スターダスト・チェイサー

(時期として、物語中盤くらいを想定して下さい) 　「おお！よく来たな！」 　「おお、来たのである！」 　ジンベエとチェイスはがしっと抱擁しあった。忽として現れた紫色の異邦人は宇宙船“リトル・ナンシー”の中で暖かく迎えられた。いや、その、「おと〜さん」には。二人の子供たち……ランは、口をポカンと開けてハイタッチしあう大人二人を眺め、シルは思いっきり不審そうに睨みつけている。 　「おっさんおっさん、……なんか怪しさ大爆発なんだけど。いきなりむやみに元気に爽やかに現れるなんて、俺にだってできないんだけど。危ない超能力者かもしれないとか思わないの？」 　「いやいや、彼は怪しくなどない。」 　……いやいや、十分に怪しいと思うぞ。 　「……え？知り合いなのか？」 　「い〜や！おと〜さんの野生の勘が、彼は怪しくないと告げているのだ！」 　シルがばこっとチェイスを殴ると、チェイスはテディベアに姿を変え、よよ、と泣き崩れた。 　「くすん、本当のことなのに。そして、おと〜さんは、実際のところなんでも知っているのに!!」 　俯き、見上げ、胸を叩き、床に泣き崩れるチェイスに、ジンベエは絹のハンカチを差し出した。 　「うむ、悲しかろう。……少年よ、なぜ父のことをそのようにいじめるのだ。……」 　いや、俺、このおっさんの子供じゃないし、というシルの言葉は聞こえちゃいない。 　「父よ、泣くな。……目出度いアニバーサリーではないか！祝い、喜び、踊るのが我らのつとめ！そうであろう、父よ！」 　ジンベエがばっと手ぬぐいを広げるとクマは八匹にわかれ、輪になって喜びの踊りを踊り始めた。そして、すささっと渡された手ぬぐいの柄をじっと見つめたシルは嘆息した。 　「なんで、ペンギンが宇宙飛んでるんだ？このペンギン、エスパーか？」 　その横で、ランが指さす。 　「ね、シル。10周年だって。何が十年目なんだろう。」 　気づくと、ジンベエの姿は消えていた。キョロキョロする子供二人の頭に、人間形に戻ったチェイスがそっと手を置く。 　「チェイス、さっきの人は？」 　「ああ、彼は彼の世界に帰ったよ。……シル、心配しなくていい。彼はお前を子供の頃に拉致した集団と何も関わりはないからな。……それにしても忙しい人だ。もう少しゆっくりしてもよいのに……なあ、そうだろう、シル、そうしたら彼とおと〜さんと二人がかりでシルとも楽しく遊んであげられたのに。」 　「よせ！おっさんと似たようなのが増えたら、俺、いい加減切れるぞ！」 　「またまたぁ、恥ずかしがるのはおやめなさいな、シ・ル・ちゃんｖｖｖ」 　セクシーダイナマイトな姿の美女に変身し、抱きついてきたチェイスをひきはがそうとするシルの横で、ランは確かに楽しそうな人だったな、あのマント、恰好よかったな、と思いつつ、落ちていた薄紫色の紙を拾い上げた。 　『宝物庫への招待状： T』

文章系で最も破格の存在は、このチェイスです。もともとは大学生のときに仲間内で書いていたリレーSFのキャラクター。 なんでもアリ、な不定形宇宙人。キャラクター設定時にはもっとクールで恰好よかったのですが。 ブラウザバックでお戻り下さい