってもあったかいものを感じるんだけれど？」 「うーん。…あとでカナンをとっちめてやろうかな。」 はいはい、どっちにしてもこれ、パロディなんだから。本編にはここで起こったことは引きずらないからねｖ そこにわらわらと11羽の仔ペンギンたちがやってきました。 「あ！そうでした！」 王女様は最後に残っていたジャケットの袖の始末をすると、仔ペンギンたちに投げました。仔ペンギンはジャケットに飛びつくと素早く袖を通しました。するとどうでしょう。そこには11人の王子さまが立っているではありませんか！神隠しにあったと思われていた王子さまたちは、王妃様の魔法にかかってペンギンになっていたのです。 ほらほら、王子達、出てこい！ セリス、シャナン、ヨハン、ファバル、アレス、リーフ、アリオーン、アーサー、セティ、レスター、コープル！（こ、これで“王子”は全部ですよね？） 王様は失ったと思っていた王子達の帰還に嬉し涙を流し、抱擁しあいました。わー、どさくさ紛れにくるみちゃんが“ぎゅー”ってしてますが。 こうなると、行方不明は上の王女様だけですが… 「ジョセフィン！よくぞ帰ってきた!!」 王はジョセフィンを抱きしめました。 「お父様、ごめんなさい。お兄様達をどうしても捜したくて城を飛び出してしまいました。連絡もせず、ごめんなさい。」 隣の国の王子さまがばさりとマントを翻しました。 「うむ！大団円であるな！」 わははは、と笑う王子さまは、今回のことではあまり働いていない気もするのですが、この場を取り仕切っているのは確実でした。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 歓喜の宴は何日も続きました。 その宴の賑やかさを他所に、城の裏手では何人かの人が集まっていました。 「どうしても行ってしまうの、お姉さま。」 「うーん、私は城の暮らしが性に合わないみたい。あとのことはよろしくね。」 ジョセフィン王女が言うと、ファナ王女は少し笑いました。 「私も遠くの国に嫁いでしまいますけれど…そうですね。お兄様たちに任せれば間違いはありませんね。」 ジョセフィン王女はファナ王女に手を振りました。そして…その隣にはカイ少年が居ました。 「王女様、どうして僕の旅についてきてくれるんですか？」 「ん、ふらっと気の向くままの旅もいいけれど、目的のある旅も嫌いじゃないわ。カイが故郷へ帰るって聞いたら、心配になって。あなた、旅になれていないでしょう？」 「ええ、…ゴメンなさい。でも、僕、とっても嬉しいです！」 すると、左右から二人の男がすっと加わった。兵士長のロムとアサシンのマールだ。 「どうしたの？」 「陛下は、あなたが旅立たれるのを予期しておられましたよ。」 「全く娘に甘いんだから…俺達二人、護衛だとさ。迷惑な話だ。」 それほど迷惑そうでもなくマールは言った。四人はすぐに打ち解け、話をしながらがら歩いていくと、地面に開いた小さな穴を覗き込んでいる男に出会いました…ソーンダイク、どうでもいいが、サングラスは外せ。 カイがたたた、と走っていって男の話を聞き、戻ってきました。 「王女様、あの人、あの穴の中にある古いランプが欲しいんだけど、体が入らなくって困っているんですって、僕、潜ってきます。」 ……おとぎ話はまだまだ終わらないようです。 それではまた、いつか… この世界はあなたが来てくださるのを待っているのですから！ へっぽこおとぎ話 完 |
| この話の中で使われていたおとぎ話（50音順） アラジンと魔法のランプ 勇ましいちびの仕立て屋（←一行だけですが） ジャックと豆の木 白雪姫 眠れる森の美女 野の白鳥 美女と野獣 |
| やっと終わらせました。サイト内のキャラクターが増えると全員出すのは不可能ですね…今回はドラクエやＦＥのキャラも使って遊んでみました。へっぽこサイトに相応しいへっぽこ話でしたが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。可能な限りサイト運営頑張りますのでこれからも宜しくお願いいたします!! |
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