Dragon Quest 4

　「うむ……迷ってしまったのであろうか。」

　おそらくここ、と念じて飛び出した時空間には何もなく、ただやわらかな金色の光が満ちているだけであった。

　「ふむ……」

　見上げれば、青い空。見下ろせば……これは、雲か？

　「……むむ……ここではないようだ。」

　次の世界に転移しようとしたところに、声が……どの方角からでもなく、直接ジンベエの頭の中に響き渡った。

　(間違ってはおらぬ。ここがおぬしの目的地の一つだ。)

　「おお！やはり、そうであったか。……して、貴公は？)

　声の主は無言であったが、笑っていることはわかった。

　「……間違っていないのならば……私が探している御仁らはどこに？」

　(この場にはおらぬ。……が、私から渡すことができよう。)

　「……貴殿……何もかも知っているのか。」

　(森羅万象を知るわけではない。この世界に理はあるが、我らの子供たちの意志によって変転していくもの。変わりゆくものを全て知ることは不可能。だからこそ世界はこれほど愛おしい。……ジンベエよ。私は、おぬしらの誕生する前、この世界の開始からずっとここに居たのだ。……10年という時間を祝う心持は、おぬしらに勝るとも劣らぬ。……)

　ジンベエを照らす金色の光がその強さを増す。

　(……私の名をも知っているのか……貴公……森羅万象を知るわけではない、と言ったが、私のことは何もかも見通しているのではないか？)

　声の主は、今度は音声を出して笑った。

　(そのようなことはない……例えば、ジンベエよ、おぬしがこれから、どのような道をたどっていくのか、この次の瞬間にどのようなことは……それらは全くわからぬ。……おぬしも、私の愛する子供たちの一人……これからも健勝で暮らせよ。)

　ジンベエは跪き、人数分の手ぬぐいを雲の上に置き、その上に紫色の紙と、更に、銀色をした直方体を乗せ、一礼すると、転移して消えた。

　声の主は、姿を現し、手ぬぐいを広げてその柄を見てほほ笑み、そして、直方体の包み紙を器用にあけて中身を満足げに頬張った。

　(この手ぬぐいと、メッセージは確かに“彼ら”に贈り、伝えようぞ！)
　

　薄紫色の紙にはこんな風に書かれていた。

『宝物庫への招待状： N 』

　

ドラクエ４はサイト開設当初からあるジャンルの１つです。紙に書きためていた長編を推敲しながらアップ。
付き合いも長いので、サブキャラクターの一人一人までにもとても愛着があります。

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