ジャムカの手紙(後編) |
翌日、デューが塞ぎこんだままだったかというと、まったくそんなことは無かった。朝日と一緒に起き出したブリギッドが様子を窺うべくデューの部屋の扉をあけようとすると、 「姐御、おはよーっ！」 と、馬鹿でかい声が厨の方からかけられた。デューはタタタ、と走ってきて、深々と腰を折ると、姐御、御免、昨日は悪酔いしちまったんだ、神様に誓って酒場に行ってもしばらく酒は一滴も飲まないからさ、どうか勘弁な、勘弁な、勘弁な！と十度ほどコメツキムシのようにお辞儀を繰り返した。頬にはまだ殴られた痕があったし、目は泣き腫らした様子がありありで酷い有様だったが、いつもの笑顔が戻っていた。どんな風にデューと接するべきか、説教した方がいいかそれとも少しは優しくしてやったほうがいいのかと逡巡していたブリギッドは、一気に力が抜けて、ゴチンとデューの脳天を殴って、全くだ、その誓い破ったら承知しないよ、さあ、それより竈に火を起こしな、とぶっきらぼうに言い放った。姐御、痛い、痛いよ、とデューが情けない声を出し、その件はそれでおしまいになった。 デューは今までどおりに家の仕事をバリバリこなし、小遣い銭稼ぎにもせいを出し、村の皆に気軽に声をかけ、うまいぐあいに頼ったり頼られたりしていた。 それでも何かが変わっていたのだ。 例えば、デューは、昼の日中にぼうっとしていることが多くなった。そこが戦場であろうと、足下に転がっていたおあしを見逃すことなど無かったデューが、である。酒場で椅子に座っていても、万屋の脇にある石垣に腰掛けていても、虚空を見ている。そして、はああああああ、と長い息をして、うううううん、などと腕を組んで首を傾げたりする。傍に居る大人たちや老人達や同年代の若者やはては子供たちまで…要は、村人みんなが、どうしたのか、どこか具合が悪いのか、と尋ねてきた。デューはそのたびに飛び上がって吃驚し、ああ、またやっちまった、ごめん、ごめん、いやいや、おいらだっていろいろ考えることくらい…うーん、あったり、なかったり？とおどけて言ったので、誰も心配はしていなかった。デューだって、独り立ちしてもいい年齢になった。村にはデューのことを憎からず思っている少女も居る。所帯を持つには若すぎるかもしれないが、童顔でおどけ屋で実年齢よりずっと下に見られるデューだって将来のことを考えてぼうっとしたっておかしくはない。 そんなことをブリギッドは懇意にしてもらっている何人かの村人から聞いた。思い当たるふしはあった。あまり思いつめた表情ではなかったが、ある日、デューは『行商人のおじさんから、本格的に一緒に商売をしないかと誘われている』とブリギッドに報告してきたのだ、どうしようか、商売も面白いと思うんだけど、そうなると家を空けることも多くなって、ファバル坊ちゃんと遊べなくなるのはつまんないし、ご飯も作れなくなっちまう。どう思う、姐御、と就寝前に意見を求められ、ブリギッドはまっすぐデューを見て、あんたの思うとおりにすることだよ、答えた。その答えはデューの欲しかったものではなかったようで、落胆の色が彼の顔に浮かんだ。 さて、どちらを言って欲しかったんだろう。 ブリギッドは考える。 思い切って商売をやってみな、あんたならいい商売人になれるよ、なのか、それとも、商売もいいけれど、やっぱりあんたが家にいてくれると助かるね、なのか。 寝台で横になり、ブリギッドは半目になった。おそらくは、どっちも正解なのだ。前者なら、デューは、ええっ、嬉しいなあ、でも、やっぱおいら、もちっと家のこと頑張ろうって思う〜、と笑い、後者を言ったら、えええっ、姐御ってばおいらのこと仕事するにはまだ頼りないって思ってるのかい？うー、んじゃ、頼りになるようもそっと頑張る〜！とふにゃっとこれまた笑うのだ。 ブリギッドにとってはどちらも不正解である。デューの抱えている『何か』はまだ解決していない。一番近くで生活している彼女にはそれがはっきりわかっている。そして、ブリギッドは、放っておけば時間が解決してくれる、などと考える人間ではない。だから、彼女は決めた。デューは嫌がるだろうが、デューが喧嘩をして帰ってきたあの日、何があったのか、暴くことを。 翌日の夕食後、ファバルを寝かしつけたブリギッドが、ちょっと村長さんのとこに行って来るよ、戻ってきたらあんたにも話があるから留守番し待ってておくれ、と言い置いて出かけていった。もうすぐ秋の村祭りも近い。こんな辺鄙な村でも、飲めや歌えの大宴会なるので、確か村長さんはいまや村一番の猟師であるブリギッドに獣肉の確保を依頼していた。そういったことの打ち合わせなのかもしれない。 デューは『お宝袋』を取り出すと、銅版を打ち出して作った蓋付き金属の箱を取り出した。以前は袋の中に直接硬貨を入れていたが、多くを稼げるようになって、硬貨入れを遅ればせながら作ったのだ。その硬貨入れも満杯になる日が近かった。 (こんだけあれば、独り立ちはできるんだろうけど……) 箱の中を見つめてあれこれ考えていたデューは、また少しぼうっとしていたらしい。家の窓から空を見て、星座の位置を確認し随分と時間がたっていたのを知ったデューは、村長さんとの話って何なんだろう、と考えた。猪を矢で射るのは姐御なら容易いことだ、やっぱり、誰に運びに行かせるかとか、そういうことなのか。それとも、祭りとは別に、冬に向けて塩漬け肉用にたくさんの猪を狩ってほしいということなのか… そうぼんやり考えていたところで、ブリギッドは帰ってきた。出迎えれば、頬は上気し、酒精の匂いがする。 「姐御、村長さんとこで酒盛りかい？」 ブリギッドは、それには答えず、デューに食卓の椅子に座るように言った。向かい合わせのいつもの席にブリギッドが座る。 「……宴会しながら難しい話があった…とか？」 すると、ブリギッドは不機嫌そうに言った。 「生憎だけど、村長のとこ行くっていったのは嘘だよ。」 は？ 目を丸くしたデューに、ブリギッドはにやっと笑う。 「酒場で一杯ひっかけたのさ。」 デューは目を見開く。ブリギッドは酒好きの酒豪だが、毎日飲むわけではない。そして、『酒飲み』などとレッテルを貼られたくもないので、酒場で飲むなんてことはお祭りか村をあげての冠婚葬祭のときにしかしない。それを、わざわざ出かけて行って飲むなんて、どういう風の吹き回しだろう。鳩が豆鉄砲を食らったようなデューの顔にブリギッドはニャッと笑った。 「だって、仕方が無いだろう？あんたは未だに酷い喧嘩をした理由を話しちゃくれない。一緒に暮らしてて、隠し事はナシだと思ってたのはアタシだけだったのかねえ。何度か話を振ってみたけどあんたはすうっと目を逸らして下手な駄洒落をかまして話題を変えようとするしさ。幸い、喧嘩の相手はわかってたからね。 「え？なんでわかったのさ？」 「わからいでか！……あんたとお揃いに顔腫らしてる奴を翌日探せば簡単だろ！…ったく、村で一番気があってた奴とあれ以来まともに話したことがないなんてどうかしてる。……事情は聞いたが、あんなことで怒り狂う必要がどこにある？」 デューが勢い良く立ち上がる。 「！？あ、あいつ、姐御においらが怒った理由を話したのか！？」 ブリギッドは、すうっと目を細くし、黙って人差し指で床を指して、デューを座らせた。 「酒場であの子を見つけて問いただしたんだけど、あの子はそれだけは絶対言えないって、貝みたいに口つぐんでたんで、言ってやったんだ。飲み比べをしよう。あたしが勝ったらあんたは全て喋る。あんたが勝ったらあたしは二度とこのことを訊かない。そしたら、受けて立つっていうからさ……正々堂々の勝負の末、あたしが勝っちまったもんだから、あの子は止む無く喋ったのさ。」 デューは、あー、とかうー、とか呻いた。奴は、若い奴の中では一番のザルだったから、ブリギッドが勝つことなど考えていなかったのだろう。知らないということは恐ろしい。実際はシグルド軍の中でのうわばみ筆頭はガタイの大きなドズルのレックス公子でも、名うての傭兵ベオウルフでもなく、外見だけなら華奢ともいえるこのブリギッドであったのだった。 「……あの子は泣き上戸だね。ボロボロ泣きながら、デューすまねえ、って連発してたよ。……しかしねえ、あたしにはさっぱりわかんないんだよ、なんで、あの子の言ったことで、あんたがあそこまで激怒したのか。」 右手で頬杖を突き、左手の人差し指でこめかみをポンポン叩くブリギッドに、デューはぶんぶん首を振った。 「わかんないのは姐御の方だよ！あいつがあのときのことを正直に話したんだったら…いや、話したよな、あいつは嘘はつけない奴だし。……許せないだろ！あんな……あんなこと言いやがって…！わかってるのかい、あいつ、姐御のことを侮辱したんだ！」 ブリギッドは半目のままだった。 「……あたしは侮辱されたのかい？そんな風には聞かなかったんだけどね。」 「だってあいつ……！」 言いかけてデューは口を押さえた。 「……どうする？あんたが言いたくなければあたしがあの子から聞いた通りに言うけど。」 「あ、あ、姐御にあんなこと言わせられるか！そんなの兄貴に申し訳が立たないだろ！……あいつはおいらとお喋りしてて、ごく普通にお喋りしてて、…ごく普通の話の中で笑いながら言いやがったんじゃないか！『で、デュー、どうなんだ。ブリギッドさんの抱き心地はさ』って！」 そこまで一気にまくしたててからデューは真っ赤になって下を向いた。 「酷いじゃないか！あいつは姐御のこと、兄貴以外と平気で寝るような女だって言いやがったんだ。そんなの、そんなの、許せないじゃないか！」 暫くしてから、はああああ、とブリギッドが呆れたような息をついた。 「そんなことくらいであたしは憤ったりしないんだけどねえ。デュー、あんたはそれくらいで頭が沸く子だったのかい？あんたがやるべきことは相手を殴ることじゃなかったんだよ。おいらは抱いてなんかいない、それだけで済んだんだ。……それからあんたは大いに勘違いをしている。あんたが育ったユングウィ近辺じゃそうじゃなかったけど、ここいらじゃ、旦那が死んで一人身になった女は、いい縁談が持ち込まれれば別だが、そうでないときには、旦那の兄弟の細君になるのがごく普通の話なんだ。あたしは一人だけだって弓の腕でファバルを養っていけるけど、普通は男手がないといろんなことが大変だからね。デューには話してなかったけど、あたしのところには世話好きのおばちゃんたちが、いくつも縁談を持って来てくれてたんだ。無論、その場で断ったけどね。縁談を断り続ける小さな子供を抱えた女が、亡くなった旦那の弟分と仲良く一つ屋根の下で暮らしてる。……あんたの友人は勘違いをしたわけだけど、その勘違いは別段変なことじゃなかったんだよ。……それにね……酒にでロベロに酔って泣きながらだったからはっきりしなかったけど、どうやらあの子はあたしのことを好きになってくれたみたいだったよ。あたしよりもずっと年下で、求婚なんておこがましいと感じていたようだが、デュー、あんたとあたしがくっついていないんだったら、まだ望みはある、と、かなり決死の覚悟であんたに話を振ったらしい。必死に顔に笑顔を貼り付けてね。それをあんたは殴っちまったんだ。……さぁて、悪いのはどっちなんだろうね。」 デューは、うわあああああ、と声をあげ、『悪かったのはおいらだ』と自分を断じた。それを満足そうに聞いていたブリギッドは、一度頷いてから、先程とは違った短い息を丸く吐き、居住まいを正してからこう聞いた。 「さて、……ここからが本題なんだ。改めて教えちゃくれないか。なんであんたはあんなに怒ったんだい。シグルド軍に居たときに、あんたは喧嘩なんか一度もしなかった。バーハラから逃げるときに、危険なことはいくらでもあったが、あんたの頭の中には、相手を害することなんて全く考えることはなかった。あんたの友達は、そりゃ、少しは下卑たことを言ったが、しれないが、あたしを侮辱しようなんて思っちゃいなかっただろうさ。……あんたはなんでそんなに怒ったんだい。」 デューは黙っている。 「……よく、聞いとくれ。……あんたが義理堅い奴だってことはよくわかっているつもりさ。あんたはジャムカと約束した。ファバルを守って、あたしと一緒に逃げろって。あんたはジャムカを尊敬していて、それだけじゃなく兄貴として慕っていた……間違っていたら済まないんだけれどね、あんたは、あたしがジャムカへの操を守り続けて欲しかったんだろう？あたしがいつまでもジャムカを愛し、あんたはずっとファバルとあたしを守り続ける。それが約束を守ることだと信じてる。そうなんだろう。でもね、デュー……それだけじゃ、ないだろう？……それだけで他人に手をあげる人間じゃないって、あたしは誰よりよく知っている。……これからどうしたらいいか迷っているんだろう？答えないでいいさ、あたしはいろんなひとからあんたのことを聞いてるからね。……いいんだよ、ジャムカとの約束に縛られる必要なんてないんだ。」 ブリギッドは寝台に近づくとしゃがみ、以前にデューから受け取ったジャムカからの二通目の手紙を取り出し、油紙を外し、羊皮紙を開いてデューの前に置いた。 「……相変わらず、飾り文字は読み辛いだろうけれど、それでも内容はわかるようになっているはずさ。あんたはもう昔のあんたじゃない。いろいろ読める。」 デューは手紙を前にして固まっていたが、ブリギッドに促されて、震える手でそれを開き、読み始めた。内容を理解するのに支障はないようで、ゆっくり目を動かして懐かしいジャムカの文字を追い、一枚目を読み終え、二枚目を読み始め、三枚目をゆっくりと読み終え、肩を落とした。 「兄貴は……おいらのこと、頼りにしてた訳じゃなかったんだ。ただ、おいらのためを思って、姐御と一緒に逃げるよう言ったんだ。おいらは…おいらは一生懸命頑張ったけど……わかってた。姐御は一人でも頑張れる人だって。今だって、おいら、守ってるというより、守られてるんだ。おいら、一人だったらきっと盗賊家業ばかりしてた。読み書きだってできるようになってなかったと思う。……もう、おいらは要らないんだよね。」 ブリギッドの拳骨がデューの脳天を叩く。 「どこをどう読んだらそういう考えが出てくるんだい？ジャムカは言ってるだけだろう。『お前の思うように生きろ、お前の幸せを祈ってる』って。」 「姐御こそ何が言いたいんだよぅ！……姐御がおいらに読み書きを教えたのは、おいらが独り立ちしてここから出て行けるように、なんだろ！そうだよね、おいら、親の顔も知らない盗賊さ。これから姐御とファバル坊ちゃんがかかわるようなすごくでっかいことにおいらの出る幕はないもんな、でも、姐御は優しいから、そんなこと一言も言わずにいてくれた。正直、おいらも迷ってた。だって出て行ったら約束破ることになるからな。でも、兄貴の手紙を読んでわかった！兄貴も出て行っていいって言ってる。『いつまでも約束を守り続けてくれ』ってどこにも書いてないもんな。ああ、これですっきりした！おいら、この家を出て町に出て行商始めるよ。姐御もおいらがいつ独り立ちしてもいいように読み書きできるようになれっていってくれたんでしょう！」 もう一度ブリギッドの拳骨がデューの頭を見舞った。そして、彼女は夫の手紙を掲げる。 「だ〜か〜ら〜！どこをどう読めばそうなるんだっての！ジャムカはあたしとあんたの両方に『思うように生きろ』って書いてるんだろうが！…読み書きのことについちゃあ、あんたの思ったとおりのこともある。でも、一番には、今見せたジャムカの手紙を読んでもらう為だった。あたしもジャムカと同じようにあんたを縛り付けたくなかったからね。……そして、あたしはだんだん腹が立ってきたよ？聞いてりゃさっきから、出て行くだの、出る幕がないだのなんだの。よく考えてみないでも、あんたがどっかにいっちまったら、あたしは凄く困るんだ。猟に出たとき、だれがファバルの面倒を見てくれるんだい？近所のおばちゃんが預かってくれるとして、あたしが戻るのが遅れたとき、誰が夕飯を作ってくれるんだい？そして、あたしがジャムカのことやエーディンのことを話したくなったとき、あんたが傍にいてくれなかったら、誰が相手をしてくれるんだい？いいかい、あんたが出て行ったら、あたしは不幸になる。それはジャムカが望んでいたことじゃない。 「待って待って待って、おいらがここに居たら、姐御は誤解されるだろ？おいらと何かあったとかそういう… 「別にいいじゃないか？」 ブリギッドはあっけんからんと言った。 「だって、あたしはあなたのことが大好きだもの。」 みるみるうちにデューの顔は真っ赤になり…彼は手近にあった『お宝袋』の中身を卓の上に全部ぶちまけ、そのずだ袋を頭から被った。 「いきなりなんだよ！おいら、おいら……どんな顔したらいいかわからないじゃないか！姐御は兄貴のものなんじゃないか！」 「何をいうのさ！あたしはジャムカの所有物じゃないよ！」 「おいら、盗賊だよ！」 「あたしは海賊だったけど、それが何か？」 「………おいら、兄貴を裏切ったり出来ない。」 「ジャムカが恨むとでも思っているの？……あの人は、世界で誰よりもあたしと、ファバル、そしてあなたの幸せを願ってた。ジャムカは私を愛してくれた。ジャムカはあなたのことも大切に思ってた。二人ともが幸せになるのなら、ジャムカは喜びこそすれ、悲しむことは無い。あの人の器が海より広く深いことは、あたしが誰よりも知ってる。」 「……おいら、必死で我慢してたのに。」 ブリギッドは知っていた。わかっていた。デューはブリギッドの前では、地声と違った高い声を出すよう心がけ、少し腰を低くして背も低く見せようとし、子どもっぽく振舞っていた。それはブリギッドとは男と女の関係にはならないという決意の現われだったが、自分に向ける好意はだだ漏れだった。ブリギッドは大雑把な性格であるが、自分に寄せる好意には聡いのだ。何せ、あの無表情で寡黙で何を考えているかわからないとまで仲間から言われていたジャムカの好意にいち早く気づいたのだから。 「ああ、姐御、でもおいらはやっぱり…」 そう口ごもったデューの体にブリギッドは抱きついた。 「あたしは、ジャムカのことが大好きなあなたのことが大好きよ！」 袋を被ったままのデューの耳に、大人たちの騒ぎに目を覚ましてしまったらしいファバルの眠たげな『おかあちゃああん』という声が入ってきた。そして、幼子はキャッキャと歓声をあげた。 「おかあちゃん！おじちゃんとお化けごっこ？僕も混ぜて！」 ブリギッドがくすくす笑ってファバルを抱き上げると、ファバルはデューの首に腕を回してしがみついてきた。その上からブリギッドが腕を回す。デューは背を伸ばし、袋を被ったまま二人を抱く。そして、袋越しに囁いた。 「姐御、おいらも姐御が大好きだよ。」 僕もおかあちゃんとおじちゃんが大好き！とファバルにに言われ、もちろんおじちゃんもファバル坊が大好きだとデューが言い… ブリギッドは卓の上に無造作に広げられていたジャムカの手紙に目をやると、愛しげにしかししっかりと文面が見えないように畳んでから、もう一度大切な二人の家族を抱きしめた。 |
| 姐御とデューの話後編。そうして、ほんの暫くの間ですが、この村で彼らは平穏に生きて行きます。 FEは王族だらけで、メインキャラクターに市井の人々が殆どいないのですが、ブリギッドとデューの家族は私の脳内では「一般市民枠」です。我が家設定ではファバルはヴェルダン王に、パティはシャナンのパートナーになりますが、王宮に居ても、市井の人々の感覚をもち続け、笑いたいときに笑い、泣きたいときに泣く…そんなキャラクターが居て欲しい、そして幸せになって欲しい。そんな私の望みが体現したものとお思い下さい。 |
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