聖戦の系譜

(ゲーム後、ラクチェがドズルにお嫁に行く前のイザーク城という設定でお読み下さい) 　シャナンは当惑していた。突如現れた紫色の妙な青年。……容姿は絵姿を見たことがある若いころのアルヴィス卿に似ていなくもない。空間転移をして現れ、剣士であるシャナンにでさえも、彼の内に秘めたる魔力を強く感じる。そのため、ヴェルトマーの関係者かと問うてみたところ、そうではない、という。嘘をついている様子はない。警戒する家臣を押しとどめ、ひとまず茶をすすめてみたところ、非常に喜んで、コンフィチュールのたっぷり入ったパティ特製のタルトを大口あけてうまそうに食べている。 　……何だ、この男は。 　紅茶に７杯めの砂糖を入れてかき混ぜているジンベエにシャナンは素性と目的を問えば、１０周年のアニヴァーサリーのため、手ぬぐいを配っているという。……どうやらこの男、シャナンの知らぬ国の第四皇太子らしい。皆に配ってくれるように、と山と積まれた紫色の手ぬぐいを前にシャナンは咳払いをする。 　「そのようなことを私に頼むのは適切ではない。……イザークは独立国家であるが、この世界で最も大きな国はグランベルであり、バーハラの城主はセリス王だ。貴殿はセリス王を訪問すべきであった。」 　「……そうであったか。いや、この世界には不案内であるのでな。……しかし、私は私にとって最も適切な場に来たと感じているのだ……ｖ……貴殿はなんとすばらしい色調の装束をまとっているのであろうか！」 　は？ 　「……気高く、奥ゆかしき色……紫の美しさ、正しさを貴公はよく理解しておられる。ふむ……きっと私は、この紫に惹かれてここに出現したのであろう。」 　と、小柄な姿が、抜剣こそしてはいないが、柄に手をかけ、走りこんできた。 　「シャナン様！侵入者はどこに！」 　ジンベエは立ちあがる。 　「おお、娘ごよ。貴公も、紫の素晴らしさを知るものの一人であるのだな。」 　え？え？え？と一瞬目を泳がせたラクチェであるが、すぐに立ち直り、ジンベエとシャナンの間に入る。 　「何を訳のわからぬことを言っている！」 　ジンベエは、じーっとラクチェを見、ポン、と手を打った。 　「貴公、くるみが言うところの『つんでれ』というものであるか？」 　「はあッ？」 　「…………いや、そうにちがいなかろう。……今はツン、の時期であろ。……やがて季節が巡れば、デレ、となる。……少なくともギョーカイ、ではそういうことになっているらしい。」 　と、そこに大柄な人影が。こちらは斧を手にしている。 　「ラクチェ、シャナン王、無事……のようだね…………そちらは。」 　そのとき、ジンベエとヨハンの間に、何か電気のようなものが走った！ 彼らは「同類」の気配を感じ取った!! 　ヨハンはラクチェとジンベエの間に入り、ジンベエと話し込み、そして、肩を叩きあって豪快に笑った。 　「なるほど。我が麗しの天使は、いつかはそのデレ、という段階に至るのだね。」 　「うむ、我が記憶にある限り、そうである。その『つんでれ』というのは、今となってはギョーカイの重要な地位を占め、それなくしては始まらない、というジャンルもある、と聞く。」 　「そうか。ラクチェ、私の宝石よ。君はやはり、世界になくてはならぬ存在らしい。それにしても楽しみだ。私は今の君、即ちツン、も愛おしいと思うが、デレ、となった君は私にどんな顔を見せてくれるのだろうね。ああ、愛しのラクチェ……！」 　ヨハンはラクチェをたたえる歌を歌い始め、ラクチェは、やめろ！ヨハン、と叫び…… 　シャナンはティーセットの横に置かれた登場人物リストを見ながら、これはセリス王の分、これは、ユングウィ王の分、と紫色の手ぬぐいを積み上げていくジンベエを、呆れ顔で眺めていた。その横に、薄紫色の紙が…… 『宝物庫への招待状： Ａ 』

ずっとワープロで長編を書きためていて、それを記憶していた媒体を失くし……たと思ったら見つかったので早速部屋を作った思い出が…… (おそらく2003年だったと思います)聖戦主体ですが、FEはどのゲームにも思い入れ大きくて大好きなキャラがいますです。 ブラウザバックでお戻り下さい